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不安になる国税庁からの「未払い税金のお知らせ」 偽メール・偽SMSの正体とは?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者のところに届いた、国税庁を騙るメール

今、国税庁からの「未払い税金のお知らせ」「差押最終通知」といったメールやSMSが多くの方に届けられています。

これはもちろん、偽メールです。

しかしそれを見て、「ドキッ」として不安になり、二度見した方もいらっしゃるかもしれません。そこで、さっそくアクセスして、その正体を暴いてみます。

当方にも、3日前に「税務署からの【未払い税金のお知らせ】」のタイトルでメールが届きました。

e-Taxをご利用いただきありがとうございます。

あなたの所得税または延滞金(法律により計算した金額) について、これまで自主的に納付されるよう催促してきましたが、まだ納付されておりません。

もし最終期限までに 納付がないときは、税法のきめるところにより、不動産、自動車などの登記登録財産や給料、売掛金などの債権などの差押処分に着手致します。

納税確認番号:****3697

滞納金合計:40000円

納付期限: 2022/8/13

最終期限: 2022/8/14 (支払期日の延長不可)

(一部、偽メールに誤字などがあるので、修正しました)

このところ、旧統一教会がらみの書きものやコメント出演での仕事が忙しく、数日、アクセスしていませんでした。

先ほど手が空いたので「お支払い確認」の文字をクリックすると、次のような画面になり、先に進めませんでした。

筆者がアクセスした偽サイト画面
筆者がアクセスした偽サイト画面

翻訳すると「プラットフォームセキュリティアライアンスによってテストされ、あなたのリンクは、金融やNFTビジネスやリチャージビジネスを含む、エンタープライズメンバーへのアップグレードを言及してください!」

そのまま記載していますが、意味がわかりません。

残念なことに、偽の国税庁メールとはいえ、支払い期限を守ってアクセスしなければならなかったようです。

SMSでも多く届いている

調べていくと、SMSでも「【国税庁】未払い税金お支払いのお願い。【差押最終通知】」の形で、数多く届いているようです。サイトアドレスを載せて下さった方もいましたので、こちらのURLにもアクセスしてみました。

すると、「システム警告」というタイトルで、「マルウェアが検出されました『KDDI』セキュリティ無料版アプリ』を必ずダウンロードしてください」

筆者がアクセスした偽サイト画面
筆者がアクセスした偽サイト画面

それでは「次へ」のボタンを押します。

すると、「au」セキュリティパックプラスと書かれたページができます。

筆者がアクセスした偽サイト画面・筆者修正
筆者がアクセスした偽サイト画面・筆者修正

そして利用料金は「無料」とあり、その下には、丁寧にダウンロードの操作方法も載っています。

初期設定「ステップ①」には、「有害なファイルの可能性があります」という表示が出た場合、「ダウンロード続行」を押すように指示しています。

筆者がアクセスした偽サイト画面
筆者がアクセスした偽サイト画面

「ステップ②」では、「開く」ボタンを押すように指示。

「ステップ③」では、「セキュリティ上の理由から、お使いのスマートフォンではこの提供元からの不明なアプリをインストールすることはできません」の警告が出ても無視して「設定」を押すように指示します。

筆者がアクセスした偽サイト画面
筆者がアクセスした偽サイト画面

「ステップ④」では「不明なアプリをインストール」の画面での操作方法を、赤い「矢印」や「かっこ」で操作方法を指示しています。それは「ステップ⑦」まで続きます。

筆者がアクセスした偽サイト画面
筆者がアクセスした偽サイト画面

絶対に赤い矢印の指示には従わない

この操作をすれば、スマートフォンが不正アクセスの被害を受けるだけでなく、自分のスマートフォンが踏み台となって、別な誰かに同じ「未払い税金のお知らせ」が勝手に送信されることになります、絶対にこれらの指示には従わないようにしてください。

ここからわかるのは、対策する側が、セキュリティを強化して被害を防ぐ手立てを講じると、それをかいくぐる形で、詐欺を行う側も方法を考えてくるということです。

国税庁からの未払い税金のお知らせは、詐欺にひっかけるためのフックだったようです。

このメールを送ってる人物らは中国語を使っているところからみて、中国系の詐欺グループの存在がみえてきます。

ここ数年、SNSで出会った異性にロマンスを抱かせて、偽の投資サイトに誘導させ、最初に儲かったように思わせて、数百、数千万円ものお金を、暗号資産などの形で騙し取る「ロマンス投資詐欺」が横行しています。

実は、このグループも投資の方法や操作方法など、その方法を「赤い矢印」や「囲み」などで、逐一教えてきています。

同じ系統のグループとも考えられますが、くれぐれも親切に教えてくれるからと、手順通りに行わないようにして下さい。これは親切心を前面に出して、だまそうとする手口です。

このセキュリティパックプラスの画面、どこかで見覚えがあると思い、調べていくと、「SoftBank」のホームページを「au」にすりかえてコピーして使っていることわかります。

国税庁からの偽メールは、今、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用している人が増えているところに、つけこんだ悪質な手口といえます。

くれぐれも、慌ててアクセスしないようにしてください。

続編 やっときました。国税庁を騙る、別バージョンの偽メール 目的は電子マネーの詐取! (2022/09/13に、記事アップしました)

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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