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40回以上かけました。しかし解約の電話はつながらず。本当に怖い「お試し」定期購入のトラブルの実態!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

「40回以上かけても、電話がオペレーターにつながらず、結局、その日は解約依頼もできませんでした。その後、メールで連絡をしましたが、それでも商品が送られてきました」と、50代のA子さんは憤った様子で話されます。

今、安い値段のお試し商品と思わせてネットで注文をさせ、それが定期購入になっている。しかも解約妨害をして、代金を払わせようとする悪質な通販サイトがはびこっています。

A子さんは、定期購入の商品があることは知っていたので注意をしていました。それでも被害に遭いました。

なぜなのでしょうか。手口は巧妙になっており、誰もがトラブルに巻き込まれる恐れがあります。その悪質な実態を暴きます。

「回数の縛りがない」という広告が出てくる

彼女は肌が弱いために、日ごろから、自分に合う商品がないかを探していました。ある時、スマホに化粧品の広告が出てきましたので、タップします。

「サイトでは、定価1万円もするものが、2000円ほどで買えるようになっていました」

その広告をキャプチャーしていたので、見せてもらいました。

そこには「今、購入しないと損をする」「定期購入のような回数の縛りがない」「解約もできる」との記述があります。これを見て1回限りのお試し商品だと思って、注文する人は多いのではないでしょうか。

彼女もそう思い、商品の値段が書かれた部分をタップすると、割引クーポン適用で約2000円の値段が書かれた注文画面に飛びました。

「そこには、化粧品名に『〇〇コース』の言葉が続いての申し込みになっていました。その下には『ショップからのお知らせを受け取る』と『未成年の場合、親権の同意を得ている。利用規約についての承諾。定期コースの条件に同意』という項目が書いてあって、これらに確認のレ点を入れての注文になっていました」

この時、彼女は「〇〇コースとあることから、定期購入ということはわかった」といいます。しかし最初の広告に「解約できる」「回数の縛りなし」とあったので、「使ってみてダメなら解約すれば良い」という軽い気持ちで注文します。

しかし「その気持ちが甘かった。こんなにもひどい業者がいるとは、思いもしませんでした」と後悔します。

すでに、ここに第一のトラップが潜んでいることにお気づきでしょうか?

それは、何回の定期的購入かをはっきりと書いていないことです。

通販業者はわざと注文画面上に載せていないと思われます。それを確かめずに、タップしてしまうと大きなトラブルに巻き込まれてしまいます。必ず、確認をお願いします。

商品が届くも、肌に合わず、解約の電話をかける

3週間ほど経って最初の商品が到着します。しかし使ってみると、肌が荒れて吹き出物まで出てしまい、自分に合わないので、次の商品が送られてくる前に、解約しようと思い電話をかけます。

しかし「現在、電話がたいへん混み合っています」のガイダンスが流れます。しばらくたって、電話をかけますが、同じ音声が流れます。何度、かけてもつながりません。電話をしたのは平日ですので、営業しているはずです。

徐々に彼女の心に不安がよぎります。

「一度だけ、その先につながりました」

しかし、ここにも罠が仕掛けられていました。

「ナビダイヤルでおつなぎます。20秒ごと10円かかります」とのガイダンスが流れます。ようやくオペレーターが出てくるのか。A子さんは、祈るような思いで、待っていました。しかしいつまで経っても、オペレーターが出てきません。すでに、10分以上経過しおり、400円を超える電話代がかかっています。仕方なく電話を切ります。

おそらくずっと待っていても相手は出ずに、料金だけがかさみますので、電話を切って正解でしょう。やっとつながっても、このような状況になれば、この先、諦めて泣き寝入りしてしまう人は多いのではないでしょうか。

諦めさせるように仕向ける。これが第二のトラップです。

その後もA子さんは電話をかけ続けましたがつながらず、総数は40回をはるかに超えてしまいました。

翌日、問い合わせ先に「解約します」と「次の商品は送らないで下さい」とのメールを送りました。「問い合わせを受け付けました」という自動返信のメールはあったものの、その後の回答はありません。

仕方なく再度、連絡をすると、ようやく返信がありました。

「4回の商品を受け取るというコース契約になっているので、2回目以降の商品の返品、解約は受け付けられない」という内容が書いてありました。支払うように迫られている金額は4万円以上です。

ここで初めて、A子さんは1回限りではやめられない注文だったことを知り、愕然とします。

この時、彼女は「解約できない4回の定期購入」を知ったわけですが、まさにここで使われているのは、思い込みを誘うという第三のトラップです。

最初の広告で「回数の縛りがない」「解約できる」の言葉をインプットさせて先入観を植え付けておき、注文をさせます。解約依頼をして、その事実を知るまで、その思いを持たせ続けているわけです。

本来、顧客重視の目線で考えれば、こうした誤認によるトラブルがないようにするために、総額や期間を注文画面上に記さなければなりません。なにより、解約に関する重要なことは、メールではなく注文時の画面でしっかり伝えるべきです。しかしそれをしていない。明らかに消費者に誤認させることを目的にした悪質な通販サイトだといえると考えます。

その後、A子さんは「最初の広告に回数の縛りなし、いつでも解約できると記載されているのに、その内容とは違うでないか」と繰り返しメールを送りましたが、返事はありません。さらに解約通知の内容証明を送ります。

しかし、それについての返答も一切なかったといいます。

それでも2回目の商品が届けられます。しかし、彼女は受け取り拒否をします。

後日、自宅に請求書が届きます。それに合わせるように、メールも届きます。

「そこには『支払わない場合は法的措置を取る』と書いてありました」

悩んだA子さんは、消費者センターと法テラスに相談します。

弁護士さんからは「商品を受け取らず、お金も支払わない強気な姿勢で大丈夫です。(内容証明も送っているし、解約のメールも送っている)これでは、相手は訴えられないですね」とのアドバイスを受けました。

ここにもあった、通販サイトの悪質性

この業者の悪質性は、さらにありました。それは解約依頼した人を言いくるめる状況をすでに作り上げていたところです。

A子さんが、トラブル後に同じ広告から通販サイトの注文画面にアクセスすると、以前と同じ注文画面が出てきます。

すでに、そこには「未成年の場合、親権の同意を得ている」に続き、「利用規約」「定期コース」の文字が載っていることは話しましたが、一見すると、改行もないために、これは未成年者が読むべきものと思わせる内容になっています。

おそらく、ここにある「利用規約」の文字をタップして、その内容を読む人は、ほぼいないのではないでしょうか。

ここにも「未成年の項目だ」との思い込ませて、その先を読ませないトラップが潜んでいます。

「利用規約」の文字をタップしてみると、規約が長々と10か条以上続き、下の方に、彼女が購入した商品の定期購入についての記載が出てきました。

そこには「連絡がない限り、自動で届ける定期的コース」とあり、総額で4万円以上になるとあります。しかも「4回未満の解約は受けていない」とも記載されていました。

おそらく多くの方が、解約依頼をしても「利用規約には、すでに4回の定期購入は必須との内容を記載しているので、それを読まずに注文したあなたが悪い」といって、一方的にお金を請求されていることと思います。

しかも、規約には「解約は電話でしかできない」となっていますが、いくら、かけてもつながらない状況です。

時に、通販サイトには、重要事項をひっそりと載せておくなどの悪質業者による様々なトラップが潜んでいることがあります。これでは、誰もがだまされてしまう危険があります。

今年6月から改正特定商取引法が施行されます

トラブルが多発するなか、今年6月から改正特定商取引法が施行されます。

定期購入などについて、注文前にわかりやすい形で表示するように義務付けられています。これまで見てきたような「期間」や「総額」などの重要事項が書かれておらず、誤認させるような表示であった場合には、契約を取り消せる可能性があります。

さらに、今回のように解約しようと「電話番号にかけても一切つながらないような場合」についても、消費者庁は「契約の申込みの撤回又は解除に関する事項の表示義務に違反する恐れがある」としていますので、解約を妨げる行為を受けた場合には、すみやかに「188」(消費者ホットライン)に相談してアドバイスを受けて下さい。

その時、何度も電話をかけた画面のスクリーンショットも撮っておくようにしてください。

法律が施行されるまで、あと約1ヶ月あります。さらに、それから法律が社会全体に根付くまでには時間がかかりますので、今後も相当数の被害が出ることが懸念されます。

ぜひとも、こうしたトラブルが多いことを知っておき、「安い」「お試し」だから、すぐタップ、クリックするのではなく「サイトの記載が誤認させるような形になっていないか」「重要事項がどこかにこっそり書いていないか」に注意を払って下さい。

タップ、クリックには、トラップが潜むことがある。これをぜひとも覚えておいて頂ければと思います。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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