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手口は同じ。「姉」「家を買う」「ボーナスイベント」隠された投資詐欺のマニュアルがみえてきた!(1)

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:IngramPublishing/イメージマート)

前回、今年の3月~5月にかけて、マッチングアプリで出会った男性にロマンスの感情を抱かせられ、偽の投資サイト「BT**-FX」に誘導されて、被害に遭った女性お二人の話を聞きました。

「ご飯食べた?」「何食べた?」は、美男美女になりすました詐欺師のサイン!背後にうごめく犯罪組織は?

今回も同じ偽の投資サイトで被害を受けた、CさんとDさんに話を伺い、詐欺組織の手口に迫ります。

Cさんは、シンガポール系中国人を名乗る「T」と出会い、Dさんは、東京在住の「H」というシンガポール人男性に出会い、ビットコインにて送金して被害に遭っています。

驚くのは、なりすました異性の名前は違えども、同じマッチングアプリで男性と出会い、開設させられた口座の仮想通貨交換所も同じで、後に述べますが、送金先に指定されたアドレスまでまったく一緒です。偶然かもしれませんが、被害金額も約300万円とほぼ同額です。

ここから見えてくるのが、詐欺の手法がパターン化されている実態です。何かしらのマニュアルがあって、被害者らを毒牙にかけていることがよくわかります。

そこで、「隠された投資詐欺のマニュアルがみえてきた!」(1)と、「なぜ、詐欺が起こり続けているのか。根本的理由に迫る」(2)の2回に分けて、ロマンス偽投資詐欺の実情に迫りたいと思います。

詐欺マニュアルの実態を探る

「お二人は、同じマッチングアプリで、詐欺師の男と出会っていますが、その時、自己紹介欄に年収が書かれていたかと思いますが、幾らくらいの記載でしたでしょうか?」(多田文明)

「相手の男性の年収は、800万円~1000万円でした」(Cさん)

「私の時は、年収600〜800万円で、貿易関係の仕事とありましたね」(Dさん)

Cさんの場合、男から「シンガポールの口座に4500万円あって、日本の口座に1000万円、さらに投資口座に700万円がある。投資で頑張っている」と多額のお金を持っていることをアピールされています。

その後、お二人ともLINEに誘導されて、メッセージのやり取りのなかで恋愛感情を抱かせられています。

Dさんは「私も一途にあなたと付き合います。人生には一人の伴侶がいれば十分です。お互いに最後の一人になり、手を携えて白頭の人になりましょう。80歳になっても手をつないで散歩します。(自分の)お父さんやお母さんのように」との甘い言葉を受けて心を奪われています。

イケメンの顔写真を使い、年収や貯蓄があると嘘をつき、「年齢を重ねても、生涯共に生きていこう」などの甘い言葉で、相手の心を惹きつけてだまそうとする。詐欺マニュアルの第一手がみえてきます。

第二手は、姉から、勝率の高い投資データが手に入る。

詐欺師らが決まって持ち出してくるのが、「姉」という存在です。

Cさんの場合、姉が金融に詳しいアナリストで「金融機関にいるため、チームのデータが手に入るので、勝率は97%になる」と言われています。

Dさんは「姉は、ナスダック証券取引所の上級金融アナリストで、投資に精通しているので、必ず勝てるデータをもらえるから、勝率は98%になる」「姉のデータ分析チームからの情報をもとに、投資をしているので、私も安定した収益を得ている」と同じようなことを言われています。

被害者が男性の場合、妹になりすまして「兄や姉が金融に詳しいアナリスト」と言ってくるケースも耳にします。いずれにしても「身内に金融に詳しく、儲けられるデータを持っている親族がおり、それで自分も儲けている」といった話を展開してきます。

これは、当事者よりも第三者の話の方を聞いてしまうという効果を利用したものです。

もし私が「詐欺に詳しい評論家です」と自分で言っても、今一つ信ぴょう性はないかもしれません。しかし講演先で、市長や町長から「多田さんは、詐欺に詳しいジャーナリストです」と言われると、聴衆はぐっと身を乗り出して話を聞いてくれます。それと同じで、肩書や実績のある第三者の話を持ち出すことで、投資話に引き込ませる狙いがあります。

第三手は、2回は儲けさせて、ボーナスイベントを使い、さらにお金を出させる。

「最初に(国内の)仮想通貨交換所に10万円を入金して、ビットコインにて投資サイトへ送金しました。男の言うように投資すると、儲かりました。すると『出金をしても良い』と言われて、手続きをすると自分の口座に約12万円が戻ってきました。2回目も30万円を送金して、約40万円になって戻ってきました」(Cさん)

「私も最初、10万円を送金すると2千円ほどの利益が出て、出金の手続きをすると全額が振り込まれました。そこで2回目に100万円を入金するとまた利益が出て、翌日には123万9万円が戻ってきました」(Dさん)

このようにお金を手にさせることで、“この投資情報は本物”との印象を与えて、“いつでもお金は引き出せる”ことを意識づけさせてきます。

そして、送金させる時に使われる常とう文句に、「家を買う」があります。

Cさんは「自分の貯金で日本に家を買おうと思っているが、あなたにも2~3割は出してほしい」と言われ、日本の不動産のURLが送られてきています。Dさんも同じで「一緒に家を買うために、投資を頑張ろう!」と言われています。

「家を買う」は、詐欺師がよく口にする、危険ワードです。

そしていったん、お金を出させると、次にサイト内で行われるボーナスイベントに誘ってきます。

このイベントでは、ある一定の投資金額を達成すると、お金(ボーナス)が加算されるようになっています。

「私は(サイト上の金額が)500万円になると、100万円分のボーナスをゲットできるというイベントに誘われて、トータルで300万円を送金し、最終的にサイトの画面上は約600万円になりました」(Dさん)

この手を使われて、皆さん高額な被害に遭います。

SNSやマッチングアプリで友達になった日本語が少し怪しい相手から、この三つの手を使われたら、詐欺かもしれないと疑ってください。

お二人の話を伺うなかで、やはり相手は組織でメッセージを送ってきていることがわかります。

最後に「メールのやりとりをしていて、なりすました人物が1人で行っていると思われますか?」と尋ねたところ、お二人とも「複数人でメッセージを送ってきている感じがある」と答えます。

「普段なら『今、何してますか』と言ってくるのですが、ある時『今、何してんの?』という言葉遣いだったんです。変だと思い、『言葉遣いが悪いよ』と注意したことがあります。『僕は翻訳機を使っただけ』と言い訳をしていましたが」(Cさん)

Dさんは、疑わしい予兆は「絵文字の使い方にもある」とも指摘します。

実は、Cさんがだまされた「T」と思われる男性に対して、Dさんにアプローチしてもらい、現在、だまされたフリをしてメッセージのやり取りをしてもらっています。

「ニコニコマークの絵文字を使う日もあれば、急にハートマークのものを使う時もあります。ある時は、ノースタンプの日もありましたね。これは何人かが交代してやっているのではないかと思われます」(Dさん)

だまされたフリで、冷静な目でメッセージを見ていると、複数の人間が一人の人物になりきって、メッセージのやりとりをしているのが、みえてくると言います。

これはとても、詐欺を見極めるうえで、重要なポイントです。

この手法は過去に、国内でも「サクラサイト商法」で大きな被害が出たものです。

詐欺業者がアルバイトらを雇い、架空の異性のサクラや芸能人になりきって、異性に有料メールのやりとりをたくさんさせ、数百、数千万円のお金をだまし取りました。

この時も、複数人で一人の人物になりきってメールのやりとりをするので、時に、話が前回の内容と嚙み合わなかったり、言葉の使い方が日ごとに違っていたことがあります。まさに十年以上前に国内で大きな被害になった手口が、今、形を変えて海外経由でやってきているのです。

言葉遣いの違いや、絵文字の違い。ここも詐欺に気づけるポイントがあります。

今回の肝は、なんといっても、お二人の送金アドレスが同じ「3k*****」で始まっていることです。実は、前回にお話しした、約900万円の被害に遭ったAさんも同じアドレスに送金しています。

このアドレスについて、Cさんが警察に尋ねたところ「送金アドレスの先は、国内の仮想通貨交換所である」との回答を得ています。

これは非常に衝撃的なことです。

これまで、相手の送金先は国外のアドレスとばかり思っていましたが、そうではない事実が明らかになりました。これにより、取材をしてきたバラバラな点が一本の線につながってきた思いがしました。

なぜ、これだけの仮想通貨で送金するロマンス偽投資詐欺の被害が広がっているのか。さらにお二人に話を伺うなかで、根本的な理由が浮かび上がってきます。(続く)

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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