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近場に住み、すぐ会える日本人女性の姿で、国際ロマンス詐欺がやってきた!もう相手は外国人だけじゃない!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(提供:TKM/イメージマート)

マッチングアプリで外国人の異性と出会い、お金が必要だと言われてだまされる。これだけが国際ロマンス詐欺だと思っていると危険です。

昨年は、外国人の異性からカーレースのギャンブルサイトに誘導されて、これを投資サイトだと思わされて、送金させられる被害が相次ぎました。

しかし2週間ほど前に被害に遭った男性に話を聞くと、どうやらその手口も変化してきています。

40代男性は、30歳ほどの日本人女性とマッチングアプリで出会いました。このアプリでは、GPSを使って近くにいる人と会えるようになっており、同じ地域に住む女性だと思っていたといいます。

その後、メッセージアプリでやりとりをすると、彼女の日本語に不自然さがみられます。そこで尋ねると「私は海外に長く住んでいて、母親は韓国人のハーフです」というのです。

今、詐欺犯らは外国人ではなく、どこにでもいるような日本人名で、近所に住んでいるフリをしてやってきます。

この背景には、昨今のマッチングアプリ事情もあると考えられます。

あるアプリでは、昨今の外国人になりすました不正利用による被害多発の状況から、当初から規約に謳われている日本国外の人物によるサービス利用禁止の厳格化を始めました。それゆえ、今は海外からの外国人の登録はできないような流れになりつつあります。そのため、詐欺犯らは日本人になりすまして、登録しようとしていると思われます。

二人は釣りなどの趣味の話で盛り上がるなか、彼女は「投資」が趣味で稼いでいると話してきます。男性は、少しずつ彼女に好意を抱いていくなかで、彼女自身が儲けているというサイトを紹介されました。

そこはカーレースのギャンブルサイトでした。

被害者からの提供写真
被害者からの提供写真

彼は「お試し」という軽い気持ちで、彼女の指示のままに国内の仮想通貨の交換所に口座を開設して、1万円分のイーサリアムを、カーレースサイトへ送金します。

このサイトでは1着になる車を当てるようになっています。そして女性の言う通りに賭けると、その車は1位となり、サイト上のお金は約110ドルに増えます。

すると彼女からは「もっと資金があれば、さらに利益が得られます。1820ドル(約20万円)追加すれば、300ドルは稼げます」と言われますが、この追加の提案は断ります。

投資1万円が、一気に270万円以上に化ける。

突然、彼女は「このままカーレースでやっていても、あなたの投入資金が少な過ぎるから、あまり儲からない」と言い出します。

彼女は別なサイトを紹介してきます。そこはボートレースサイトでした。

被害者提供の写真
被害者提供の写真

「実は昨日、ボートレースのサイトにバグが見つかった。今なら勝率100%になる」と、彼女に言われて、指示通りにお金をかけると、30分で、なんと2万5千ドル(約270万円)を超えました。1万円が270万円以上に化けたのです。

彼はこれだけの金額になることに驚くと共に「こんなに儲かるのは、やばいかもしれない」とも思います。まさに、この後、この気持ちをつかれることになります。

「バグがあって、儲かる」こうした甘い言葉には気をつけてください。

彼女は、2万5千ドル以上を前にして「さあ、このお金を引出しましょう」と言います。そして出金の手続方法の画像を送ってきます。

しかし手続きを行っても、サイト側からは「手続き完了」の連絡がきません。

彼女は「なかなか審査が通らないようですね。サイトの運営スタッフに事情を聞いてください」と言います。

そこで彼がサイト側に問い合わせると、次のような返事がありました。

「『金融法規定』第15条により(中略)口座内の不正収入または異常収入は、虚偽または悪意のある横領とみなされる。個人の不法所得税を10%納付することを要求する。24時間以内に、関係規定に従って処罰する

つまり、(「バグ」という)不正な手段で得たお金とみなされて、税金(罰金)を支払う必要があるという内容だったのです。その金額は約270万円の10%つまり、27万円ほどになります。

しかも、この金額を払えば、その後、出金できるような記述も続きます。まさに、餡と鞭を混在させた内容です。

この件を彼女に相談すると「お金を払う必要がある」と言われます。

彼が「払えない」と答えると、すかさず消費者金融のアドレスを送ってきて、借金を申し込むように迫ってきます。

不安になって連絡を取る。

彼は突然のトラブルに見舞われ、不安になりました。そこでネットを調べると、同じカーレースサイトで被害に遭った女性のヤフー記事を見つけました。そして私に「これは詐欺でしょうか?」という連絡をしてきてくれたのです。

ひと通りの話を聞き、彼の受けた手口は、新しい手口が混在しているものの、これまで他の被害者が受けてきた詐欺のパターンとほぼ一緒なので、いくら税金や罰金、手数料を払っても、お金を受け取れないことを話しました。それに、どこの国の法律かもわからないものに応じる必要もないので、無視しても良いと、伝えました。

さらに話を聞けば、彼が「支払えない」と強く言った後、彼女からは連絡はこなくなっていたそうです。しかしながら心には、「不安」が残っていました。それを解消するために、第三者からの意見をお聞きになろうとしたことはとても大切なことです。

「不安」を抱えたままだと、次の詐欺の矢が飛んできた時に、心に突き刺さってしまうこともあるからです。

変化しつつある手口のポイントは3つです。

ポイント1 近くに住む、どこにでもいそうな名前の日本人を名乗って近づく。「日本語がおかしい」と指摘すると、海外に長く住んでいたハーフだと答える。

ポイント2 カーレースサイトから、バグが発生している別なギャンブルサイトがあると誘導されて、一気にお金が増える。

ポイント3 不正に得た金だと指摘して、税金、罰金の名目で金を要求してくる。

彼は1万円の損失で済みましたが、もしかすると同じ手を使われて、送金してしまっている人もいるかもしれません。そこで、彼には送金した国内の仮想通貨交換所に「送金先が、詐欺の疑いあり」の連絡をしてもらいました。しかしそれに対する、最初の回答は「他社のサービスにつきましては、当社ではわかりかねます」でした。

これでは別な方の被害の懸念もあるので、再度、「送金した先のアドレス画面を添付して、マッチングアプリで出会った女性から言われた送金先に1万円を送りました。偽サイト詐欺の疑いがあるので、対処をしてほしい」という文面を送ってもらいました。するとようやく先方からは「詳細、経緯を教えてください」と前向きな返答がありました。

自分自身が少額の被害であっても、そのままにせず、他の方が同じ口座に多額のお金を送ってしまっているケースも考えられますので、ぜひとも詐欺に遭ったかもしれないと思えば、送金先の口座の連絡を、国内の仮想通貨交換業者へお願いします。

その際には、簡単な送金の経緯と、送金アドレスを添えて、何かしらの対処、調査をお願いするような文面を送って頂ければ、前向きな回答があるかと思います。

詐欺をする側は、手口を色々とスライド変化させてきますので、少しでも早い段階での情報提供が、新たな詐欺被害を食い止めることにもつながります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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