詐欺が多く起こり続けているなか、被害を防いだ事例も次々に報告されてきています。そこには、詐欺グループの思惑の裏をついた行動力があったからこそ防げています。

詐欺犯は、高齢者らに「詐欺じゃないよ!」と、注意されても否定するように仕向けています。この言葉を受けて、私たちはどう、対応すればよいのでしょうか?

振り込め詐欺には、息子になりすまして、急にお金が必要なったと嘘をつく「オレオレ詐欺」。「保険料を戻します」と言って、ATMに誘導してお金を振り込ませようとする「還付金詐欺」。「未納料金があります」とメールやショートメッセージを送って、お金を電子マネーなどの方法でだまし取ろうとする「架空請求詐欺」があります。

それぞれの被害を防いだ事例を見てみます。

まずはオレオレ詐欺です。この手口では多額のお金をだまし取られるために被害金額も大きくなってしまいます。

「公衆電話どこ?」 携帯を貸した大学生、詐欺被害から高齢者守る 6/16 (下野新聞)

駅前で、80代の高齢男性に、19歳の男子学生は声をかけられました、

「公衆電話はありませんか?」

そこで男子学生が携帯電話を貸してあげると、電話から「公衆電話からかけろ」の声が聞こえたと言います。男性に事情を尋ねると、息子と話しているとのこと。

通常であれば、赤の他人ですから、「そうですか」で終わるところでしょうが、男子学生は「おかしさ」を感じ、もう一歩踏み込みます。

高齢男性から本当の息子の電話番号を聞きかけたところ、かかってきている電話が詐欺であることがわかります。「おかしさ」「違和感」の先に、詐欺を疑ったことはとても大事です。

「公衆電話からかけろ」

こここから、被害遭う寸前の状況だったこともわかります。

今のオレオレ詐欺は、ATMからお金を振り込ませるのではなく、受け子という存在を使って、息子や孫の友人などを名乗るものが、直接に本人のところにお金を取りに来ます。

しかし今は、警察による受け子の逮捕が続いています。そこで警察の尾行がないかを確認し、防犯カメラのないところでお金の授受をさせるために、電話などで指示をして、コロコロと受け渡し場所を変えます。おそらく高齢男性は携帯電話を持っていなかったので、公衆電話からの指示をしようとしたのでしょう。

実際に男性は多額のお金を持っており、渡す寸前でした。

ここからみえてくるのは、三世代防犯の重要性です。

高齢者自身が詐欺に気をつけるのは、もちろんのことですが、それを見守る息子、そして孫も詐欺を意識して被害を防ぐことが大事になります。

まさに今回が好例です。

高齢者はインターネットに疎く、孫世代の人たちの方が、スマホなどを通じて、詐欺の情報に多く接しているために、詐欺に気づき、高齢者を守るための行動を取ることができます。

まさに今回は、19歳の孫世代が機転の利いた対応で、詐欺を阻止しました。

この他にも、お孫さんたちの一言が、詐欺を防いだ事例はあります。

どうしても働き世代の息子、娘さんたちは、忙しいために、高齢の親に目を配ることができない事情があり、その分、お孫さんの世代が詐欺を防ぐための重要なキーパーソンになってきています。

還付金詐欺は、こうして防ぐ!

今年に入り、還付金詐欺の被害が全国で続々と発生しています。それはワクチン接種の予約などで自治体に高齢者の目が向いていることと無関係ではないと思われます。

娘の「詐欺だからやめて」に耳貸さず、ATM操作…隣の女性「電話切って」で思いとどまる 6/11(読売新聞)

この事例からわかることは、見守る側のチームワークです。

ATMを操作する高齢女性に対して、娘さんが「還付金詐欺だから、やめてほしい」と必死に話しても、操作をやめようとはしません。さらに、金融機関の職員も説得にやってきます。

それでも、電話越しに画面の残高を伝えようとします。その異変に気付いた、隣にいた40代女性が「とにかく電話を切ってください」と言います。その言葉で、女性は思いとどまり、詐欺を防ぎました。

高齢者の場合、一度、思いこんだら、止まらない心境に陥ることがあります。詐欺をする側もその心理状況をよく分かっており、「今日中の手続きです」などと期限を切って、焦らせるのです。

ここからわかるように、一人の人物からの「やめて」の言葉だけではなかなか止まりません。特に、身内から注意されると感情的になり、反発してその言葉に反した行動をしてしまう人もいます。そこで第三者の言葉が必要になります。

というのも、詐欺犯は電話で懇切丁寧に、それなりに長く高齢者に「保険料が戻る」話をして詐欺話を信じさせているために、詐欺犯がインプットした以上の数の言葉を繰り返し、投げ掛けて気づかせてあげる必要があるからです。

特に、良かったのは、詐欺グループは、市役所、銀行職員など様々な役割を分担しながら、組織のチームワークで騙そうとしますので、今回のように、言葉のバトンをつなぎ、娘さん、隣の女性、金融機関の職員と、詐欺犯以上の連携プレーで詐欺を防いだところです。

防犯のチームワーク。

同じようなケースがありました。

“オレオレ詐欺”運転手が必死の説得 高齢女性は…  6/16(テレビ朝日)

タクシー運転手が、80代女性が孫を名乗る人物から「お金が必要」との電話を受けて、ATMでお金を下す状況を知り、説得したシーンです。

最初は、孫だと信じ込んでいた高齢女性でしたが、ATMへの行き帰りの車のなかで、必死に説得されると、最後には、家族に相談してみると言って、車を降ります。

実は、この運転手の行動がとても大事なのです。

記事内で「高齢者を説得する時は、1人の説得だと、自分のほうが正しいと判断してしまうので、複数人による説得が有効だということです」と、羽鳥アナが紹介したこのアンサーについての出所は明らかにされていませんが、私が番組スタッフからの電話取材を受けた時に話した言葉です。

実は、先の還付詐欺の事例も踏まえて、今回の運転手の行動との共通した内容を踏まえて答えたもので、放送時間が限られていたためかもしれませんが、大事な被害防止のアンサーが少々抜け落ちてしまっていたので、ここに補足します。

運転手が「詐欺じゃねんべえね」「本人じゃなかったら、渡さんなよ絶対」との言葉を何度も繰り返したことで詐欺を防ぎました。

母方の実家が福島なので、何とも懐かしい方言で聞いていましたが、ここにポイントがあります。

被害を防ぐには、この運転手のように、詐欺犯が高齢女性に話した以上の言葉を投げかけて「詐欺かもしれない」思いをインプットさせ、もう一度、考えさせるように持って行くことなのです。相手に頭ごなしに「詐欺だ、やめろ!」否定しなかったところもよかったと思います。

そして何より、家族に相談するように、話のバトンをつないだところが功を奏しました。

先の還付金詐欺事例と同じ被害防止の連携プレーです。

ゆえに、「高齢者を説得する時は、1人の説得だと、自分のほうが正しいと判断してしまうので、複数人による説得が有効になる」という、言葉のバトンへのアンサーにつながります。

ここにこそ、被害者と思しき人を説得して、助け出す方法があります。

そして「もう一歩の勇気」の大事さ

「詐欺じゃない」25万円いったん払ったが…店長は通報 4/14(朝日新聞)

60代の男性がコンビニで25万円の電子マネーカードを買おうとしたので、店長は金額の大きさから「詐欺を怪しみ」声をかけますが、「ネットで買ったものの支払いだ」と言い続けて、詐欺を否定します。店長は、いったんは代金を受け取ります。

しかし詐欺との思いを持っていたので、男性客には、とどまってもらい警察を呼び説得を続けて、ようやく男性は詐欺に気づきました。

多くの場合、「もしかすると」「でも違うかも」との思いから、当事者から、詐欺を否定する言葉が出てくると、ひるんでしまいがちですが、もう一歩の勇気を出すことで被害が防げたわけです。

詐欺被害を防ぐには、この「待つ」という行為が必要なのです。

それが、今回の警察が来るまでの時間にあたります。

というのも、こうした「サイトからの退会名目」の詐欺になると、本人は焦らされている状況で、「すぐにお金を払い、対応しなければ」と思っていますので、時間を置き、本人が冷静になれる時を持つ必要があるからです。

過去には、コンビニで30分も説得した事例もありました。

コンビニでは相手を待たせるのは悪いという雰囲気はあるかもしれませんが、詐欺においては、逆で、相手に冷静になる時間を十分に持ってもらうことは大事になります。

被害を防いだ事例すべてに共通しているアンサーは、「詐欺?」「いや違うかも?」様々な葛藤があるなかで、おせっかいかもしれないけども、もう一歩を踏み出した勇気が詐欺を防ぐことにつながっています。

ネット記事などで、私は被害を防ぐ方法をお伝えしていますが、残念なことに多くの高齢者には、こうした情報は伝わっていません。ぜひとも身を守るためのアンサーバトンをつないで頂ければと思います。