「アダルトサイト詐欺の手口は昔からあるよね。なんで騙されるんだろう?」

そう思う方も多いと思います。しかし、やり口がなかなか巧妙で、詐欺業者を侮っていると、自身が被害に遭うかもしれません。

アダルトサイト詐欺の魔の手は、どこからやってくるのでしょうか?大きく二つの経路に分けられます。

ひとつ目は、メールやSMS(ショートメッセージ)からで、ふたつ目は、ネットでアダルトサイトを閲覧していて料金の請求をされる形です。

ひとつ目の契機では、「未納料金があります」という内容が送られてきますが、そこにある電話番号にかけると、「アダルトサイトの料金が払われていない」などと言われて、電子マネーでお金を払うように指示されます。さらに今は、仮想通貨で支払わせようとするものもあります。

知人のもとに届いた詐欺メールです。

「残念なお知らせをするために、ご連絡を差し上げております。」という書き出しで始まります。(一部、文意を変えない形で修正しています)

「約2〜3ヶ月前にネット閲覧用にあなたが利用しているデバイスにアクセスし、その後ずっとネット行動を追跡していました。(中略)メールアカウントにも簡単にログインができました。(中略)既にトロイの木馬というマルウェアを、あなたのメールと繋がっている全てのデバイスのオペレーティングシステムにインストールしました。実際、やってみると全く難しくありませんでしたよ。巧妙な手口は意外と全て単純なのです。(^ ^)」

絵文字まで使ってきます。さらに、文章は続きます。

「ソフトウェアによって、あなたのデバイスの操作が全て可能になりました。既に、あなたの個人情報、データ、写真、ウェブ閲覧履歴を僕のサーバーにダウンロードしてあります。(中略)そして、あなたがアダルトサイトの大ファンだということを発見しました。ポルノサイトを訪問して、とてつもない快楽に耐えながら、興奮するような動画を閲覧するのが本当にお好きなようですね。あなたの卑猥なシーンを録画することに成功したので、自慰行為と絶頂に達する姿を見せるような動画をモンタージュにしました。僕的には、公にアクセスにしてしまっても問題はありません。そんな動画を公にされたくはないはずです。公になったら、大惨事になるかもしれませんね。なので、ここで取引をしましょう。」

ここから、お金の話になります。

16万円 (送金時の為替レートに応じたビットコイン相当額)を送金してください。送金を受け取れば、この卑猥な動画は全て削除しましょう。その後は、お互いのことは綺麗さっぱり忘れてしまい、デバイスにある有害なソフトウェアの機能を停止して削除することを約束します。僕は言ったことは守ります。このメールを開けた瞬間から48時間の猶予を与えましょう」

このように、期限を切って、暗号資産での送金を促します。

「あと、もう一つ・・・将来的にも同じような状況に引っかからないで下さいね!僕からの警告は、頻繁にパスワードを変更し続けることです!」などという被害に遭わないための手ほどきまで付け加えられています。

こうしたメールには、過去に本人が使っていたパスワードが記載されることもあり、それに驚いてお金を払う人もいます。ですが、ここを見てもわかるように「あなた」とあるけれども、本人名は書かれていませんので、不特定多数の人にただ送り付けているメールであることがわかります。

無視をして、絶対にお金は払わないようにしてください。

二つ目の契機、実際にアダルトサイトを見ていて、だまされる人も後を絶ちません。

今年2月、30代男性が現金計130万円分の電子マネーをだまし取られました。

「会員登録されました」"アダルトサイト閲覧中"に突然表示…30代男性130万円被害

 (北海道ニュース)

同月、50代男性も約380万円をだまし取られています。

サイト利用料名目で380万円詐欺被害 旭川の男性 (北海道新聞)

いずれのケースでも、タブレット端末などでアダルトサイトを閲覧中に急に「会員登録されました」との文字と、料金請求の表示が出てきて驚き、そこに載っている番号に連絡しています。そして電話に出た詐欺業者から「退会費用を払うため」などの名目で、コンビニで電子マネーを買うように指示されて、被害に遭っています。。

なぜ、だまされるのでしょうか?

その理由は、詐欺への誘導の仕方が巧みだからに他なりません

幾度となくアダルトサイトへの取材をしてきましたが、様々なトラップが仕掛けられています。

あるサイトの画面下には「再生ボタンを押すと、1年間の見放題コースへの登録手続きの完了」との言葉が、規約のなかに埋もれて書いてありました。多くの人はこれを見ずに再生ボタンを押して先に進み、電話をかけた先の詐欺業者から「規約を読まない、あなたが悪い。お金を払え!」と強く言われます。

皆さんなら、どう断るでしょうか?

もちろん、画面上に出てくる、電話番号に電話をしないのが、一番です。しかし心のもやもや感から電話をしてしまったら?

毅然と断るには、こちらも身を守る武器が必要になります。

そこで、知っておいてほしいのは、詐欺業者が仕掛けるトラップです。

本人が規約に同意したことを示すチェックボックスに「レ点」を入れることで、再生ボタンを押して先に進めるようになっています。

そこで、私は規約には同意しない形で「レ点」を外して、再生ボタンを押してみました。すると、再生を押すと「レ点」が勝手に入る仕組みになっていたのです。

ですので、利用者には非はないのですが、このカラクリを知らない人は、詐欺犯から「規約に同意のチェックを入れて、再生ボタンを押している」と責めたてられて、お金を払ってしまうわけです。

別なサイトでは、規約を最後まで読んでみても、チェックボックスもなく、お金を払うなどの規約の記載はありませんでした。そこで、サイトにある再生ボタンを押してみると、いつものように「登録完了」の文字とともに、数十万円のご請求の文字が出ます。

電話をかけてみると、詐欺業者の男は「規約に同意しているので、お金を払ってもらわなければならない」と言います。

しかし、その言葉がないことは、確認済みです。

「ありませんでしたよ」というと、相手は「いいえ、書いてありました」そこで、男の指示で再生前の画面に戻ります。

画面を下にスクロールしていってもやはり、書いていません。

「ありませんよ」

「いいえ、あります」

「再生画面の上に大きなタイトルがありますよね」

「はい」

「その上を見て下さい」

上にスクロールすると、

なんと「再生ボタンを押すと、本サービスのご利用規約に同意したものとみなし、一年間の見放題コースの料金がかかる」という旨が書いてあったのです。

「ありますよね」

「……」

「当社ではきちんと、サービスを利用したら登録完了となり、料金が発生することを記載していますよね」

「この部分は見逃していて」と答えると、相手は強気で「見ていないのは、あなたの落ち度でしょう。払ってもらいますよ!」と言ってきます。

ネットではF字型に視線が移動するといわれています。

サイトをみる際、最初に目に入ってくるのは、上にある大きな見出しです。多くの人は、まずそれを左から右に見ていきます。そして次に目線を、左側に向け下の方へ見ていき、興味のある文章があれば、その文字列を左から右に向かって読んでいく。それを繰り返します。つまり、視線は無意識にF字型で動く傾向があるのです。

人の注目を集めるようなサイトは、F字型に視線が動くことを意識したうえでの作りになっていることが多いものですが、詐欺師らはその人の目の動きを利用して、絶対に視線がいかない、サイトの上部に規約を書いて、だましの罠を仕掛けていたのです。

しかしこの手で攻められたとしても、料金請求に応じないでください。

そもそも契約とは両者の同意があって、成立するものです。こんなだまし打ちするような一方的な契約はありえませんので、「払いません」と言って、電話を切ってもらって構いません。

この種のアダルトサイト詐欺では、相手から「規約を見ていませんでしたね?」と尋ねられて、「はい」と答えてしまうような、真面目で正直な人ほど、だまされてしまいがちなのです。

普段、電子マネーを買わないような高齢者が、コンビニでプリペイドカードを購入しようとすれば、店員が止めてくれるかもしれませんが、先の被害事例のように、ネットを頻繁に使う30代~50代の人になると、警戒されず、誰も待ったをかけてくれません。

それだけに今は、アダルトサイト詐欺は高齢者よりも、比較的若い世代の方が身近に危険が迫ってきていると言えるのです。