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【追記】めぐりめぐりて、我が身に被害。外国人よる犯罪が、身近に迫る。帰国困難者を犯罪へとかり立てる。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

外国人が詐欺などの犯罪に加担する事件が多く発生しています。

最近でも、不正に入手した電子マネーを使って、家電量販店やコンビニで商品を購入したとして中国人らが逮捕されており、組織的犯罪グループの指示を受けて実行する「買い子」の犯行とみられています。

日本にやってきて、さほど時がたっていない外国人たちが犯罪に手を染めるケースも目立っていますが、この背景には何があるのでしょうか。

外国人技能実習生などの受け入れ事情に詳しい方に話を聞きました。

補償サービスを利用して、スマートフォンをだまし取る手口が発生

日本に住む外国人が闇バイトなどを通じて、組織的詐欺の「受け子」を行うこともありますが、さすがに直接に家へお金を取りに行くとなれば、日本語をある程度話せなければならず、日本にきて間もない人たちが行うにはハードルが高くなります。そこで、こうした人たちには、詐欺まわりの銀行口座の開設や携帯電話の契約の調達をさせることが多く見受けられます。

今は、コロナ禍で家からネットを通じて商品を買う人も多く、SNS上に出てきた有名企業をかたる広告から誘導された、偽通販サイトで商品を購入し、被害に遭う人が増えてきています。その際、お金を振り込ませる銀行口座には、日本人名だけでなく外国人名義の口座も多く使われています。

今年に入り、新たな手口が発覚しました。

それが、補償サービスを利用して、スマートフォンをだまし取る手口です。

スマートフォンを盗難、紛失をしても、あらかじめ携帯会社の補償サービスに入っておけば、数千円ほどの安い値段で、新しい機種が手に入るようになっています。このサービスを使って、ベトナム人らが「スマートフォンをなくした」と携帯会社に嘘の申請をして、新しいスマホをだまし取り、広島県警や静岡県警により、次々に逮捕されています。

紛失補償サービス悪用しスマホ詐取疑い、ベトナム人の男逮捕 (中国新聞)

最新スマホ入手直後に「紛失」 補償悪用のベトナム人 (静岡新聞)

この制度を悪用するなど、日本人の私たちでさえなかなか思いつかないものです。それに、このサービスを利用するには、警察へもウソの遺失届書を出さなければならず、当然、この背後には、組織的犯罪グループがいて指示を出していることは間違いありません。

新機種のスマートフォンは高い値段で転売できるうえに、詐欺にも使用できるとなれば、犯罪組織としては非常にうまみのある行為なのです。

SNSを通じて、知人とのネットワークから犯罪に誘われる

先の事例もそうですが、このところ、ベトナム人による詐欺、窃盗などの事件が多く起きています。この点ついて、外国人の受け入れ事情に詳しい方は、「最近は、ベトナム人の技能実習生が多く来日しており、SNSなどを通じて、知人とのネットワークから犯罪に誘われることが多いようです」と話します。

あるベトナム人は「SNS上に、カジノサイトへ誘導する広告を載せれば、お金がもらえる」と言われて、それを実行して「報酬は、地下銀行を通じて母国の口座にお金が振り込まれていた」といいます。

また、来日した技能実習生がネットで見たカジノサイトに、手を染めてしまい、多額の借金を負ってしまうこともあるそうです。

そして非合法な貸金業者からお金を借りたことで、働き先に迷惑をかけてしまうことから、突然、失踪してしまうケースや、貸金業者にパスポートや在留カードを取り上げられて、借金を返すまで返却されないなどのトラブルも発生しているといいます。

まさにこの手法は、自分で火をつけて、自らが消すという、組織的犯罪グループによる、マッチポンプなやり口といえます。

犯罪組織が日本に来た技能実習生を狙い、同胞のSNSなどを通じて、カジノサイトに誘導して多額の借金をさせる。そしてお金に困ったところで悪事に誘い、引きずりこむ。

こうした犯罪の増加には「コロナ禍による影響も非常に大きい」とも話します。

「母国に借金をしてまで、日本にきたにもかからず、コロナ禍で仕事を失い、その代わりの仕事やアルバイトを探そうとしても、募集がほとんどない状況です。そこで、本人は母国に帰りたいと思うのですが、コロナ禍の影響による入国制限もあって、それがかなわないのです」

手元にお金がないうえに、母国にも帰れない。こうした帰国困難者を狙って、犯罪組織が声をかけて、犯罪に手を染めさせている事情もあるのです。

結果、不正に取得された携帯電話や銀行口座は、詐欺などに悪用され、日本国内での犯罪被害が増えることにもつながってしまいます。

まさにコロナ禍ゆえの犯罪の悪循環が繰り返されているわけです。

とはいっても、すべての外国人がこうした犯罪に手を染めるわけではありません。日本で真面目に学び、社会貢献をする人たちも多くいます。

昨年、コンビニで長く働いているベトナム人が、数万円のプリペイドカードを買おうとした老夫婦の異変に気付き、繰り返し声をかけて、詐欺を防いだケースもあります。

しかしその一方で、悪事に手を染める人も後を絶たないのも事実なのです。

犯罪の温床となる環境を、いかに取り除けるかにかかっている

外国人に限らず、コロナ禍でお金に困った未成年者を含む若者が、SNS上の闇バイトに安易に応募して、犯罪に加担するケースが社会問題になっています。そこにきて、仕事を失い、お金に困っている外国人も加わるという事態になっており、私たちが犯罪に遭う危険が日々、高まっているといえるでしょう。

それゆえ、今はいかにして「犯罪の温床となる環境を取り除けるか」が求められています。

「帰国困難者が増えているところに、犯罪の温床が生まれていることを考えれば、新型コロナへの医療態勢が整っていないとの理由で、自国民の受け入れに制限をかけている国に対しては、日本政府がもっと外国政府に協力して、帰国の働きかけを促すことこそが、犯罪の抑止にもつながるのではないでしょうか」とも指摘します。

もちろん、草の根の防犯活動も大事になります。

SNS上で割の良い仕事があるといって、アルバイトを名目に犯罪に誘うケースは、もはや日本人だけではなく、国内の外国人にも行われていることから、今後は、各国の言語を使った注意喚起の徹底も必要になるでしょう。

昨今は、詐欺メンバーの募集をする日本人のリクルーターらも逮捕されています。

【追記3/21】

先日も、闇バイト応募者に手口指導 特殊詐欺「面接官」を逮捕 (産經新聞)でも、闇バイトに募集してきた人物らを面接していた男らが、大阪府警により逮捕されました。

スマートフォンや免許証を預かるなどして、詐欺のお金の持ち逃げを防いだり、詐欺に使うためのスーツやスマホから指示をうけるイヤホンも購入して与えていたといいます。昨今は、似合わないスーツなどで職質されて、逮捕される事例があり、そうしたことへの対応も含めて、入念な指示と準備をしています。

これからは、この種の外国人を誘うリクルーターらへの摘発も必要になってきます。

国際的な犯罪が増える中で、被害をなくすためには、詐欺などの直接に犯罪にかかわる者たちの摘発とともに、官民一体となって、詐欺まわりの道具調達に手を貸す人たちをいかに減らしていくかも大事になります。

「めぐりめぐりて、わが身に被害」ということに、ならないためにも。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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