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それは、詐欺の電話です。新型コロナワクチンに、お金のワードが出てきたら、すぐに電話を切りましょう!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

新型コロナに便乗した詐欺に注意して

詐欺は、ニュースとともにやってきて、私たちをだまそうとします。

今、注意すべきは、新型コロナウイルスに便乗した詐欺ですが、特にワクチン接種の言葉には、要警戒です。

警察庁に取材したところ、「令和3年1月末現在、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関連した特殊詐欺被害の届出は把握していない」とのことですが、次のような不審電話が各家庭にかかってきているとのことです。

①保健所職員を名乗る者から電話があり、「高齢者を対象にワクチン接種ができます。」、「それには一時金が必要です。」と現金を要求された。

②製薬会社社員を名乗る者から電話があり、「ワクチン製造会社と連携しており、事前に申し込めばワクチンを打つことができます。」、「予約金が必要です。」と現金を要求された。

いずれのケースでも、「お金が必要」というワードが出てきていますので、これが耳に入ってきたら、詐欺を疑い、すぐに電話を切ってください。

ワクチンに関連した不審電話は下調べ?

今回のワクチン接種の不審電話の目的のひとつに、相手の個人情報を聞き出すことがあると考えています。いわゆる、詐欺を行うための下調べ電話、アポ電(詐欺の予兆電話)の側面です。

もしこの電話がかかってきて金銭的被害がなかったとしても、家族構成や資産状況などの情報を伝えてしまった場合、その後にオレオレ詐欺、キャッシュカードをだまし取るといった特殊詐欺の電話がかかってくる可能性は極めて高くなります。

警察庁が発表した令和2年の特殊詐欺の認知件数は13,526件、被害額は277.8億円と、いずれも前年に比べて減少していますが、相変わらず、高齢者を中心とした被害は深刻で、1日当たりの被害額も、いまだ約7,590万円になっています。

アポ電も一昨年前より減っているとはいえ、令和2年は98,757件で、月平均は8,230件もかかってきています。

昨年の新しい手口としては、やはり新型コロナウイルス感染症に関連した特殊詐欺です。新型コロナに乗じた特殊詐欺の認知件数は55件、被害額は約1億円で、手口は多様化しています。

コロナに乗じた特殊詐欺も多様化している

今年に入っても、被害は後を絶ちません。

1月中旬に、高齢の男性宅に息子を名乗って「コロナの影響で、会社を辞めた人の保証人になってしまった。1千万円が必要」との電話があり、路上で息子の知人を名乗る男性に300万円を渡して被害に遭っています。

「コロナ失業者の保証人になり1千万必要」息子名乗る男にだまされ、300万円詐欺被害

(京都新聞) 

昨年8月にも、大阪の80代女性に、息子を装った男から、「熱が出たので、新型コロナにかかったかもしれない。PCR検査の結果待ち」との電話があり、これをきっかけに50万円をだましとられています。

「熱が出てPCR検査」息子名乗るうそ電話で50万円詐欺被害

(産經新聞)

これらは、オレオレ詐欺に、新型コロナウイルスを絡めた形です。

このような事例は他にもあり、新型コロナウイルスのワードをまぜることで、詐欺の話を相手に信じさせようとしてきています。

被害防止のための具体的な対策は

警察庁は、被害防止のために、次のことに注意してほしいといいます。

「まずは、犯行グループからの電話を直接受けないことが効果的」

詐欺犯というものは、保健所、市役所など、いろんなものになりすまして電話をかけてきます。そして話す内容も、相手をうまくだませるようマニュアル化されて、用意周到に準備されていますので、「詐欺犯の話を聞かない」ことが、自分の身を守ることにつながります。

犯行グループの詐欺マニュアルからわかること

私が以前に入手した詐欺グループの想定問答マニュアルには、次のようなものがあります。

警察官をかたって嘘の電話をした時、高齢者から「以前も、警察から同じ話の電話がきたことがあります」と言われた時には、「本当ですか?その時の詳しい内容を聞かせてください」と慌てずに尋ねる。

そして「その電話がいつかかってきて、どのような内容だった」のかを聞いておく。

その理由について「その時とは違う、詐欺の手口で攻めるため」となっています。

さらに相手に、こちらが本当の警察だと信じさせるために「その時、通報しましたか?」と尋ねて、もし通報していなければ、「それはいけません。これからはきちんと通報してくださいね」とダメを押すようになっています。

ここからもわかるように、詐欺犯は、相手の状況を聞き出して、詐欺のプランを練ってきます。それゆえに、電話で犯人と話をしないことが何より大事になります。

また、詐欺被害防止のために「自動通話録音機や留守番電話機能の活用を呼びかけています。」(警察庁)とのことで、「留守電にして直接受話器を取らない」「自動で通話を録音できる電話機を設置する」ことも効果的と言えるでしょう。

実は、こうした詐欺対策用の電話を、家に取り付けておくことはとても大事なのです。

というのも、「ナンバーディスプレイで電話番号を確認してから受話器をとってください」と注意されていても、ついそれを忘れてしまい、電話の音が鳴ると咄嗟に出てしまう高齢者の方も多くいますので、対策の上積みが必要になります。

「また、不審な電話を受けた場合には、住所、氏名、家族構成、資産状況等の個人情報は答えず、電話を切って家族等に相談したり、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110番」等に相談してください。」(警察庁)

今、お金を払えば、ワクチン接種の予約を優先的に受けられるという不審電話もかかってきています。新型コロナウイルスを調味料のように使って味付けをしながら、詐欺のメインディッシュを仕立てあげる手口には、充分に気をつけてください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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