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【要注意】悪意ある買い手はこうしてやってくる!商品の売買のネットトラブルはこうして起きた! (上)

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

新型コロナの影響もあり、副業として在宅で自身のネットショップを立ち上げたり、フリーマーケットを利用して、商品の売買をする人たちも増えてきています。その際、キャッシュレス決済を利用することもあり、トラブルは多様化してきています。

気をつけなくてはならないのが、常に取引をする相手が善良な人ではないということです。相手が詐欺師とまではいかなくても、ルールの抜け穴につけ入り、暴利をむさぼるような人もいます。

「これまで多少のもめごとはあったものの、今回のような大きなトラブルに発展したことはありませんでした」

そう話すのは、10年来、商品の買い付けを個人事業主として仕事をしてきた40代女性です。

それは、洋服3着の購入依頼から始まった!

トラブルのきっかけは、10月初めにカナダ在住の男性から、日本のお店で洋服3着(1着約4万円)を買ってほしいとの依頼を受けたことでした。

彼女はペイパルを通じて依頼人から入金してもらってから、買い付けをするスタイルをとっていました。ペイパルは、アカウントID(メールアドレス)を使って簡単に支払いができる決済サービスで、全世界で普及しているために、今回のような海外のお客ともスムーズにお金のやりとりができます。

男性からは、その日のうちに3着分の約12万円が入金されましたので、彼女は、指定された店に買い付けにいきます。そして「無事に買えました」と連絡をすると、喜んだ様子で再び追加注文が10着入りました。

その内訳は「ホワイトの洋服(M)2点、同色の洋服(L)3点、グレー(M)2点、同色(L)3点」です。

そして10着の商品代金約40万円も入金されます。

再び、指示されたお店で洋服を購入して、最寄りの郵便局から3つの箱(5着、5着、3着)に分けて、1日1箱ずつ3日かけて航空便で送りました。

しかし、ここでトラブルが起きました。

買い手の男から「洋服が7着しか届いていない」という連絡が入ったのです。

「6着も足りない!どういうわけだ!」

彼の話を聞くと、箱は3つ届いているものの、それぞれに教えられた通りの個数が入っていないというクレームです。しかも、男は「届いた7着のうち2着は指定した商品と違う色だ」と主張して、返品対応と返金を求めてきたのです。しかし彼女は、注文通りの品と数を郵便局から間違いなく送っています。

「これまでの経験ではありえないことでしたが、海外での荷物の紛失も“ない”とはいい切れません。ですが、中身の商品をわざわざ色違いのものにすり替えることだけは、ちょっとありえないな」と彼女は男性の言動に疑問を覚えたといいます。

それから2日間にわたり男は「お前が詐欺を働いたんだろう。警察に言うぞ」と脅し続けます。

売買の経験の少ない人であれば、「詐欺」「警察」という言葉を浴びせかけられると動揺して、相手の要求を飲んでしまうかもしれません。

しかし長年、この仕事をしてきた彼女は「郵便局から送っている証拠はこちらにありますから。カナダの郵便局か、税関に問い合わせてください」ときっぱりと返答します。しかし、相手は「箱を開けた形跡がないんだから、そんなことをする必要はない」と、問い合わせを拒否します。

その後、彼女が調べると「チャージバック(不正利用の被害に遭ったなどの理由で、返金やクレジットカードの支払いを取り消せる)制度を悪用し、商品が違うとクレームをつけて、偽物を返品し、返金までさせて、一銭も払わずに、商品をだまし取る手口がある」ことを知りました。

「もしかすると、これがその手口かもしれない」

そう思い、彼女はすぐに日本の郵便局に調査依頼を出して、警察にも相談しました。

警察からは「郵便局のレシートや配送の控えがあり、送った証拠があるのであれば問題ない」と言われています。

郵便局からは「買い手の男のメールアドレスを教えてほしい」と言われて、伝えます。

するとカナダの郵便局から男性に連絡がいったようで、男から「郵便局から連絡がきましたので、調査を受け入れます」との返事がきました。

男はたびたび「警察への通報」を口にしますが、彼女も「お好きにどうぞ」と強気の返事を続けると、ついには男からの返信がなくなりました。

脅しは効かないと思ったのでしょう。荷物を正当に送ったという、こちらの主張をしっかりと伝えたことで、相手はぐうの音も出なくなったと思われます。

しかし悪意ある者は、これだけでは諦めるはずがありません。

再びクレーム。そしていきなり、お金が引き落とされる。

2週間たち、再び男から「グレー以外の4着は偽物だから、返品対応と返金をしろ」という新たなメールが届きます。偽物が2着増えています。しかし彼女が「偽物は送っていません」と言うも、男は「すでに警察に通報して、捜査を始めているんだから、返品対応と返金をしろ」と執拗に迫ります。

再び、「警察」の言葉を持ち出します。

そこで彼女は「どちらの警察に行ったのでしょうか?警察署名と部署、担当者名を教えてください。こちらから連絡します」と尋ねますが、男はこの質問をスルーします。

この時、彼女は思ったそうです。

「本当に警察が捜査をしていたら、偽物の証拠をおさえるはずで、大事な証拠品を送り返して(返品して)良いなどということを了承するはずがない」

そこで「捜査上の重要な証拠品を、なぜ警察は保管しないんですか?それに、偽物だという根拠はなんですか?購入したお店に聞きますので、どなたが偽物とおっしゃっているのか、お聞かせください」と単刀直入に聞きました。

男はこれに対する明確な回答は避けて「このブランドについて知識のある銀行の代表者に聞いたら、偽物だと言っていた」といった、しどろもどろの返答をしてきます。

彼女は、ますます怪しさを感じて、返品対応も返金もしないと毅然とした態度をとり続けます。

しかし状況は一変します。

買い手が「商品が説明と異なる」との異議を、決済したクレジット会社に申し立てたことで、彼女のペイパルの口座から40万円がいきなり差し引かれてしまったのです。

さすがの彼女もこれには、慌てました。

もしこのまま、お金が戻らなければ、数十万円の商品の購入代金は回収できなくなります。商品はこちらの手元にない状況ですので、このままでは、相手は商品をただで手に入れることに成功してしまうわけです。

「やはり詐欺行為なのではないか」という思いが強くなりました。

それとともに、焦りが募ります。

ちょうどこの時に、彼女は、私のもとに被害情報の連絡をしてくれたのです。(続く)

【要注意】悪意ある買い手はこうしてやってきた!トラブルを解決したはずなのに…(下)追記:係争中事案

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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