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タワマン強盗の被害タレントを二度も叩く行為は絶対にダメ!勇気ある告白から見えてくる、事件の真相とは!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

10月26日、都内のタワーマンションに宅配業者を装った2人組の強盗が押し入り、セクシー女優・里美ゆりあさんを脅して、約600万円を奪い逃走しました。しかしその日のうちに、少年ら3人が逮捕されています。

彼女は様々なメディアを通じて、犯行の実態を赤裸々に語って下さっています。しかしそれに対して「売名行為」などと言う人がいることは残念なことです。

被害者が声をあげることで、犯罪の被害は減ります。

それは犯行の手口を詳細に知ることで、私たちがどう身を守ればよいのかが、わかってくるからです。しかし多くの人は二次被害を恐れて、被害を口にしませんので彼女の勇気ある行動には頭が下がります。

裏社会では、強盗のことを「叩き」と言いますが、それに絡めて彼女自身のインスタグラムでは「売名行為などと言って叩いて来る人は強盗(タタキ)やる方と同類だと思ってるのでまったく気にしてません」と発言しておられます。

彼女をこのような言葉で叩くことは、被害者を二度、苦しめることなりますので、絶対にやめてほしいと思います。

まさにこの行為は、自分の親が数百万円の振り込め詐欺の被害に遭った時に、荒い口調で「なんて馬鹿なことをしたんだ!ぼけているのか!」と攻めたててしまうことと同じことで、被害者の心をさらに追い詰めてしまいます。

彼女自身、家に押し入られた時に、恐怖を感じて「殺すの?」と強盗犯に尋ねると「(お金を出せば)殺さない」とのやり取りがあったそうです。もし自分の身に置き換えてみた時、自分が被害に遭って、そうした恐怖を感じていながらも、顔を出して公に話せるのだろうか。その勇気があるのか。その点を考えてほしいと思います。

さて、彼女の被害実態の報告から、様々な事実がわかってきており、強盗に遭った時に、どう立ち回るべきなのか、大事なことも見えてきています。

用意周到さと稚拙さの両面がある、この事件の真相は!?

今回のタワマン強盗では、宅配業者を装うといった用意周到さと犯行の稚拙さの両面が見えてきています。

彼女の家に宅配業者の制服を着た男がやってきて、彼女がその段ボールを持った姿に目を奪われていると、エレベーター前のソファに座っていたもう一人の男が、一気に部屋になだれ込んできます。

彼女自身も言っていますが、もし宅配業者が二人できたら、怪しいと思い扉をすぐに閉めたかもしれません。しかし一人だったため、対応してしまいました。

このように相手は巧妙に部屋に入り込む手段を講じています。

何より、警備が厳重なタワーマンションに怪しまれることなく入り込んだことを考えても、緻密な犯行計画を立ててことを行っており、背後に犯罪に手慣れた組織がいることが強く疑われます。

この組織性は、強盗犯らの言動からもわかります。彼らはイヤホンをつけており、部屋の中で多額の現金を見つけた時、彼女が「それは使う予定のお金だから、勘弁してほしい」と言うと、指示役と連絡をとったようで「ダメだって」と言ってきたそうです。

また今回の犯人らは素人のような対応をしています。

彼女を見張っている男が、脅されて観念している彼女に「飲み物ちょうだい」と言ってきています。彼女はそれに従って、お茶を出しています。

そもそも飲んだら、そこには唾液などがついて、DNA鑑定だって可能になるでしょうし、手慣れた犯罪者なら、逮捕されないために細心の注意を払い証拠を残すようなことはしないはず。

ここから実行犯らが、闇バイト等で雇われただけの素人集団であることがわかります。

今、闇バイトの情報がSNS上に溢れており、詐欺の手足となる、お金を家に取りに行く「受け子」や、ATMから現金を引き出す「出し子」から、「叩き」(強盗)の仕事もみられます。

警備が厳重なタワマンに入り込み、20分ほどの手際のよい犯行で「叩きのシナリオ」が完璧なのに対して、逃走した車にそのまま乗っていて捕まるという、実行犯の稚拙さの両面があるのが、この種の組織的犯罪の特徴でもあります。

彼女はなぜ縛られなかったのか?

組織的犯罪グループによる、高齢者宅への強盗では、相手をガムテープで縛り、刃物を突き付けて脅し、キャッシュカードの暗証番号などを聞き出します。もし抵抗されると、体に怪我を負わせても犯行に及ぶのが一般的です。

しかし、彼女は縛られていません。それはなぜだったのでしょうか?

実際に、彼女は彼らが縛るためのガムテープを持っているのを見ていますが、彼らはそれを使いませんでした。それには、理由があります。彼女の強盗犯への立ち回り方が上手かったからだと考えています。

押し入られた時に、最初彼女は「ギャー」と一度は叫んだものの、防音がしっかりしているマンションゆえに、声が周りに届きません。もう力づくでは逃げられないと観念した時「それなら、相手の話に付き合うしかない」という開き直った対応をしました。

「1億円あるはずだ」と言ってきても「そんなお金はない」と言い「探すだけ探しなよ」と強盗犯に対して、従順な立回りをしました。

それは、飲み物を要求されたら、お茶を出したことからもわかります。

たいがい突然の強盗に遭うと恐怖心から叫び続け、ひたすら逃げようとして、口をガムテープで押さえつけられたり、体を強く縛られてしまうものです。しかし、彼女は悔しさや恐怖を心に秘めながらも相手の懐に飛び込むことで、腕にアザは残ったものの、それ以上、身に危険が及ぶことがありませんでした。

なかなかこうした冷静な行動はとれないかもしれませんが、これは、力だけでは立ち向かえない相手への護身術といえるものかもしれません。

侵入されないための対策だけでなく、万が一のための防犯意識も持っておく

何より、侵入されないための対策は必要です。

今回のタワマン強盗事件のようにどんなにマンションの警備が厳しくても、隙を見つけて犯人らは侵入してくることもあります。女性一人や、高齢者だけの時には、できるだけドアチェーンやドアガードをつけての対応をする。

できれば、荷物を受け取る時には、宅配ボックスや置き配を利用することも必要でしょう。

ただ万が一、押し入られた時の対策も知っておいて下さい。

もし叫ぶことで、周りの人が助けに来てくれる状況であれば、大声を出し続けて下さい。しかし今回のような防音がしっかりした家でそれが難しいとなれば、彼女がとったような身に危険が及ばないための、相手の懐に飛び込む行動も必要でしょう。

強盗犯はあくまでもお金を奪うのが目的で、今回もそうですが20分ほどと短時間の犯行で長居をしません。

あまりに必死な抵抗をしてしまうと、刃物で傷つけられてしまうこともありえますので、この時間だけは悔しさはあるでしょうが、なるべく相手に従った行動をとるように心がけて下さい。

強盗犯は警察の徹底した捜査により逮捕されますので、一番の目撃者である被害者自身が無事でいることが何より大事になります。

最近の犯罪は凶悪化しており、しかもお金のある情報を聞きつけると、どの家に押し入るのか、わからない状況です。

今回の彼女の証言をもとに、強盗の手口や対応策を知るとともに、年末に向けて、防犯態勢を見直すきっかけにして頂ければと思います。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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