小池都知事の「保守」VS「保守」戦略は自民党支配を終わらせるか?

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

小池百合子東京都知事の側近が「日本ファーストの会」を立ち上げました。党名についてはトランプの「アメリカ・ファースト」とかんぜんにかぶるため批判もあるようですが、そもそも「都民ファースト」が共和党の大統領予備選で躍進するトランプの選挙スローガンから取られたのですから規定の路線ともいえます。

当初は「国民ファースト」を考えていたものの、同名の政治団体がすでに存在することで混乱を回避したともいわれています。しかし「国民ファースト」はフランスで“極右”とされるFN(国民戦線)のスローガンで、移民排斥のイメージとつよく結びついていますから、どっちもどっちでしょう。

自民党を離党して都知事となり、自らの新党を立ち上げた小池氏が、橋下徹前大阪市長の政治手法を徹底的に研究していることは明らかです。その橋下氏は、大阪で圧倒的な支持を得ていたものの、国政進出にあたって石原慎太郎氏の太陽の党と合流し、共同代表制に移行したことで混乱を招きました。橋下氏が大阪の首長の座を離れることができず、国政を任せる「代理人」がどうしても必要だったからですが、「ネオリベ(新自由主義)」の維新の会と「愛国保守」の太陽の党ではあまりに肌合いがちがい、その後の内部抗争と分裂は必然でした。

日本ファーストの会も、まったく同じ問題を抱えています。代表は無名の国会議員で、今後、民進党を離党した大物議員などが加わればたちまち埋没してしまうでしょう。都知事の任期は2020年7月までで、次期衆院選は遅くとも来年末には行なわれますから、それまでに小池氏が首相の座をうかがう国政政党の党首になれるかどうかが第一の課題です。

私にはこの隘路をどうやってくぐり抜けるか想像できませんが、もし小池氏の下で総選挙に挑むことができれば、「日本ファースト」は前回の都議選と同じ状況をつくりだす可能性があります。

安倍政権の賞味期限はそろそろ切れかけており、有権者は「新しい風」を求めています。しかし民進党は、「保守」対「リベラル」の構図に拘泥し、より左の共産党との共闘を模索した結果、党内の保守系議員の離反を招いて解党の危機に陥りました。それに比べて「日本ファースト」は、そのあやうい党名からもわかるように、自民党の右に位置を取り、「保守」対「保守」の争いにもちこむことが可能です。そうなるとリベラル層は行き場を失いますが、共産党に流れるのはごく一部で、ふたつの保守政党から「よりマシな方」を選ぶほかないでしょう。戦後日本政治の自民党支配を終わらせるには、おそらくこの戦略しかありません。

トランプのポピュリズムから選挙に勝つ方法を学んだ小池氏は、最近は自らをマクロン仏大統領になぞらえているようです。フランス大統領選では既成政党は右も左も大きく票を減らし、与党・社会党は壊滅的な敗北を喫しました。この世界的潮流が日本にも及んでいることを見すえているとしたら、新たな「政治的トリックスター」の行動から目を離すことはできません。

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