著作権者はクレーマー?

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

プロ野球球団を保有するインターネットの大手企業が、運用していたキュレーションサイトを一斉に閉鎖したことが大きな波紋を呼んでいます。キュレーションというのは特定のテーマの情報を記事形式にまとめることで、検索サイトで上位に表示されると多くのアクセスを集めることができます。

最初に問題になったのは医療系のキュレーションサイトで、広告収入を稼ぐために信憑性の欠ける情報が大量に掲載されているとの指摘から始まり、ユーザーの投稿とされていた記事が実はライターに謝礼を払って書かせたもので、盗用を隠すためのマニュアルまでつくっていたことがわかって大炎上を起こしたのです。

事件の経過はすでに詳細に報じられていますが、外部ライター向けの「記事作成マニュアル」には「参考サイトの文章を、事実や必要な情報を残して独自表現で書き換えるコツ」や「参考サイトに類似しない本文作成のコツ」などの項目があり、「中見出しごとに複数サイトを参考にして複数意見を寄せ集めれば”どこを参考にしたかすぐ分かる”状態ではなくなり、独自性の高い記事になります」とまで書かれているとのことですから、これでは言い逃れの余地はありません。一部上場の大手企業が組織的な記事の盗用で高収益をあげていたという、前代未聞の不祥事です。

しかし事件の経緯を見ていると、疑問もわいてきます。ふつう違法なビジネスはその行為を隠そうとするものですが、この件ではネット上で大量に集めたライターにマニュアルを配布するなど、あまりに無防備なのです。

そう考えていて、このマニュアルがなにに似ているか気がつきました。それは「クレーマー対策」です。この会社では、著作権者は面倒くさいクレーマーと同じ扱いをされているのです。だからこそライターに、「どうすればクレームを避けられるか」というマニュアルを堂々と提供したのでしょう。

こんなことがなぜ起きるかというと、「ネットの常識は書籍のようなオールドメディアとはちがう」と考えているからです。そこには「ネットに公開されたもの」と「公開されていないもの」という明快な分割線があり、「公開されていないもの」は著作権法で保護されますが、「公開されたもの」は“公共財”なので、著作権を強く主張することは「クレーム」と見なされるのです。

この価値観によれば、単純なコピペは違法ですが、文章を多少書き換えるなどの“配慮”をすればそれで十分ということになります。ネット上の“公共財”を自由に利用することはネチズン(ネット市民)の基本的な権利で、それが嫌ならコンテンツをネットに公開しなければいいのです。

大手企業まで「組織的盗用」に手を染めたということは、いまやこれがネット世界の常識であることを示しています。しかしいうまでもなく、リアルの世界では明らかな違法行為です。

今回の事件を受け、同様の手法でビジネスを行なっていた大手各社は記事に不正がないかすべてチェックすると表明していますが、そもそも取材をいっさいしていないのですから、掲載できるものはほとんどなくなってしまいます。そして、「自由」を自分の都合のいいように解釈するとどのような結末が待っているかの、よい教訓を残すことになるでしょう。

参考:BuzzFeed「DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか」

『週刊プレイボーイ』2016年12月19日発売号

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