新入社員注目。確定拠出年金の運用指図は「アレ」一択でいい~会社が絶対に教えてくれない方法~

新入社員の5人に1人は、いきなり自己責任で運用といわれる。(写真:ロイター/アフロ)

新入社員なのに、いきなり資産運用?

新入社員になっていきなり「運用指図書」を渡されることがあります。読んで字のごとし、「運用」の「指図」をする書類ですから、あなたは何か資産運用をする、ということです。

これは会社の退職金制度として、確定拠出年金を採用している場合に渡される書類です。現在の加入者が724万人(2019年1月末)で、会社員が3911万人(2018年3月末)なので、確率的には新入社員の18%くらいが確定拠出年金のある会社に勤めるような案配です。5人に1人と考えるとけっこう多いですね。

確定拠出年金は、あなたの将来の退職金として会社が毎月、数千円から数万円(新人は1000円程度のことが多い)を積み立ててくれる仕組みなのですが、入社時点でささっと説明が行われ、運用指図書を書くまでの時間がほとんどないこともあります。

また今年度のように研修にEラーニングが採用されている場合、数時間のムービーを見させられることになります。一方通行なので、よく分からないところを確認するチャンスもないことがあります。

そして、会社の説明会だったりEラーニングは、法律の規制もあって「余計なこと」「本音のこと」が話せないこともあります。

そこで、確定拠出年金の専門家(法改正時の専門委員会の委員も引き受けたことがあります)として、新社会人のためにアドバイスしてみたいと思います。

(なお、「遅いよ!もう運用指図書を出しちゃったよ!」という人はオンラインで修正ができますので、渡されたIDとパスワードでWEBからログインして変更しておくといいでしょう)

悩んだとき「定期預金100%」はおそらく得ではない

新入社員になってすぐ、確定拠出年金の説明を聞くと焦ります。「減った場合、運用は自己責任」と言われて驚いた人もいるでしょう。しかし、説明会は1時間程度にまとめることが多く、駆け足で説明されがちです。

よく分からないとき、選んではいけない選択肢は以下の2つです。

「加入しない(加入選択ができる場合)」

「よく分からないので定期預金100%と書く」

まず、入るか入らないか選べるとき、絶対に「加入する」に○をします。昨年の流行語となった「老後に2000万円」ですが、この半分以上を貯めるのは会社の退職金制度です。これを入らない、とすることは将来の自分を苦しくするだけの選択です。

(加入しない場合、積立額は給与に上乗せされますが、税金等も引かれるので実は得ではありません)

また定期預金100%にすることは「減らない」ことにはなるものの、昨今の金利環境では「ほとんど増えない」預け方です。しかも物価(モノの値段)が上がるより利息が低くて「実質的に値下がり」という可能性がそこそこあるのが定期預金だったりします。

あなたの将来を考えたとき、「入らない」と「定期預金で増やす」はあまりいい方法ではありません。

運用商品リストをチェックして、バランス型ファンドという名前を探す

あなたが何十年も働く間、お金の増やし方を考えるなら、投資をしたほうが明らかに有利です。しかし確定拠出年金の選択肢となる、投資信託という商品は10~20本くらい並んでいることが多く、新入社員のほとんどが混乱します。どれがいいか分からないはずです。

しかし、会社の人も講師を担当する金融機関も「自己責任だから自分で選びましょう」としか言ってくれません。

そこで「1本」だけ買えばいい、一番簡単な方法を説明します。

リストから「バランス型」のような名前がある商品を探してみてください。たいていの場合、リストの一番下にあります。これはひとつの投資信託を買えば、「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」といった複数の投資対象をブレンドしてまとめ買いできるというものです(投資信託によっては、不動産投資を含むこともある)。

簡単にいうと「世界中にまとめて投資できる便利な商品」です。国内株式や海外株式という中には日本のたくさんの有名企業、海外の有名企業が含まれます。

1万円投資をすると数百円くらいがAppleやGoogleにも投資をしたことになります。もちろんトヨタやソニーや任天堂もです(あなたの会社が東証一部上場企業なら、あなたの勤める会社も含まれます!)。

ただしバランス型ファンドは3本セットになっていることが多いので、ここが要注意です。「安定」と「成長・積極」に分かれていたり、「25・50・75」のように数字がついていたりします。数字は株式投資比率の高さを示します。

このとき、「安定」という言葉とか「25」のような少ない数字を選ぶ必要はありません。ここはあえて「積極投資」とか「75」と大きい数字が書かれている方を選びます

安定的な投資ということは、債券の比率を高めることなのですが、これは定期預金と同等の利回りしかつきません。かつ元本割れする可能性はゼロではない資産を持つことになり、せっかく投資しても株式にはほとんど回らないことになります。しかも債券の期待できる利回りは株式より低いので、株価が10%上がるようなとき、「安定」や「25」のバランス型ファンドは2~3%くらいしか値上がりしてくれません。さらに、債券部分にも運用の手数料がかかります。

もし、安全資産も持ちたいのであれば、

× 安定運用型バランス型ファンド100%

ではなく

○ 定期預金30%+リスク高めのバランス型ファンド70%(割合は好みで決めていい)

のような持ち方をすればいいでしょう。

あとは5~10年ほったらかして、仕事に専念 株価なんて気にしなくてもいい

今は新型コロナウイルスの影響で株価が大きく下がっています。国の年金運用が3カ月前と比べてマイナスとなっているなんてニュースを見ると不安に感じるかもしれません。

しかし、長い目で見ればいつかはワクチンも開発され、経済は回復し始めます。そのときには株価も戻ります。つまり、今から投資をするということは、安い時期に投資スタートするチャンスともいえます。

毎日の株価はチェックしなくてもOKです(会社の説明会ではチェックするように言われますが、年に一度くらいでいいです)。投資信託を毎日売買してもほとんど意味がありません。それより、毎月もらえるお金を増やすほうが優先ですし、確実な「運用」です。

むしろ仕事に集中して、最初の昇格試験をパスすることを考えましょう。早い会社なら今年のうちに試験がありますが、それだけで「月1000円の掛金」が月2000~3000円にアップすることがあります。こっちのほうが「いい運用」です。

投資については5~10年くらいそのまま続けることをオススメします。このあとさらに下がることがあっても「損をしているから売ろう」とか考えないで、「上がるまでほうっておく」くらいの気持ちで続けてみてください。

うまくいけば、あなたは何もしなくても、年5%以上の利回りになるはずです。

(私も個人型の確定拠出年金(iDeCo)をやっていますが、12年以上売り買いは一度もせず、年率5%くらいを確保しています)

会社はそれを教えてくれない でもそれでいい

ところで、この選び方、会社の人に聞いても、講師を担当する金融機関の人に聞いても、ズバリと答えてくれません。隠しているわけではなく、「言ってはいけない」からです。

確定拠出年金のサービスを提供する金融機関と、会社は、「○○を買うといい」とか「○○は買わないほうがいい」と言うことを法律上禁止されています。自社の利益に誘導してはいけない、という規制があるからです。

社長がやってきて「うちは○○銀行にお世話になっているから、定期預金を50%は買いなさい」なんて言われたら逆らえないですよね。だから禁止です。

金融機関の講師が「うちの商品を買って欲しいからオススメを言ってしまえ」というのと「この人のために本音でアドバイスしよう」というのは区別がつきません。だから個別商品名をあげることは禁止です。

だから、「バランス型ファンドを1本、買っておけばOKですよ」というアドバイスを会社や金融機関からもらえなくても、むしろそれはそれでいいことなのです。

このコラムを読んだあなたはぜひ「定期預金100%」ではなく「バランス型ファンド100%」にして書類を提出してください。

今の新型コロナウイルスの影響を乗り越えたとき、きっと満足のいく運用成績になるはずです。