50年後の日本が今と変わらぬ高齢化に留まる たった1つの冴えたやり方

高齢者が増えて現役世代にしわ寄せがくるという不安、実は「見落とし」があります(写真:アフロ)

来たるべき未来、現役1人が年寄り1人を支えるというのは本当か

将来不安を煽る識者が、必ず取り上げるネタのひとつに「日本は高齢化していき、大変なことになる」というものがあります。未来の不安を煽ることが目的の人がよく指摘する内容です。

よく使われる表現は「現役世代1人が、年寄り1人を支える世の中になる」というものです。

実は役所もこの例えをよく使います。厚生労働省の資料などによれば、高度経済成長時代は「胴上げ型」つまり現役9人で高齢者1人という割合が、現在は「騎馬戦型」になりつつあり(現役2~3人に高齢者1人)、将来は「肩車型」になるという説明がされています。

(→たとえばこういう資料など

現役世代が1人に高齢者が1人ということは、極端な話、高齢者を支えるコストを今の倍以上負担しなければならない理屈になってしまいます。

こういう話を聞かされると、「よし若い世代はがんばろう!」とは思いません。むしろ「日本の未来はいいことないなー」「どうせ若い人の負担が増えるばっかなんでしょ」と思うしかありません。

しかし、このロジック、実は忘れていることがあります。そして、今も50年後も同じ高齢化ですむ、「たった1つの冴えたやり方」があるのです。

実は15年くらいごとに引退年齢は5歳引き上がっているのに、未来が今と同じというのはおかしい

人口推計というのは、これから生まれる子どもの数以外はかなり精度が高くなります。今5歳の子どものうち何人が15年後に20歳になるかはほとんど正確に予想できるからです(ちなみに確率は99.5%以上です)。

しかし、「現役」と「高齢者」の割合、つまり高齢者比率については、65歳という線引きが絶対ではありません

60歳定年が法律上の義務になったのは1998年でした。1986年に法律改正で60歳定年を努力義務とするまでは55歳定年は一般的でした。現在は、というと、65歳まではクビにできない(定年が60歳なら65歳までは継続雇用する義務がある)ことになっています。これは2013年からです。

ざっくり、1980年代(55歳)→1998年(60歳)→2013年(65歳)とすれば、15年くらいごとに5歳引退年齢は上がったことになります。

ところが、「騎馬戦型」のような話をするときはなぜか、今も未来も引退する年齢、つまり高齢者と現役の線引きラインを65歳に固定して話をしています。

2065年、今からほとんど50年も先の話なのに、今と同じ引退年齢を設定しているなんておかしな話です。

今65歳の人は昔よりも10歳以上若く健康な時代になっている

かつて60歳到達は「死期が近づく」ということでもありました。一時期ネットでネタになっていましたが、手塚治虫が1970年代に書いたマンガで書いたと思われる60歳代のおばあちゃんの絵は、今なら80歳代、あるいは90歳代にしかみえないくらい老いています。60歳というのは文字通り「老い」を意味していました。

今は60歳で、しわくちゃで、ほとんど目も見えず、腰が曲がって、介護を頼りにしているおばあちゃんは多数派ではありません。むしろ多くの方はお元気です。

私の知り合いには70歳近くなってもほとんど毎日飲み歩いている人がいますが、あきれるほどに元気です。会話も知的に成立しますし、1時間ちょっとの通勤も平気でこなします。

実際、医学的にも年寄りの若返りがみられるといわれます。日本老年医学会は10~20年前と比べると、日本人の高齢者は加齢に伴う身体的変化が5~10歳くらい遅くなっているとし、これを「高齢者の若返り」が生じていると表現しました。

もはや高齢者のラインは75歳でもおかしくなく、それまでは現役として活動するに十分な体力や健康があるとしています。

日本老年医学会ホームページ

50年後、75歳を引退年齢とすれば高齢化比率は今よりも軽くなる

国の人口統計データを公表する国立社会保障・人口問題研究所のWEBでは将来の高齢化比率の予想も掲載されていますが、最近は「75歳」という線引きデータも出すようになりました。(昔は生データに近いところから75歳未満、75歳以降の人口を自分で再計算しなければならなかった)

これによれば、2065年、このままいくと65歳を線引きした場合の高齢者の比率は38.4%になるとしています。しかし、これを75歳で線引きすれば、25.5%になるとしています(出生中位、死亡中位)。

高齢者比率25%というのは実は2015年の26.6%よりも低いことになってしまいます。つまり、「65歳で線引きした今」と「75歳で線引きした50年後」は高齢者の比率は変わらないということです。

今から約20年後の2040年に、高齢者の線引きを75歳にしたとすれば、これまた27.2%となり、これも今と大差がありません。

国立社会保障・人口問題研究所ホームページ

つまり、「5年に一度、1歳定年年齢を引き上げる」だけで高齢化の問題はほぼ解決する

定年年齢の見直し経緯を最初に説明しましたが、今までの歴史を振り返ってみても、「15年で5歳」つまり3年に1歳程度の引退年齢の引き上げは行われてきたわけです。

定年年齢の引き上げを、「5年に1度」のペースにスローダウンしてもいいので続けていけば、高齢化の問題はほとんど解決します。「2065年、日本人の引退年齢は75歳」、中間をとって「2040年、日本人の引退年齢は70歳」という感じです。

来年、いきなり定年が70歳に繰り上げられ、年金がもらえないのならこれはパニックかもしれません。しかし5年に一度、1歳引き上げくらいのペースならどうでしょうか。

今までと同じか、むしろゆっくりのペースで、「4~5年一度、定年年齢が上がる」、ただそれだけのやり方で、日本人は「若者ひとりでひとりの年寄りを支える不安」から解放されることになるのです。

(おまけ)それでも疑っている人へ

こういう話をすると、疑ってかかる人も多いと思います。「いやどうせ、若い世代は安い賃金で長くこき使われるのだろう」とか「どうせ若い世代の負担だけ増やすのだろう」と懸念する人もいるでしょう。

しかし、日本社会的には労働力人口が激減していく時代なので、若い人の賃金が低く抑えられる時代や、高齢者が働いても安く買いたたかれる時代は終わると考えています。

なにせ2015年に7728万人いる労働力人口(15~64歳の人口)が、2065年には4147万人となると予想されていますから、これは毎年72万人働き手が減る、ということです。若い人や60歳代以降をバイト代程度でこき使おうとすれば、そんな会社は見放され、他の会社に転職される時代がやってきます。

ちなみに現役時代を引き延ばすことは、「いつまでも働かされる」という側面ばかりではありません。厚生年金の権利を多く獲得すること(長く保険料を納めるので)でもあり、これは老後の収入がアップすることになります。また、国に頼らない部分で自力で貯金する期間を長くすることでもあるので、老後に使えるお金は増やせます。

しかも老後が長くなりすぎず(65歳から100歳まで35年なんてあまりにも長すぎる)、むしろ短期化するので貯金からの「1年あたりの取り崩し予算」は増やせます。

ファイナンシャルプランナー的には、引退年齢を5歳ずらすことは老後の安心を相当プラスすることになる方法でもあります。

この話題は高齢者が65歳以降も働ける社会にしようという国の政策ともリンクしていますが、国の政策とかそういうのは個人にとっては正直どうでもいいと思います。

個人にとって、今よりももうちょっと長く働くことがプラスになるのだと考えてみてはどうでしょうか。少なくとも「来年、定年を10歳引き上げる」のではありません。5年に一度、1歳引き上げでいいのですから。