【追記あり】投資デビュー「卵が先か鶏が先か」問題 投資ブロガーとFPのバトルの結末は?まさかの展開へ

投資デビュー知識が先か実践が先か議論はプロレスの様相(写真は本文とは無関係です)(写真:MediaPunch/REX/Shutterstock/アフロ)

【公開後の展開を末尾に追記しています】

(これまでのあらすじをプロレスのシナリオ風にまとめると……)

・私が3月5日、lifehacker[日本版]に「投資デビューはいつがチャンスか、今はベストタイミングなのか」というコラムを寄稿、「投資デビューは思い立ったら吉日」と書いたら、著名な投資ブロガー水瀬さん(新刊は6万部突破のベストセラー作家でもある)のマイクアピール(Twitter)で異議申し立てを受ける。勉強なき投資デビューは危ういと。ここに両者間の遺恨が勃発。

・私が3月26日、日経新聞電子版に「投資デビュー「もう少し先」は無駄 時代は変わった」と題したコラムを投稿、「投資はカジュアルに始めてしまえばいい」と書いたら、水瀬さんのさらなるマイクアピール(Twitter)を受ける。マイクアピール合戦(Twitter)で私はこのネタを深掘りするコラムを書くと宣言。

・3月30日、私がYahoo!ニュース個人に、「有名投資ブロガーが激怒した「勉強不要の投資デビュー」はありかNGか」を投稿。知識が浅くても投資デビューのほうが優先されるとし、さらに遺恨は深まる。

・3月31日、ついに投資ブロガー水瀬さんが動く。自らのブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」にて反論エントリー「「勉強不要の投資デビュー」という珍妙な意見を熱弁するFPへの反論」を投稿。同意するフォロワーも多く現れ、場外乱闘の展開に。

・マイクアピール合戦(Twitter)の後、私がさらにもう一本コラムを書くことを決意。バトルは最終戦へ。

投資と勉強、どちらが先か 結局お互いに根っこは同じだった!?

再反論のコラム、といっても、水瀬さんのエントリーが私のロジックをほとんど分解してくれているので、正直言うとさらに反論を載せる余地はほとんどありません。

なぜなら、私自身も「私の本1冊でいいから読んで投資デビューしたほうがいいんじゃない?」「水瀬さんの本ならなおいいんじゃない?」とか「本を読まないのであれば私のネットのコラムや水瀬さんのブログを目を通してから口座開設すればいいと思うよ」と思っているからです。

私はだいたい月20本くらいネットや紙媒体にコラムを書き下ろしていますが、毎月数本くらいは「投資デビューの正しいやり方」みたいなテーマです。今回のプロレス的やりとりの元になったコラムを除けば、ほとんどのコラムで最低限度覚えておきたい基礎的な知識を解説しています。「投資デビューのときに持っておきたい基礎知識」の認識を私が持っていないはずがありません。

たとえば「投資デビューの上手なやり方」を最新の2018年モデルで整理すればこんな感じです(日経新聞電子版他、他所でいくつか寄稿しています)。

  1. 運用益が非課税となるのでつみたてNISA口座を開設するのがよい
  2. つみたてNISAの運用商品は低コスト運用ができ金融機関にカモられる恐れがほとんどないのでその範囲で選べば商品選択で失敗するリスクは低くてすむ(国内外に株式投資をしているバランス型ファンドでよいのではないか)
  3. つみたてNISAは年40万円が投資上限なのでこの範囲で毎月一定額を投資する手続きをすれば、何百万も買わされる心配もない(自動引き落としで追加投資をすることが肝心)。
  4. あとは水瀬さんの著書「お金は寝かせて増やしなさい」の通りに長期積立投資をして経済の成長の果実を自分の財産の成長の力とする。むしろ株価が下がっているとき積立を続けることが肝心

しかし、上記のたった4つのステップでも、理由を納得しようと思えばそれなりの知識は求められます。そして「ちゃんと勉強してからの投資デビューのほうが酷い目にあう確率は下がる」ことは間違いありません。

水瀬さんはとてもマジメな好青年(いや正確に言えば「好ビール好き中年」か)なので、マジメさゆえに勉強の必要性を強く説いています。それはとても正論です。社会に広く、金銭教育や投資教育が普及するとよいなと思います。

私は水瀬さんよりは不真面目で、欲望のうごめく現実を是認しているので、投資デビューの優先順位を少しだけ高く置きます。またデビューを遅らせることによる逸失の重みを大きく置きます。

私の主張は「勉強をほとんどしない投資デビューは、デビューしないことよりベター」ということにつきます。

それは水瀬さんの言う「きちんと勉強をしてから投資デビューをしたほうが、勉強をほとんどしない投資デビューよりベター」なことのさらに下の話をしているだけなのです。

この2つの論説はひとつの式に合体できます。

「A:きちんと勉強をしてから投資デビュー」>「B:勉強をほとんどしない投資デビュー」>「C:投資デビューもせず勉強もしない」

このうち水瀬さんは「A>B」論を、私は「B>C」論を言っているような感じです。そして両者も「A>C」については同意しています。

分析すればするほど、両者の見解はほとんど隣接しているような感じがしてきました。

だとするとこの遺恨はなんだったのでしょうか。

パターナリズム信奉者の私が「投資デビュー」の理想をガチガチに主張すると実はこうなる

実は私も、水瀬さんや水瀬さんのフォロワーの皆さんの意見は嫌いではありません。むしろ共感するところもあります。

実のところ、私はパターナリズム(父権主義などともいう)を支持していますので、無手勝流で投資デビュー戦に挑むくらいなら、ほどほどの環境を整えて投資デビューに導くほうが望ましいと本音では思っています。

また、知識不足の投資デビューが金融機関のカモにされる恐れの高いこと(最悪の場合、詐欺的商品に財産をカモられる)の心配もあります。やつらは人の欲望をあぶり出すのが上手なので、知識がない人ほど足元をすくわれる危うさがあります。

私が「カジュアルにやっちゃって」と言わず、マジメ一直線でコラムを書くなら、「国は投資デビューについて政策的にもっと強制を効かせる選択肢を取るべきだ」と書くでしょう。

例えば証券口座やFX口座の開設については規制として

  • 投資デビューから30日は10万円を入金の上限にする
  • 投資デビューから60日はレバレッジを禁止する

のような「縛り」を入れることを提言します。

たったこれだけの規制で短期的な投機熱に浮かされて、ムダな売買を行い財産を全部なくすような愚は避けることができるでしょう。

別の強制的選択肢も考えられます。

  •  現役世代であればiDeCoこと個人型確定拠出年金に強制加入させる
  •  最低月5000円ないし10000円の積立を義務づける
  •  法律上iDeCoは60歳まで解約できないので確実な老後資金準備に資する
  •  投資をするかは自己判断で行ってよいが、初期設定は分散投資されたバランス型投資信託にしておく

のようなやり方もあると考えています。

これはイギリスの老後資金貯蓄用口座のNESTに近いイメージです。確実に国民の老後資産を増やすことになりますが、国民に強制を促すことは嫌気されるので日本で法律が成立することは確実に不可能でしょう。

あるいは

  • 投資デビューはつみたてNISAしか開設できない
  • 投資デビュー半年たったら好きな金額を入金し自由に売買してよい

という手もあります。

しかし、いずれも国民の自由な権利行使を制限しているきらいはあります。中長期的には国民の福祉に資すると確信しますが、短期的には値下がり時などに批判が相次ぐでしょう。

私が「カジュアルに投資デビューしちゃえ」という背景には、政策や仕掛けをまじめに考えても、やっぱり数千万レベルの証券投資口座の開設を国民に自発的に行わせることは難しいだろう、と考えていての発言であったりするわけです。

自分の意思で口座開設を手続きしなければならない以上、とにかくやる気を止めてはいけない、というわけで「適当な『カジュアル』発言」というより「苦渋の『カジュアル』発言」であるわけです(←なんか政治家の発言みたいになってきた)。

両者に共通の敵があるとしたら「おかしな投資情報」かもしれない

実は水瀬さんも私にも共通の敵があります。それは「おかしな投資情報」という敵です。

「投資デビューはカジュアルに」とか「好奇心でスタートしてOK」と言うものの、まったく何も知らずに口座開設する人はまれでしょう。大型書店の「株・投資」コーナーに行って「10倍に値上がりする中国株はこれだ」とか「ビットコインまだまだ儲かる~億り人への最短ルート」とかいうような本を数冊買い込んで斜め読みしてから口座開設をするはずです(タイトルは適当に創作しました)。あるいは雑誌や新聞、ネットの投機的な情報に食いついてビットコインを買ってみたりします。

実はこれ、間違った道を間違った歩き方で投資デビューさせてしまう最後の、そして最大の弊害です。

まず、マネー雑誌は投資初心者にはほとんど役立ちません。あれは一定の投資経験者のための媒体であるからです(投資初心者向け記事と銘打たれているならそのページのみは役立ちますが)。

またマネー雑誌以外のマネー情報はこれよりも役立ちません。夕刊紙の銘柄推奨や男性向け雑誌に数ページ差し込まれた「通勤時間にFXで月5万円おこづかいアップ」みたいな記事は投資初心者にはほとんど害悪です。実態は広告である記事広告には特に注意してください。

水瀬さんが何年もブログを更新しながら訴えていることのひとつに、悪質な投資情報に引っかかる投資初心者をひとりでも減らしたいという思いがあるのではないかと思います。

私も書ける媒体であればネットのどこでもお金のコラムを書いていますが、マネーリテラシーを引き上げ、バカな投資情報にだまされないでほしいとの一念があります。

プロレスではしばしば、シリーズ中にひたすら遺恨を深めたふたりが現れ、シリーズ最終戦に激突します。そして納得のいくぶつかりあいの後、第三の敵が現れ、共闘することになったりします。「この団体を愛する気持ちは同じだから外敵と共に戦おう」と握手をしたりします。

これに似て、今回のはぐれFP(私。基本的にFP業界のメインストリームからは外れているので)と投資ブロガー水瀬さんの間に起きた遺恨も、何度かぶつかってみると解消できる余地があるのかもしれません。

そこで、今回のコラムの最後は、投資デビューの前に読んでおきたい一冊選びというテーマでしめたいと思います。下記以外にも良書はたくさんありますが、書籍選びでは2つの点を考慮してみるといいでしょう。

まず、2018年1月からスタートしている「つみたてNISA」が記述内容に含まれているかどうかです。情報として欠かせないので、あまりにも古い書籍はデビュー時の一冊には避けておくべきだと思います。

また、金融機関の社員や、運用機関に勤める人が書いた本は外してみるとよいと思います。読者に投資を薦めると自社の利益が増える立場にある人は、言っていることが正しくても、中立的ではないと考えるからです。

ということで、私と水瀬さんの著書をそれぞれ一冊、これに2冊を加えて、4冊を推薦図書としたいと思います。いずれも異なるスタンスで、最低限抑えておきたい投資知識を解説してくれます。

くれぐれも、金融機関の広告コンテンツに引きずられたり、初心者向けではない投資コンテンツにハマって、足が抜け出せない状態にはならないようにしてください。それだけは、私も水瀬さんも望まないことだからです。

竹川美奈子「税金がタダになる、おトクな 「つみたてNISA」「一般NISA」活用入門

山崎元「人生を自由に生きたい人はこれだけ知っていればいい お金で損しないシンプルな真実

水瀬ケンイチ「お金は寝かせて増やしなさい

山崎俊輔「読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方

【追記】

○この後、当記事を受けて水瀬さんのブログに4月6日付けの下記エントリーが掲載されています。

「勉強不要の投資デビュー」論争についての手打ち案のご提案

○私と水瀬さんのあいだで「勉強が先か投資の実践が先か」と盛り上がっていたのとは無関係と思いますが、雑誌「日経マネー」のセレクション記事として、4月5日付けで「投資に勉強なんていらない 応援したい企業を探そう」という記事が掲載されました。これは2018年3月号記事を編集、掲載しているものですが、さわかみ投信の会長である澤上篤人に対するインタビュー記事を構成しています。

私が主張してきた「勉強よりもカジュアルな投資経験を先に」に似ているように思えますが、私は違和感を感じています。私は「勉強しなくてもいい」とは思っていないわけですし、それなりに本文での表現には配慮をしていますが、同記事では「投資の勉強もしないの? むしろ、絶対にやってはいけない。」と言い切っていたり、表現がいささか乱暴なのが気になります(インタビュー記事の宿命とは理解するものの、校正の機会はあったはず)。

また、金融商品を販売する会社に属する立場の同氏が、勉強もせず買えばいいのだ、というのは口が滑りすぎではないかと思います。勉強せずさわかみ投信を買う人がいるほど、同社は利益を得る関係にあるからです。そして商品理解のないことを承知で顧客に金融商品を販売することは不適切です(もちろん、記事は一般的な株式投資について述べているため直接的にさわかみ投信のセールスではないことは確かですが)。

とりあえず、一緒くたにされるのはイヤだなーと思ったので、ここに追記しておきます。私の意見としては、運用会社の役員が投資の魅力を伝える伝道師的役割を果たすべきではないと思います。自社商品の魅力についてのみ語ればよいのです。この点は投資業界の問題のひとつなので、機会があれば改めて論じてみたいと思います。