FPの誰もが薦めるiDeCo、つぶれたり国に没収されたりしないのか

FPお薦めの制度、iDeCoですが資産が取り上げられることはないのでしょうか(ペイレスイメージズ/アフロ)

iDeCo活用を促してiDeCo出口を語らないのはおかしい

私の連載記事をご覧いただいている人とお話をしていて、「iDeCoやNISAの活用を促す記事をよく書いてますよね」という話になりました。税制上のメリットがあるのは明らかで、同一の商品に投資をするなら、iDeCoやNISA口座を活用するべきです。ほとんどのFPはこれを薦めています。

私も、税制優遇のある口座活用は個別商品の推奨を行う以前に重要なことだと考えているから各所で紹介記事を書いているのですが、「活用を促す割には、出口戦略についてはあまり書いてませんよね。それってなんだか、お役所のご用記事っぽく見えるときがありますよ」と指摘されて、ふむふむと思いました。

個人的にはそういう「疑いの目」は大事だと思うので、そういう見解を持つ人は大好きです。「ヤマサキさんの言うことは何でも信じます」といわれるほうがむしろ違和感があります。私がもしかしたら役所から小銭をもらってこうした記事を書いているのかもと疑ってみることは、記事の理解を深める点でも有意義だと思います(もちろん、もらっていないですが)。

出口について書いてない理由があるとすれば、今は制度の紹介や活用を話すべき時期であることと、紙幅の関係もあって出口の話までなかなか及ばない、というそれだけの理由なのです(ベストセラーになっているiDeCo本をいくつか購入されれば、出口までちゃんと紙幅を割かれています)。

そこで、出口戦略や、資産の保全体制について解説したコラムを書いて、とある媒体に寄稿したのですが、読者に受けないと思われたのか、何らかのご都合があったのか掲載を断られてしまいました。

そこで、自由にオピニオンを発信できるYahoo!ニュース個人の枠を使ってコラムを掲載してみたいと思います。

金融機関がつぶれても国がつぶれてもお金は全額守られる仕組みがある

まず、iDeCoの資産保全体制について確認してみましょう。実はこの制度、国の公的な制度でありつつ、実際の資金は民間サイドに置かれている(信託銀行にある)というのが大きな特徴です。

つまり、国がどこかで没収し世代間の支え合い(公的年金)に使われるようなことは絶対にありません。気がついたら国が保養所を建てて経営したものの赤字になって何億円も損をしたツケが回ってくる、というようなこともありません。

制度の実施主体である国民年金基金連合会も掛金を収納して信託銀行に入れてしまえば、口座管理手数料以上のものを勝手に引くことができないほどです。制度としては「年金」と名がつくものの、iDeCoは個人の保有する証券口座・銀行口座に近いのです。

また、信託銀行というのは顧客のお金と自らのお金を分別管理できていることが業務の条件なので仮に破たんしたとしても、お金がなかったということもありません。

定期預金や保険商品については銀行ならペイオフ、保険会社なら保険契約者保護の仕組みがあるので、全額なくなるということはありません。投資信託についても運用会社がこっそり使い込むことは不可能で、これまた信託銀行が実際の資産を運用会社から切り分けて保全するようになっています(株価が下落して値下がりするのも、値上がりも値下がりもすべて個人の損益とすることで、金融機関の中抜きを許さない仕組みの一部です)。

こう考えてみると、相当に資産の安全性が確保されている仕組みといえます。

iDeCoの出口戦略(1)受け取り方法の選び方

そうなると、出口で留意するべきは、受け取り方ということになります。iDeCoは、

(1)一時金と年金の受け取り方法を選べ、組み合わせもできる、

(2)受け取り時期は60~70歳の好きな時期を設定でき、受け取りが終了するまで非課税投資は継続できる、

(3)年金受け取りをする場合、5~20年の範囲で受け取り年数を選べ、年間の受け取り回数も年2~6回まで選べる、

という特徴があります。

これは、類似する諸制度と比べて格段の自由度です。個々人の生活設計に応じて自由にもらい方を選べることになります。例えば

(A)60歳から5年分割でもらって、継続雇用制度の賃金減少を食い止める収入源とする

(B)65歳から5年分割でもらって、公的年金の受け取りを留保し繰り下げで増額給付をねらう

(C)60歳時点ですっぱりキャッシュで受け取って、リフォーム資金や住宅ローン完済に使ってしまう

というように、使い方はいろいろあるわけです。

ただし、これはライフプランだけで決定するものではありません。むしろ受け取り時点での税制を勘案して決定するべきです。

iDeCoの出口戦略(2)税制や手数料

iDeCo口座を最終的に活用するカギは、受け取り時点での税制と口座管理手数料です。

○口座管理手数料、振込手数料について

iDeCoは口座管理手数料がかかるのが特徴ですが、これは受給時点でも同様です。企業型確定拠出年金も多くの規約では口座管理手数料をOBに徴収する制度設計にしています。これは年金受け取りを検討する場合に必ず確認しておくべき条件です。

また、口座管理手数料とは別に、振込手数料を徴収するのiDeCoや企業型確定拠出年金も多いようです。仮に一回あたり432円の振込手数料を徴収するとしたら、これは隔月の年金受け取りを留保するに十分な条件です。もし20年の年金払いで隔月給付とすれば432円×年6回×20年分、つまり51840円もの負担を求められるからです。いずれも運営管理機関が提示した書類の記載を確認してください。

負担があまりにも重い場合

「年間の受け取り回数を年2回にして疑似ボーナスのような受け取り方とする」

「20年受け取りは回避し、5~10年程度の受け取りとする」

あるいは

「一時金で一回で受け取ってしまう」

という選択肢を考えることになります。

次に考えたいのは税制の改正です。iDeCoや企業型確定拠出年金は、拠出時点で課税をせず、運用期間中でも課税をしていないため、受け取り時点で一度は課税の網をくぐり抜けなければなりません。

この網は

「一時金受け取りは退職所得控除」

「年金受け取りは公的年金と合算して公的年金等控除」

で扱われます。

○年金受け取りの場合

現状では、すでに公的年金(特に厚生年金)を受給している場合、課税対象に入っていることが多いため、むしろiDeCoの年金収入を上乗せすると所得税や住民税の課税対象が増え納税額が増えることになります。全額をまるごと受け取れるわけにはなりません。また、住民税額は社会保険料の算定にも影響を及ぼすため健康保険料などが増えることでさらに手取りが下がることになります。

行動心理学的には年金受け取りにしたほうがムダ遣いを抑える仕組みになるのですが、税制上はiDeCoを年金受け取りするインセンティブがないということになります。

しかも、年金課税は強化の方向にあります。昨年末の税制改正大綱でも公的年金等控除のベースが10万円下がることになりました(2020年から適用の見込み)。将来的にも会社員の課税体系に近づいていくでしょう(といっても年収が少ないので課税「額」は現役時代より少ないことは変わらないが)。

○一時金受け取りの場合

一時金については退職金等の受取額と合算して退職所得控除の非課税枠を使用することになりますが、超過した分があっても2分の1にのみ課税対象とするので税額はそれほど大きなものになりません。中小企業の会社員の場合、退職金とiDeCoの受取額を合計しても、退職所得控除を超えずにすむ、ということもあるでしょう。

ただし、公的年金等控除と同様に退職所得控除は縮小する可能性はあります。いつかは実行されるでしょうが、時期はまったく分かりません(団塊世代の退職金受け取り時点、10年以上前から議論がされている)。ただし、流れとしては公的年金等控除の縮小が先行し、退職所得控除が縮小する、の繰り返しになると予想します。全般には一時金受け取りのほうがメリットがある状態が続くのではないでしょうか。

また、「現役時代の税制メリット以上の課税をされて、酷い目に遭わされるのではないか」という心配は行き過ぎでしょう。入り口で非課税だったが、出口のほうが課税がキツくなるのではという心配をする人がいますが、現役時代のほうが給与所得が高額である分、税率も高くなりますし、現役時代と高齢者については高齢者のほうが税率が低く設定される(もともと年金収入も低いので納税額も低くなる)という基本構図が逆転することは税の論理として考えにくいからです。

iDeCoの出口戦略(3)資産運用の考え方

もうひとつ、出口戦略でアドバイスしておかなければならないのは、「資産運用の考え方」としての出口戦略です。

受け取りを意識し始めた場合、マーケットの急落による回復を待つ時間的余裕が生じない可能性を、頭の中に入れておく必要があります。過去でいえば、59歳半年を過ぎるまで、資産のほとんどを投資信託につぎ込んでいたところ、リーマンショックに見舞われ最大で30%ほど下落、回復する間もなく定年退職という人が実際に現れました。

確定拠出年金は最大で70歳まで受け取りを遅らせ非課税投資を続けることができます。また、受け取り後に改めて資産運用を継続することは自由です。しかし、資金ニーズがあったのに30%マイナスで受け取る羽目になった、というのは困ります。確定拠出年金受け取り時点での急落を回避する運用戦略はあってよいと思います。

一方、50代前半で上昇相場が来たからと利益確定をしてしまうと、せっかく資産額が成長してきた50歳代の運用期間をほとんど無利息の状態で費やすことになってしまいます。早めの利益確定には注意点もあります。

単純に考えるなら、50歳代後半に入ったところで、「このマーケットがもう60歳までには再来しないであろう」という上昇相場に入ったのであれば、一部ないし全部の利益確定を行うというのがポイントになるでしょう。たとえば

「今55歳であれば、投資資金の半分以下を部分的に定期預金にシフトするが一部は投資を継続する」

「58~59歳であればほとんどの投資資金を定期預金に移し、これ以降の急落があったときの損失を回避する」

というやり方が考えられます。

企業型確定拠出年金を実施する企業によっては、50歳代を対象とした運用管理をテーマに設定して投資教育を企画しているところもあります。iDeCoではなかなか受講するチャンスがないのですが、それほど難しい概念ではないので、年に一回でもいいので意識してリスク許容度の変化に対応していきたいものです。

iDeCoの出口戦略(4)今後の制度改正の方向性

ところで、出口がまだ遠いということは税制改正だけでなく制度そのものの改正の可能性もあります。私は60歳以降の拠出が可能になる可能性は高いとみています。65歳現役社会になろうとしているのに、iDeCoは60歳までしか積み立てられないというのはおかしな話です。ただし、65歳定年制(厚生年金に誰もが65歳に入るようになる)や60歳以降の国民年金保険料納付制度などの改正とセットになるのではないかと思います。

また、制度のいきなりの廃止は考えにくいと思います。というのはiDeCoに類した制度はほとんどの先進国で用意されており、公的年金の充実が困難である情勢を鑑みて実施されている情勢です。公的年金の水準引き下げをしている時点でiDeCoを廃止することは考えにくいからです。

また、仮にそうなっても、積立金が毀損することはほとんどないでしょう。最初に述べたとおり、国はお金を預かっていない状態なので、信託銀行にある資産は全額個人に還元されることになるでしょう。

以上、iDeCo(企業型確定拠出年金も基本的には同様)の保全状況や将来の改正の影響、受け取り方法などの出口戦略について考えてみました。

まだ60歳は遠い、と考えている人も「出口」について少し思いを巡らしてみると、加入を検討してくる気持ちになるかもしれません。参考にしてみてください。

追伸 掲載を断られた理由、もしかしたら文字数が多すぎることだったりして。

   今数えてみたら通常のコラムの3倍くらい文字数使っちゃってます。

   ここまで読まれた方は、お疲れ様でした!