コミケの軍資金はいくらぐらいが適切か

いよいよ冬コミ。軍資金はいくら用意するべきか(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

コミケで買い物 財布のひもが緩みっぱなしで大変なことに

趣味の同人誌即売会、いわゆるコミケはオタク趣味人にとって物欲発散の機会です。アニメやゲームのファン活動だけでなく、オリジナルの漫画、ゲーム、音楽などの発表の場でもあります。

コミックマーケット、コミケ、コミケットは有限会社コミケットの登録商標です。本記事では一般的な即売会の総称として本記事では使用することがあります)

私も実はコミケ参加者のひとりです。初参加は1991年の夏コミ(晴海でクーラーなし!)から始まり、学生時代から30歳くらいまでのあいだ、サークル参加者側で同人誌を作っては細々と売ったり、友人の壁サークルの売り子をやって何千部を売ったりしていたことがあります。もちろん、いろんなサークルの同人誌もずいぶん買い集めました。

コミケといえば、財布のリミッターを解除しどんどんお金を使う場として語られがちです。「○万円使ってしまった!」のような武勇伝がネットでは流れてきます。

今回は、「ファイナンシャルプランナー的に、どれくらいコミケ予算を設定すればいいのか」をおもしろまじめに考えてみたいと思います。

実はコミケ参加者の出費額データがあった!

コミケ参加者のお金の使い方についてデータを調べてみたところ、主催団体であるコミックマーケット準備会が自ら行った調査結果がみつかりました。

コミックマーケット35周年調査 調査報告(2011年12月)

コミックマーケット準備会・コンテンツ研究チーム

出典:コミックマーケット準備会ホームページ

これによれば、一般参加者のもっとも標準的な出費額は「サークル(同人)で1~3万円くらい使い、企業ブース(物販)で0~5000円円程度使う」というのが平均のようです。分布は下記をご覧ください。

サークルでの購入金額分布
サークルでの購入金額分布
企業ブース物販での購入金額
企業ブース物販での購入金額

報告書によれば10万円以上使う人はあまり多くありません。データでも男性の40人に1人、女性はもっと少なくて200人に1人です。印象よりは少ないと感じるのではないでしょうか。

3万円程度、というのは多いように見えますが、お正月のバーゲンセールに突撃をして服を買う人と実はそれほど大差がありません。趣味につぎ込むお金としては思ったより常識的かもしれません。

一日あたりのお金の使い方について聞いた回答もあり、これによれば、サークルスペースでの一日あたりの平均消費額が男性28400円、女性21865円、企業ブースでの一日あたりの平均消費額は男性9684円、女性2328円となっています(おそらくゼロ円の人は除いている)

コミックマーケットの場合、3日間開催ですから、1日だけ参加した人が2~3万円弱使う、というのがイメージとして分かりやすいと思います。

もうひとつ、調査母数はあまり多くないものの、別の調査結果もあったので参考にリンクを張っておきます。傾向は似ている感じでした。

オタラボ「夏コミ90、参加者のお財布事情」アンケート調査結果

出典:オタラボ ホームページ

予算オーバーのリスクを避ける3つの策を考えてみよう

さて、データがみつかったところで、コミケ軍資金の考え方をまとめてみます。かつて現役のコミケ参戦者であった古強者からのアドバイスとして聞いてください(私は一応、ファイナンシャルプランナーなので、財布の管理のテクニック的な話もしてみたいと思います)。

まず、第1のカギは

「自分の年齢や年収に応じたリミットを設定する」

ということです。

軍資金のリミットは当日に決めるのではありません。当日に許されるのは、数千円程度のオーバーにとどめるべきです。もちろんATMに事前に行きますから、自分なりの上限を前日までに決めておくことにはなりますが(小銭も多めに持っていくでしょうし)、「とりあえず残高いっぱい下ろしておこうか」というような考え方は止めておきましょう。

平均が3万円といっても、学生や新社会人であまり余裕がないなら、「1万円をリミットにしよう」のように勇気を持って決断してください。

社会人を何年か経過し、預金通帳の残高に少しは余裕がある、といった人も、上記のグラフをみて「マックス3万円くらいかな」と冷静になってみることをおすすめします。「出せる上限」と「使っていい上限」は違うはずだからです。

同人誌は基本的には割高です。24ページ前後のマンガに1000円払うことは当たり前ですが、通常のコミックなら160ページはあって500円以下です(サンデーコミックス「だがしかし」9巻調べ)。市中に流通していないというプレミアム感があるものの、同人誌ははっきりいって贅沢品です。

参戦前のあなたに「3万円の予算で、30冊の同人誌(720ページ)を楽しむ満足と、60冊の市販コミック(4800ページ)を楽しむ満足と費やせる時間を比べてみなさい」というのは酷だと思いますが、出かける前に少しだけ冷静になって予算を決めておきましょう。

次に、第2のカギは

「財布に入れた現金額があなたのリミットになる」

ということです。

コミケのサークルは基本的に現金決済です。電子マネー決済ができるサークルが少しあるようですが、まだまだ現金での買い物が主流です。

だとすれば「出発前に財布に入れた現金額があなたの出費額の上限を決める」ということです。3万円現金をいれて、4万円の買い物はできません。一方で、6万円現金を入れて出発し『今日の予算は3万円まで』と自分に言い聞かせたところでその予算を守ることは困難だと思います。

買い物においてムダ遣いを減らす最強のテクニックは「即決しない」です。駅ビルで気に入った服をみつけてもすぐに買わず、一度スタバでコーヒーブレークすれば衝動買いの失敗を半減させることができます。

しかしコミケの会場でこれはほとんど不可能です。行列に並んで新刊を目にして「一度列を離れて考え直し、買うものだけ並び直す」ことはほとんど不可能だからです(物欲的にも、時間制限的にも非現実的)。

ですから「予算以上のお金は財布にいれず、今日買い物をする上限だけ入れて家を出る(始発で)」を心がけてください。あなたが普通の参加者なら3万円ということです。

会場を一度出れば、SuicaやEdyなどの電子マネー、あるいはクレカで買い物できますから、財布にある現金すべてを会場で使い切っても大丈夫です。とにかく「同人誌や物販に使う額だけ持つ」ことが鉄則です。

最後のカギは、

「大手作家なら、あえて見送る、も戦術」

ということです。

かつては同人誌は即売会の現場でしか手に入らないとてもプレミアムな存在でした。後日なんとかして入手しようとするには作家さんのホームページを通じて直接通販するか、転売目当ての人が手放した中古を割高で買うしかありませんでした。

だからこそ、「興味が少しでもあればとりあえず買っておけ」のような格言が言い伝えられているわけですが、時代は変わりました。ある程度メジャーな作家さんの同人誌で、本当に欲しいものがあったとしたら、後日秋葉原等でちゃんと新刊を買えます。発行者が専門店(書店から表現を訂正しました)に直接卸しているものなので売り上げは作家にちゃんと還元されますし、割高になることもありません。こうした専門店(別に略す必要もないから言ってしまえば、とらのあなとかメロンブックスとか)ならネット通販も利用できますので自宅から後日注文することもできます。

効率的な巡回ルートを検討して、全部新刊を買おうと意気込むとき、「あえて当日は寄らずに後日検討する」というサークルスペースをいくつか増やしてみてください。列があまりにも長いなら現場であえてパスしてみるのもいいでしょう。

それよりも、無名の作家さんが隠れている壁以外の列を眺めて、「これは!」と思うような同人誌(単価は安め)を3~4冊買ってみてはどうでしょうか。売れっ子作家を追いかけるよりも「あの人気作家さん、壁サークルになる前からお気に入りだったんだよね」というほうがこだわりのあるオタクらしい気がします(わが家にはデビュー間もない頃の犬上すくねさんの同人誌がありますが密かな自慢のひとつです)。

これからコミケに参戦するあなたへの最後のアドバイス!

コミケでのお金の使い方についていくつかアドバイスしてみました。防寒対策(特に冬)や水分補給対策(特に夏)などはネットの各所で紹介されていますので、初心者は必ずチェックして参戦してください。

私からは最後にもうひとつだけ助言しておきます。

「予算のリミットを決めたのなら、その範囲で存分に楽しんでこい!」

自分なりに上限を決めたのなら、使うことを後悔しないでください。後からぐじぐじ後悔したところで、かけたお金を回収することはほとんど不可能です(まんだらけに売りに行けば数割くらいは回収できるかもしれませんが)。

それよりも「イベントを楽しむ」心を大切にしてください。会場へ向かう電車内でのわくわく感、会場を駆けずり回る間の高揚感、帰路に肩に食い込む荷物の痛みの心地よさ、帰宅後落ち着いて開くお気に入り作家の一冊目の手触り、すべてを楽しんでください。

運営スタッフと作家さんへの感謝をしつつ、ぜひ楽しい3日間(と楽しみの余韻を残した年末年始)にしてください。

それでは、楽しいコミケを!