イオン銀行とマネックス証券の「攻め」で変わるか iDeCo(個人型確定拠出年金)勢力図

ショッピングモールでiDeCoのPRは大きな武器となるか(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

年内100万口座を目指して拡大するiDeCo市場

2017年1月より大幅な規制緩和が行われ、現役世代なら原則として誰でも確定拠出年金制度が利用できるようになりました。個人型確定拠出年金にはiDeCoというニックネームも与えられ、徐々に市民権を得つつあります。

加入者数の伸びは著しく、規制緩和前(2016年12月末)段階での30.6万人が、今年の6月末現在の加入者数で55.0万人とほぼ2倍に増えました。

8月25日付けの日経新聞朝刊でも「個人型DC 加入者8割増 6月、対象拡大から半年で」と記事にしています。

2002年1月から個人型確定拠出年金がスタートしていることを思えば、15年かけた蓄積をほぼ半年で追いついたということになります。

類似した制度をみると、国民年金基金という自営業者向けの公的な老後資産形成支援制度が42.7万人(1991年スタート、26年の歴史)、小規模企業共済という自営業者や中小企業経営者向けの自助努力による退職金準備制度が165.7万人(1965年スタート、52年の歴史)といわれており、比較してもiDeCoの勢いがうかがえます。

今のペースでは期待されていた年内100万口座到達に微妙な趨勢ですが、ここでいくつかのニュースが入ってきています。イオン銀行の参入とマネックス証券の参入です。

イオン銀行の「攻め」に注目が集まる

6月27日にプレスリリースを出し、7月3日に受付を開始したイオン銀行のiDeCoの特徴は「手数料と商品ラインナップで攻めの姿勢」をみせてきたことと「全国の店舗網を相談や手続きの窓口として活用」すると宣言してきたことにあります。

http://www.aeonbank.co.jp/ideco/

攻め1「手数料と商品ラインナップで攻めの姿勢」

イオン銀行のiDeCoはもともと親密な関係にあるみずほ銀行のシステムを活用しているのですが、みずほ銀行が提供するiDeCoより積極的な商品ラインナップです。

まず口座管理手数料については無条件で無料としており必ず引かれる月167円のみの負担ですみます。さらに運用商品のラインナップにおいては、運用の手数料(信託報酬)を抑えた商品をずらりと並べており、一本で世界中に分散投資可能な「マイバランス30 確定拠出年金向け」でも年0.3348%を提示してきました。これはみずほ銀行のラインナップに含まれている「投資のソムリエ<DC年金>リスク抑制型」の年0.6372%を大きく下回ります。

筆者はiDeCoプランのお得度を比較する公式を提案しています(過去記事はこちら→「個人型確定拠出年金(iDeCo)の取引相手を決める、もっとも簡単な公式」)。これにあてはめると

みずほ銀行 0.8376

イオン銀行 0.5352

とイオン銀行が上回ります(低いほど安くて優秀ということ)。実はみずほ銀行も悪くないスコアなのですが、イオン銀行はこのスコアをさらに下回り、おそらく最安と思われるSBI証券に次ぐレベルで参入してきたのです。

商品数を17本と絞り込んできたのも、投資初心者に理解しやすく活用しやすい選択肢としてメッセージが明確になっています。こちらはむしろ60本以上の選択肢でむしろ初心者は混乱するSBI証券よりわかりやすいでしょう(SBI証券は、旧来型の商品をまだ整理できていないので今後はシンプルになると思われます)。

攻め2「全国の店舗網を相談や手続きの窓口として活用」

もうひとつイオン銀行のユニークな点として

「イオン銀行iDeCo」のお申し込みは、初心者のお客さまでも安心して相談できる当行店舗で、365日いつでも受付可能です

出典:イオン銀行ホームページプレスリリース

とうたっていることです。

イオン銀行の店舗といえばイオンのショッピングモールにも多く設けられており、日常の買い物の延長として店舗が身近にあることでもユニークな金融機関ですが、そこで受付を行うとしているわけです。

iDeCoの多くは店舗受付をしていないことが問題でした。一方で店舗対応をしているところは先ほどのスコアでは割高になっていて、説明を聞いたり書類の記載方法を教えてもらいたい人には選択肢が限られていました。

実はiDeCo、加入申込書類の不備が多いとされており、ある金融機関の担当者は「一発で書類がOKになることのほうが珍しい」とぼやいているほどです。

郵送申し込みで書類不備があると、郵便で返送ののち再送付してもらうことになりタイムラグも大きくなります。また不備があれば加入のやる気もくじけます。しかし店頭で基本的な書類内容の確認が行われれば、不備の可能性は大きく減少します。

また、全国の店舗網を活用したiDeCoセミナーも予定されているようで、こうした取り組みを通じて、「買い物のついでにiDeCoのメリットを認知する」という可能性も期待できます。格安スマホの普及でもイオンは大きな爆発力を発揮しましたが、「そもそもiDeCoなんて聞いたこともない」という層にPRする方法としては「イオンの店頭」は最高のチャネルになるかもしれません。

遅れてやってきたイオン銀行はもしかすると、この秋以降のiDeCo台風の目となるかもしれないのです。

最後のビッグネーム? マネックス証券はどこまで攻めてくるか

もうひとつ業界の注目を集めているのは、ネット専業証券の一角であるマネックス証券がiDeCo参入を表明していることです。

ネット証券ではSBI証券が積極的なプランで以前から口座獲得をしていたところに、2016年後半に楽天証券が参入を表明、「口座管理手数料も投資信託の運用手数料も安い」というアプローチでライバル各社を驚かせ、iDeCoビジネスを活性化させました

現在のiDeCoの活況の一部は楽天証券によるものといってもいいくらいです。ところがマネックス証券は2017年1月の規制緩和を受けてもなお沈黙を守っており、その動向が注目されていたのです。

それがとうとう6月21日にプレスリリースを出し、9月下旬予定としてiDeCo参入を表明してきたのです。

https://info.monex.co.jp/news/2017/20170613_01.html

プレスリリースではロボアドバイザーの活用と、豊富な運用商品のラインナップをうたっています。しかし、執筆時点ではその詳細は明らかになっていません。そろそろ詳細の公表があるかと待っていたのですが、残念です。

ロボアドバイザーの活用についてはイオン銀行やみずほ銀行、SBI証券など各社が提供してきていますが、まだ取り組みは始まったばかりで、これに似たサービスを提供すると思われます。

むしろ注目されるのは運用商品のラインナップと口座管理手数料で、どれくらい「攻め」の姿勢を見せてくるかに期待が集まっています。筆者の予想ではSBI証券および楽天証券と勝負する口座管理手数料(つまり国民年金基金連合会等が徴収する月167円のみで実質無料とする)を提示してくると考えています。また、運用商品のラインナップでは、20~30本程度のラインナップに信託報酬の低い投資信託を組み入れてくるのでは、と予想していますが、さてどうなるでしょうか。

まだiDeCoをスタートしていない人の最終決断のときが来る? マネックスを待って決めよう

iDeCoの口座開設をまだためらっていたり、面倒さに負けて資料収集を先送りしていた人にとっては、イオン銀行とマネックス証券が「後出しじゃんけん」の勝負に出てきたことは朗報です。

既存の金融機関の候補先の資料に加え、2社の資料請求を行えば、おそらくもう選択肢は出つくすと考えられるからです。

これ以上、スタートを遅らせることはあなたの老後に向けて百害あって一利なしです。というのもiDeCoは口座開設が認められてはじめて積立がスタートでき、さかのぼってまとめて入金するようなことは一切認められないからです。

(2018年より掛金限度額の年単位化がはじまり、同一年内に限りあとでまとめて掛金拠出するような運用が可能になる見込み)

早く始めた人ほど老後の資産を多く積み上げられ、早く始めた人ほど所得税や住民税をたくさん節税できるiDeCo、まだ未加入の人はこの秋が最終決断のタイミングではないでしょうか。