国民年金を65歳まで5年長く払うことになるのは当然の理屈である

国民年金を40年加入から45年加入へ改正か?

産経新聞1月11日付け記事で「基礎年金加入、45年に 厚労省検討 水準低下を緩和」という記事が掲載された。現在、国民年金に加入する20歳以上の国内居住者は60歳まで国民年金保険料を40年納める。65歳から老齢基礎年金という名で国民年金保険料に対応する年金を受け始める。

記事によれば、65歳まで保険料を納める仕組みにした場合の制度の検討を厚生労働省は行う、という。引き下げを圧縮できる可能性アリ、としつつも、それが「負担は増えるが年金は変わらず」なのか「負担も増やして年金も少しでも増やす」という話なのかは明らかにしていない。

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厚生労働大臣は1月14日の記者会見において、これをもって45年加入が決定したわけではないと火消しをはかったようだ。厚生労働省のHPにやりとりが残っている。

記者会見

文句をいうまえに事実を一回整理してみよう

こういうニュースが表に出るとほぼ間違いなく出るのは批判である。やれ年金破たんの証左であるとか、やれ負担はいつも若者だ、といった具合である。脊髄反射で文句を言うのもいいが、一度事実は整理していたほうがいい。

1)まず、現在の制度において、国民年金は20~60歳まで入り、65歳から死ぬまでずっと受け取る。つまり60歳から65歳に保険料を払うわけでも年金をもらうわけでもない、5年間のブランク期間がある。現在、未納者が追納する期間に用いられている。

2)国民年金に40年入ると、年額778,500円が死ぬまでずっともらえる(受け取る際には老齢基礎年金と名前が変わる)。平均余命を勘案すれば、約1600万円は期待できる大きな財産だが、年額にするとあまりにも少ない金額である。

3)老齢基礎年金については引き下げが行われている。過去のデフレ時に未引き下げだった分の2.5%相当を昨年秋から来年春までかけて減らす。その後もマクロ経済スライドが発動し、2038年度まで小幅引き下げを続ける予定(終了はおそらく2040年以降にずれ込む)。所得代替率でいえば15%相当の引き下げを行う。

4)会社員は厚生年金に入っているが、厚生年金保険料の一部が老齢基礎年金の財源となっており、国民年金制度もセットで加入している仕組みとなっている。厚生年金は会社員になれば20歳より若くても入り(高卒入社など)、60歳以降も保険料を引かれる。ところが、20歳前、60歳以降の会社員の年金保険料は、老齢基礎年金の計算に反映されない

「65歳まで加入」を検討するのは当たり前。検討しないほうがバカである

さて、冒頭に紹介した記事についてどう考えるか。国民年金制度は45年加入とすべきか。まず、いえることは、「国がいろんな可能性を検討しないほうが愚かな話であり、検討することを批判するには当たらない」ということだ。はっきりいって、検討するのは当たり前。法律改正をするかどうかはともかくとして検討しないほうが好ましくない

理屈として考えても、60歳から65歳まで、保険料を払わないけど年金ももらえない5年が空いているのはいかいももったいないし、厚生年金保険料を納める会社員が不公平である。特に60歳以降も働く会社員についてはその間の保険料は払いすぎになっているわけで、バカらしさが生じることはよくない。

いずれにせよ、検討をすることを批判するのではなく、シミュレーション結果と改正案を見て批判すべきだ(公的年金の受給開始年齢引き上げも批判が多いが、68歳開始や70歳開始のシミュレーションを見て当否を判断すべきだ)。

さて、試算をもし行うなら、チェックポイントは「65歳まで払わされる保険料の取り扱い」となる。

もう一度現状を整理すると、こうだ。(1)現在、20歳から60歳まで40年加入すると満額の基礎年金になり、保険料を納付した月数が少ないとその分年金額が少なくなる。(2)さかのぼっての納付には制限があるため、きっちり満額をもらえない人も多い。(3)しかも現在の水準は、15%引き下げられる予定があるが、実施計画が遅延したため、すでに年金をもらっている人の減額は遅れ、現役世代にしわ寄せをしている状態にある。

もし、45年加入することになったら、現在の老齢基礎年金について計算式を45/40、つまり12.5%年金額がアップさせれば、これはベストだ。長く払った分ちゃんと年金が増えることになり、若い世代の不公平ではなくなる。別の改正で減らされた分を補うことができるし、満額もらえなかったため金額が少ない人にも朗報だ。

5年長く納めても、年金額にはなんら影響せず、現状の引き下げ計画も継続、となればこれは好ましくない。しかし、現行の年金制度は収支を調整する考え方にたつので、保険料が増えれば給付減はストップする理屈だ。少なくともマクロ経済スライドの縮小や停止になれば、「実質増」といえる。

国民年金45年加入は「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」の問題である

ずばっと言ってしまえば、国民年金の加入期間を45年とすることは、「やるかやらないか」の議論を行う段階にはない。「いつやるか」「どうやるか」の問題である。

5年も長く保険料を納めなければならないのは一見すると負担増だが、「どうやるか」の部分をしっかり議論して、その負担増が何らしかの給付増(少なくとも今の給付減を打ち消す)になることをしっかり見極めたい。そのうえで、早めに45年加入の道筋をつけたほうがいい。

やらないまままた5年時間がたつことは要するに「先送り」だ。先送りが若い世代にとってロクなものにならないことはもう誰でも分かっているはずだ。