オリンピックにテレビ番組の『SASUKE』が採用されるかも知れない。

6月28日にトルコで行われたテスト大会では、TBSが提供した『SASUKE』のセットも使われた。

名物の「うんてい」や反り返った壁の「そり立つ壁」などで、19か国から80人の選手が挑んだ。『SASUKE』は本家日本での放送以外に、欧米など25か国で現地版が展開している。世界160の国と地域で視聴できるようになっている。

テスト大会には海外版『SASUKE』の経験者も出場した。

国際近代五種連合(UIPM)のショーマン会長は、「SASUKEは五輪スポーツとして見せられる。国際オリンピック委員会はSASUKEを採用するはずだ」とコメントした。

日本のテレビ番組がオリンピック種目になる可能性が高まる。

では『SASUKE』は何故かくも支持されるのか。去年暮れに放送された『SASUKE2021』から分析してみよう。

視聴者の集中力は持続せず

39回目の『SASUKE』は、12月28日の夕方6時から放送された。

ほぼ5時間の平均個人視聴率は6.5%で、横並びトップだった。視聴率も8時頃までうなぎ上りに上昇し、最後まで高い値を保ち続けた。

ただしスイッチメディアの注視率では、異なる側面が浮かび上がる。

注視率とはテレビの前にいる人が、どのくらい画面を見ているかを測定した数値。これによると番組序盤の6時台は7~8割の視聴者を釘付けにしていた。

ところが率は次第に下がり、夜9時台後半から10時台は裏番組全体の平均注視率より下回るあり様だった。

つまり後半は“ながら視聴”で、だらだらテレビがついていた感じだ。

5時間といえば、NHK『紅白歌合戦』より長い。さすがに関心は続かず、挑戦者が障害物から落下したり、記録を塗り替える瞬間だけ注目し、他の時間はスマホを見るなりしていたようだ。

世代による落差

ただし世代によって、5時間の視聴実態は大きく異なった。

まず番組前半は、65歳以上が最も多かった。

ところが高齢者は早く寝てしまう人も多い。8時台後半から急落し、9時台では最下位グループとなってしまった。

最も若いC層(男女4~12歳)の動きも特徴的だ。

夕方6時台はまだ帰宅していない子供が多いのか、視聴率はT層(13~19歳)同様に低い。ところが夕食時の7時台に急伸し、8時台にはトップに躍り出た。

しかし早く床に就く幼児も含むためか、9時台以降に急落し10時台では最下位となった。

T層もC層と似た動きをした。

夜9~10時台に下がったのは、自室で別のことをやり始めた人がいたからだろう。番組が盛り上がった10時前後だけは、テレビの前に来ていたようだ。

C層とT層と一緒に見ていたのが、2層(35~49歳)と3層(50~64歳)の親世代。

しかも子供が見るのをやめても続けて見ていたようで、9~10時台ではトップグループとなっていた。

裏番組との比較

では、同じ夜の裏番組と比べるとどうだっただろうか。

放送時間がほぼ重なり、視聴率も同じだった日本テレビ『年忘れ特大さんま御殿お久しぶり有名人集結超豪華な今年の顔SP』との差が最も興味深い

『さんま御殿SP』は、若者に人気のバラエティと思いきや、実態は違っていた。

C層から1層までにはあまり見られず、逆に3~4層(50歳以上)が極端に多い。日テレはコア戦略を掲げ13~49歳をターゲットにしているが、7月1日で65歳と高齢者の仲間入りをしたさんまは、いつの間にか中高年向けタレントになっていたようだ。

テレビ朝日『報道ステーション』も同様だ。

C~1層にはほとんど見られず、視聴者は3~4層に偏っている。同局は7時から『家事ヤロウ!!!女優が大集結!年末3時間SP』も放送した。これはF1(女性20~34歳)にこそ一定程度見られたが、C~T層にはさっぱりだった。

同局は『報ステ』を中心に、ドラマもバラエティも中高年という傾向が拭えない。

若年層では、フジ『超逆境クイズバトル!!99人の壁ディズニーSP』が気を吐いた。

C層から2層までの大半で、『さんま御殿SP』や『家事ヤロウSP』を上回った。ただし『SASUKE』は、各段に上を行った。各層で大差をつけ、小学生や大学生で倍以上、特に女子高生では3倍に差が開いた。

各局は今、コア層(13~49歳)に見てもらうべく注力している。

そんな中、『SASUKE』は大きな成果を上げている。特にTBSは新ファミリーコア(4~49歳)を掲げているが、この層で裏番組を大きく引き離していたのである。

オリンピック種目との親和性

競技としては、『SASUKE』は誰でも挑戦できる。

同時に見る側も、幅広い年齢層に楽しまれる。UIPMのショーマン会長は、トルコでのテスト大会の後、「スポーツは楽しいものでなければならない」と語った。その意味でも『SASUKE』は、参加する側にも見る側にも民主的で、スポーツの祭典に相応しいと言えよう。

ただしテレビ番組となった場合、録画再生では特徴的な見られ方をする。

『SASUKE2021』のインテージデータを見ると、ふつうに再生されることは少なく、音が出ない「早送り」「スキップ」が過半を占めていた。つまり気になる部分だけを“つまみ食い視聴”されていたのである。

今や映画やドラマも、倍速視聴されることがある。

特に若者や忙しい人は、スポーツ中継でも“追っかけ再生”かつ“つまみ食い視聴”をする人が増えている。かく言う筆者も、サッカー日本代表戦だろうとオリンピックだろうと、全録を駆使して競技時間の半分ほどの時間で効率的に消費している。

その意味では、『SASUKE』が五輪種目となれば、話題になっている本命選手と関心のある自国選手だけを効率的に見たいという若年層を新たに獲得できるだろう、大会の盛上げに一役買うことは間違いない。

いずれにしてもテレビのバラエティが幅広い年齢層と多様な国民に支持され、国際大会の正式種目に昇格するかも知れない。

アイデアが良ければ国際的にも評価される時代の到来、テレビにはやれることがまだまだ残っているようだ。