13勝2敗で優勝した関脇・御嶽海。

去年の秋場所から3場所で33勝となり、大関昇進も果たした。さらに交際5年を経た1歳年上の女性との結婚も発表し、一挙に注目される関取になった。

この初場所のテレビ中継を分析すると、御嶽海がスターダムにのし上がる軌跡がよくわかる。そして母・マルガリータさんも大きく貢献したことも特筆すべきだろう。

人々が何に注目し、どう共感を集めたのかを振り返る。

注目度で横綱を逆転!

まず初場所15日間の取組を、スイッチメディアが調べる注視率データで振り返ってみよう。

当初は、新横綱からの3場所連続優勝という103年ぶりの大記録がかかる横綱・照ノ富士が最も注目されていた。

初日に叩き込みで大栄翔を破った22秒は、注視率50.6%でこの日の注視率最高となった。

かやた御嶽海が宇良を5秒で一気に押し出した戦いは44.4%。大関昇進がかかる場所だけに低い数字ではないものの、横綱には届かなかった。

序盤は概ね横綱に軍配が上がった。

三日目の霧馬山戦や四日目の宇良戦など、若隆景や明生を下し連勝した御嶽海を照ノ富士は上回っていた。

ところが中盤は互角となる。

互いに対戦相手により注視率が大きく上下するものの、例えば諸手突きで体勢を崩された五日目の霧馬山戦、御嶽海は落ち着いて押し出した。注視率は40.4%とかなり高くなった。

中日での勝ち越しを決めた大栄翔戦も、強烈な突っ張りに屈しなかった御嶽海が押し出しで勝った。注視率も12秒間で急上昇し、平均41.3%と好記録だった。

照ノ富士も負けてない。

玉鷲が立ち合いで照ノ富士の体を起こさせ、直後に突き落としで下した六日目。横綱は堪らずに手を突いたが、予想外の展開に注視率は42.9%となった。

この敗戦の後は順調に勝ち続け、九日目に北勝富士を下手投げで下した一戦も、注視率36.5%と御嶽海をリードした。

ただし照ノ富士の取組は、徐々に数字が下がっていった。

対する御嶽海は、十日目以降で照ノ富士を上回ると共に、注視度をどんどん上げていく。北勝富士や阿炎に土をつけられるものの、力強く迫力のある取り組みが続き、視聴者は熱い視線を送るようになっていた。

それを象徴するのが十四日目に単独首位に躍り出た宝富士戦。

立ち合い直後から差し手争いをしつつ相手を一気に土俵際まで押し込み、最後は後ろ向きにさせて送り出した。この間わずか7秒。御嶽海の気迫と勝利への執念を感じさせる一番で、注視率も50%を突破した。

千秋楽のダークホース

かくして12勝2敗の御嶽海と11勝3敗の照ノ富士が千秋楽で激突した。

ただし両者の勢いを反映するように、御嶽海が両差しで寄り切り、8秒で優勝を決めた。注視率は53.9%と15日間で最も高くなった。

ただし大相撲の面白いのは、注視率の最高値が勝負の直後に来る点。

敗れた側と圧倒した側の表情を捉えたカットが、注視率60%超となったのである。視聴者は勝者敗者の胸の内を凝視しようとしているかのようだ。

さらに注視率の動向で興味深いのはVTRの再生中。

異なるアングルのスローVTR2本が放送されたが、既に勝敗は分かっていても人々は熱い視線を送っている。そしてここでも、勝負が決まった直後にピークが来る。

因みにここまでは、いつもの千秋楽と大差はない。

ところが今回は、もう1人想定外の存在がいた。御嶽海の母親のマルガリータさんだ。大一番のVTRには、ラストに大喜びする母の姿が映し出された。

これを見た解説の北の富士が、「おっ、お母さん。マルガリータ」とつぶやいた。

実況の大坂アナも、「よくご存知ですねえ。北の富士さんまでご存知だとは思いませんでした」と応えた。この瞬間に注視率は52.6%に跳ね上がった。何と優勝を決める照ノ富士と御嶽海の戦いの再生映像より上を行ったのである。

「ファンですから」という北の富士の一言で、ご本人がトレンド入りしたほどである。

優勝インタビューの注目ポイント

優勝を決めた後の、御嶽海の表彰式でも状況は似ていた。

賜杯や総理大臣賞の授与の際、息子の雄姿をケータイで誰かに電話中継する母のひたむきな姿が抜かれたが、この瞬間が41.9%と表彰式の映像より高くなった。

さらに優勝インタビューが興味深い。

御嶽海による優勝の感想で、残念ながら注視率は急落してしまった。過去の優勝インタビューにもある、いつもの内容と大差ないからだろう。

ところがここでも異変が起こる。

インタビュアーが「家族も見ている中で優勝」と水を向けた。チラッと母の方を見た御嶽海は、「ありがとうございます」とはにかみながら答えた。

その直後にマルガリータさんが映されると、またしても注視率は跳ね上がった。

もう1つ、「臨時理事会の招集が決まりました」と入って来たばかりの情報を紹介すると、御嶽海はしばらく答えられず涙目になってしまった。そして「なかなか経験できることじゃないんで、素直にうれしいです」と答えた瞬間が注視率48.1%のピークとなった。

その前後でマルガリータさんのアップが盛上げていたことも付記しておきたい。視聴者は感情が動く瞬間に注目しているのである。

優勝インタビューの〆は、次の一言だった。

「来場所はたいへんな注目を集めて臨む場所になると思います」と問われた答えだ。

「皆さん、注目して見てください」ときっぱり答える御嶽海。

そして映像は関取のアップからマルガリータさん、そして再び御嶽海と切り返され、高い注視率を保った。

横綱の照ノ富士を、勝負でも注視率でも場所中にじわじわ追い詰めた御嶽海。

そして千秋楽で一挙に突き放した。

ただし優勝・大関・結婚は、一つの通過点に過ぎない。

今場所以上に注目が集まる来場所以降、御嶽海がどんな活躍をみせるのかに期待したい。