2022年冬クールのGP帯連続ドラマが出揃った。

この中でホームドラマとして異色の対決となったのが、松本潤主役『となりのチカラ』と小学生の毎田暖乃が鍵を握る『妻、小学生になる。』だ。

まだ始まったばかりなので全体の評価は早すぎる。ただし初回の視聴率や各種視聴データをみると、両ドラマは不思議な見られ方をしている。

果敢に攻めた両ドラマの初回視聴データから、今後を占いたい。

視聴率は松潤の圧勝!

ビデオリサーチの視聴率では松潤ドラマが圧勝だ。

世帯視聴率は11.5%対7.7%。個人視聴率でも6.4%対4.2%。いずれも1.5倍ほど松潤が上を行く(関東地区データ)。

インテージが調べるネット接続テレビでの接触率でも同様だ。

『妻、小学生になる。』は5%前後で微増傾向だった。ところが『となりのチカラ』は開始早々6%を超え、堅調に右肩上がりを続け、さらに50分台で急伸し10%にまで達する。視聴者がどんどん増える理想的な波形に見える。 

テレビ朝日で初主演となる松本潤。

ちょっぴり中途半端なところはあるが、思いやりと人間愛に溢れた役を演じる。孤独に生きる現代人の心を救う新時代のヒーローを担う役回りだ。

その名も『となりのチカラ』。社会派ホームコメディとして、順調なスタートを切ったようだ。

一方の『妻、小学生になる。』は、不思議な家族の物語だ。

主演の堤真一は、妻を亡くしてから10年間、失意とともに生きてきた。ところが小学生になった妻(毎田暖乃)と再会し、あり得ない現実を受け入れて徐々に再生していく展開らしい。

視聴者層の違い

ホームドラマという同じジャンルだが、視聴者層はかなり違う。

社会派ドラマと銘打っているものの、『となりのチカラ』を見る人が社会や地域の問題に特に関心が高いというわけではない。

政治への関心層では、むしろ『妻、小学生になる。』が大きくリードする。

顕著な違いは主に年齢層にある。

男女50歳以上、特に65歳以上が松潤ドラマの視聴者層となっている。もともとテレ朝のGP帯(夜7~11時)ドラマは、『相棒』『科捜研の女』『ドクターX』など、中高年の支持が圧倒的に高かった。

トップアイドルが主役をやっても、やはり高年齢層が見るという傾向は変わらないようだ。

一方『妻、小学生になる。』は、若年層に強い。

CT層(男女4~19歳)で高く、特に未就学児では『となりのチカラ』の5倍、小学生では2倍の個人視聴率となった。

子供の視聴者が多いため、親世代の視聴率も高くなっている。

30~50代でよく見られているが、子供と一緒に見た家庭が多かったようだ。『鬼滅の刃』竈門炭治郎 立志編が、一昨年の夜11時台から去年9月に7時台の放送となった際、小中高生の視聴率が急伸し、併せて親世代が伸びた現象に似ている。

今や家族一緒にテレビを見ることが減ったと言われている。

ところが子供にスポットが当たると、30~50代の親世代が随伴視聴するようになり、個人視聴率が膨らむ傾向があるようだ。

注視率の違い

では各ドラマは、どの程度視聴者を惹きつけたのか。

スイッチメディアは注視率で、ドラマの魅力を表現しようとしている。視聴者の顔が画面に向かっているのか、他所を見てしまい番組への関心を失っているのかを測定している。

このデータによると、番組の序盤は『妻、小学生になる。』が圧倒した。

毎田暖乃が「石田ゆり子にしか見えない」「演技が凄い」など絶賛の声が寄せられているが、多くの視聴者が見入っていた。

一方『となりのチカラ』は中盤まで今一つだ。

松潤の“新たな一面”が新鮮と映った視聴者がいて、注視率を押し上げる力となった。ところが「退屈」「テンポが悪い」「ドラマならではのおもしろい展開もなさそう」など、大人しい演出に否定的な人も少なくなかった。

ところが後半で様子が変わる。

「エグい展開」「意外に深い」など、虐待問題に入り込むあたりで評価する人も出ていた。ただしインテージが調べる流出率データで見ると、途中で見るのをやめた人がかなりいたのも事実だ。

明らかに序盤から『妻、小学生になる。』より脱落者が多い。

途中の極端に高い数値はCMタイムで、多くの人がザッピングしている結果だ。問題は本編を放送している最中でも比較的高いのに加え、物語が佳境に入る終盤で一段と高くなってしまう点だ。

『妻、小学生になる。』では、小学生の妻を否定していた主人公と娘(蒔田彩珠)が受け入れるようになる終盤、流出率はどんどん下がって行った。明らかに展開に引き込まれている人が大半となっていた。

ところが『となりのチカラ』では、虐待されている隣の娘と気持ちが通じるようになるクライマックスに向けて、注視率こそ上がったが流出率も高くなってしまった。

どうやら今のところ、松潤ドラマの評価は毀誉褒貶が激しい。

今後の可能性

ドラマはフィクションだ。

現実にはあり得ないことでも、虚構の中でリアリティを持たせ、視聴者の心を動かす表現活動だ。妻が小学生に生まれ変わることは現実にはない。その逸脱から始まりながら、『妻、小学生になる。』は一定の視聴者の心を強くつかんだ。

ただし家族の再生と、周囲との関係、さらには現実にはあり得ない“小学生の妻”にどんな結末をつけるのか。気になる部分も多いだけに、多くの視聴者に注目される可能性がある。

結末での伏線の回収は難しそうだが、名作の可能性も残す。

一方『となりのチカラ』は、“マンションあるある”で身近な物語だ。

ただし社会派を謳ったが、視聴者には「イライラ」「退屈」を感じて脱落する人も一定数いる。初回の高い視聴率は、中高年がテレ朝ドラマを視聴する習慣を持つからのようだ。

しかも途中の脱落者が多いのに、視聴率が右肩上がりとなるのは、やはり中高年が直後に控える『報道ステーション』を見るためでもあるようだ。

こうしたアドバンテージを活かして、次第に内容に引きずり込み、良いドラマと思ってもらえるか、かなり攻めた手法をとっていると言えそうだ。

心が動くが伏線の回収が難しい『妻、小学生になる。』。

見続けると面白さにハマるが、途中脱落者の多い『となりのチカラ』。

両ドラマとも大きな賭けに打って出たように見えるが、どんな結果になるのか大いに注目したい。