10勝2敗が3人ならび、大相撲初場所は大混戦となった。

初日から絶好調だった御嶽海。

2度目の優勝と「大関」が見え始めていたが、12日目の阿武咲戦でばったり倒れて2敗目を喫した。

いっぽう阿炎は7~8日目に早くも連敗を喫した。

ところがその後は吹っ切れたように星を伸ばし、昨日は隆の勝に圧力勝ちして2敗を守った。

勢いが違う。

対する横綱・照ノ富士。

新横綱からの3場所連続優勝という103年ぶりの大記録がかかる今場所だが、負ければ負け越しの明生の肩透かしにあっさり屈してしまった。

さすがの照ノ富士も少し硬くなっていた。

しかも心配なのは負け方。

土俵下に転落した横綱は、ひざを気にしていた。古傷の悪化が心配だ。大記録に黄信号が灯ったか。

ただし照ノ富士を見つめる視聴者の視線は熱い。

特に逆境に陥った時こそ、相撲ファンの注視は高まる。

前半戦のデータで、“逆境に打ち克つ横綱”のイメージを裏付けてみた。

照ノ富士への注視率

テレビの放送では、視聴者がどの程度画面を食い入るように見ているかを測定できる。

スイッチメディアが関東地区で測定している注視率だ。

これによると初日の小結・大栄翔戦は、激しい突きに苦戦したが、最後は辛うじてはたき込みで下した。この取り組みの最高注視率は59.1%。視聴者の6割が横綱の大苦戦ぶりを食い入るように見ていた。

全取組の中で、断トツのトップだった。

二日目の前頭筆頭・若隆景戦は、やや攻め込まれたものの小手投げでかわした。

約10秒の取組の最高注視率は40.7%。あまり苦労しなかったためか、初日より2割ほど低かった。

三日目の前頭筆頭・霧馬山戦は4秒ほどの圧勝。

それでも上手投げが華麗に決まった瞬間は46.4%に達した。

圧巻は四日目の前頭二枚目の宇良。

粘り強い宇良の攻めに、23秒あたりで土俵際まで追い詰められ大きくのけ反る大ピンチ。ここまで40%台が続いてきた注視率は、あわやという瞬間に50%を突破した。

しかも危機をしのいだ直後に、左手一本で強烈な突きを繰り出し、宇良を吹っ飛ばした。

「やっぱり強い」の一言に尽きる勝ち方だった。

ところが最も興味深いのは、初黒星となった六日目。

前頭三枚目の玉鷲に、わずか6秒で突き落としに敗れた。この瞬間の注視率は42%ほどと跳び抜けて高くはなかった。おそらく早すぎる勝負に、視聴者は付いていけなかったと思われる。

ところがその直後、照ノ富士の得も言われぬる表情のアップで注視率は5%アップする。さらに勝ち名乗りを受けた玉鷲のやや茶目っ気のある表情が大写しになった瞬間、注視率は52.4%とこの日の最高に達した。

やはり視聴者は、勝負そのものもさることながら、人間ドラマをより楽しんでいるようだ。

千秋楽への期待

今場所の照ノ富士の取組は、彼の相撲人生を象徴する。

そもそもは幕下昇進まで全ての段を1場所で通過するなど順調な出世だった。新十両でも一場所目で優勝を決めた。

関脇になるのも、初土俵以来所要23場所で1958年以降の初土俵力士の中では9位のスピード昇進だった。

そして新関脇で13勝をあげるが、こちらは史上最多タイ記録。さらに翌場所で12勝3敗と初の幕内最高優勝(平成生まれ初の優勝)を果たし、三役2場所での大関昇進は年6場所制になった1958年以降で初の快挙となった。

ところが、その後が大変だった。

怪我や病気による負け越しや休場が続いて西序二段48枚目まで陥落した。膝の手術も三度受けた。2019年の正月には相撲をやめることを決意したほどである。

ところが地獄から復活した。

大関復帰を果たし、横綱昇進もするという史上初の力士になった。そして新横綱として二場所連続で優勝し、今場所も勝てば1919年5月場所の栃木山以来103年ぶりとなる大記録となる。

こうした照ノ富士の浮き沈みとそこからの復活を視聴者はよく理解している。

今場所ここまでの十勝二敗も、良い時と悪い時がはっきりしており、しかも十二日目の阿武咲戦では膝の爆弾が心配となる大ピンチに陥った。

その大きな波に視聴者はますます惹かれ、注視率を高めている。

残り三日。土俵際での粘りからの大逆転で、どこまで注視率が高まるか期待したい。