毎年11月に日本テレビが放送する『ベストアーティスト2021』。

生でじっくり楽曲を堪能できるため、ファン注目の番組となっている。特に20周年記念となった今回は、勢いのあるアーティストが揃い、記念の特別企画も含め大いに盛り上がった。

ちなみに音楽番組では、関心のない曲でチャンネルを替えたりテレビを消したりする視聴者は少なくない。

そこまでしなくとも、手元のスマホに集中してテレビは流しておくだけという人もザラにいる。

では音楽の大型特番では、どんな出演者がよく見られるのだろうか。

インターネットで好きな音楽を存分に楽しめる現代、テレビで映えるアーティストは誰なのかを視聴データで探ってみた。

音楽番組の宿命

総合司会・櫻井翔のオープニングパフォーマンスで始まった同番組。

ジャニーズ・AKB48と坂道シリーズなど、男性や女性の人気グループを中心に37組のアーティストがパフォーマンスを競った。

ここでテレビ的に注目されるアーティストは誰か、数字で見える化するために2つの視聴データを使った。

1つは関東地区で約107万台のネット接続テレビで視聴状況を調べるインテージの流出率。番組の途中でチャンネルを替えたりテレビを消したりする人の比率を示す。その出演者の部分で完全に視聴意欲を失った度合いを示すデータと言えよう。

2つ目は関東900人を対象にスイッチメディアが調べる、画面を注視している人の割合。いわば耳も目もしっかり番組内容に引き付けられている度合いで、逆に視線が画面から離れるのは関心が薄れた証拠と言えよう。

ちなみに同番組の注視率は、上下に激しく変動するばかりか、裏番組の平均値より低くなった。

理由の1つは音楽番組の宿命で、もう1つは若年層の占める割合が大きいからだ。

そもそも注視率は、番組ジャンルによって差が生ずる。

例えば最も高いのは映画。時間と費用をかけただけあって、35%前後と多くの人がテレビ画面を注視する。次にドラマやアニメが続き、音楽番組はバラエティより低くなる。耳は動員されるが、目は疎かになり勝ちな番組なのである。

もう1つは年齢により視聴態度が異なる。

男女ともに50歳以上が最も注視度が高く、年齢が下がるにつれ画面から目が離れ勝ちとなる。特にT層(男女13~19歳)は平均で15%と50歳以上の半分ほどしかない。若者ほどスマホなどを触りながらテレビを見るダブルスクリーン派が多いためと思われる。

かくして音楽番組で、かつ10~20代の視聴率が50歳以上の倍近かった同番組は、注視率が低くなった。

また同番組の流出率も上下に大きく揺れた。歌番組は自分の好みで頻繁にザッピングする視聴者が少なくない。若者に人気のアーティストを並べていたが、それでも出演者によって関心を失う場面が少なくなかったようだ。

NiziUとNEWS

そうした傾向の中、まず傑出していたのがNiziUだ。

19世紀に生まれたピアノの練習曲「The Celebrated Chop Waltz」をサンプリング。お箸をモチーフにしたサビのダンスも特徴だった。

全パフォーマンス中の注視度平均が25%ほどの中、彼女たちのパートは38.6%もあった。他を5%以上引き離す圧倒的な注目ぶりだったのである。日韓合同プロジェクトから生まれて1年あまりという、鮮度と勢いの違いを見せつけたトップだった。

次に特筆すべきは、ドラマ『二月の勝者』の主題歌「未来へ」を歌ったNEWS。

ドラマで活躍する桜花ゼミナールの生徒も合唱で参加、総勢23名の大合唱が追い風となり好成績となった。注視度30%台前半は、BE:FIRST・桜坂46など7組いたが、流出率の平均が0.063%は全体のベスト4入り。放送中のドラマの宣伝を兼ねた日テレの演出の勝利という側面もあった。

いずれにしても注視度と流出率のバランスでは、デビューほやほやのなにわ男子、プロデューサーSKY-HIが1億円を出資したオーディションで生まれたBE:FIRSTなどの第2グループより格段上だった。

アーティストの勢いやテレビ局の演出が光った2グループだった。

ジャニーズと女性グループ

トップのNiziUとNEWS以外に、注目すべきはジャニーズと女性グループの動向だ。

ジャニーズでは、NEWSとなにわ男子こそ上位グループだったが、他8組は残念ながら元気がない。「群青ランナウェイ」を歌ったHey! Say! Jumpや「恋降る月夜に君を想う」のキンプリなどで平均点あたり。KAT-TUNやSexy Zoneは注視度で平均に及ばなかった。一方Snow Manや関ジャニ∞は、流出率でワーストグループに入ってしまった。

今回は20周年記念で、特別企画として過去の秘蔵映像も放送された。

TOKIO・V6・SMAPなどジャニーズの人気グループの他、ミスチル・福山雅治・浜崎あゆみなど大御所の懐かしい映像が披露された。

その中にあって、嵐が40%近い注視度をとり、他を大きく引き離した。

活動を休止してまもなく1年、今も絶大な人気を誇ることを証明した格好だが、逆にいえばジャニーズの中で次が育っていないことを露呈しているとも言える。一世を風靡したジャニーズに元気がないのは少し気になる。

逆にNiziU以外でも、AKB48や坂道シリーズなど女性グループは気を吐いた。

AKB48、桜坂46、日向坂46、乃木坂46はいずれも平均点以上で、注視度と流出率のバランスも悪くなかった。1.5倍速ダンス、データ放送で視聴者が衣装選び、視点移動ショットなど、演出でも視聴者を飽きさせない努力が払われ、テレビ的な成功は何に由来するのかを示した格好となった。

低迷アーティストの課題

他にも桑田佳祐、MISIA、BiSH、TOMORROW×TOGETHERの低い注視度が際立った。

LiSA、EXIT、関ジャニ∞の高い流出率も要注意だ。恐らく課題は2点。馴染みが薄いアーティストは、高流出や低注視率となりやすい。また大御所でも、露出が多いと「もう十分」と敬遠する視聴者がいるようだ。

例えば2回登場した桑田佳祐は、2回目で1曲5分を使ったが、注視率は歌い始めてまもなく低くなった。

2曲で6分半ほどを使ったMISIAも、明らかに退屈と感じた視聴者が関心を失っていた。

ここで特筆すべきは、「明け星」を歌ったLiSA。

注視度はトップグループの成績ながら、流出率が極端に高くなった点だ。『鬼滅の刃』はこの秋からアニメが大人気となり、LiSAも露出する機会が増えていた。依然として関心を持つ視聴者と、食傷気味な人とが二極化した結果だったのかも知れない。

以上のような視聴者の動向を見てくると、やはりテレビは「視聴者を飽きさせない」が基本とわかる。

NiziUのように日韓融合型の目新しいキャラクターは、今のところ新鮮だ。NEWS「未来へ」のように、演出が優れている場合も、視聴者の注視度は高い。

ただし見慣れて来た場合の関心の薄れ方は一挙に来る。

こうした移ろいやすい視聴者の気分と向き合い、如何に注目を集め続けるか。音楽番組は各コーナーの成否が視聴データで明確にわかるだけに、作り手側は腕の振るい甲斐