内閣発足から国会解散まで戦後最短となった岸田政権。

解散から10月31日の衆院選投開票までも戦後最短だ。

この解散までにマスコミ各社は10月の世論調査をそれぞれ行った。

岸田内閣初の調査だが、各社の集計結果を見比べると、支持率に大差が生じている。他の質問項目も社により大きく異なる。

同時期の同一テーマなのに何故そうなるのか。メディアによる世論調査のあり方を考えて見た。

支持が不支持の2倍程度

10月の世論調査結果を、NHKは11日の『ニュース7』で放送した。

番組冒頭の主な項目の2番目という準トップ扱いだった。「支持」49%、「不支持」24%と見出しで伝えたのに続いて、「内閣発足時の支持率としては、去年9月の菅内閣の時に比べて10ポイント余り低くなりました」とコメントした。

各社の岸田内閣支持率は、低いもので「朝日新聞」の45%から、高いもので「産経FNN」の63.2%だった。菅内閣最後の9月調査よりかなり上昇したものの、政権発足時としては、歴代内閣で低い方の数字となった。

岸田首相は「各社によってだいぶ幅がある。低い数字もしっかり受け止め、自分自身をしっかり振り返りながら、選挙に向けしっかり取り組みたい」と話した。

一見すると確かにだいぶ幅があるようだが、実態はどうなのか。

オペレーターとのボイス・トゥ・ボイスで回答するRDD法のうち、「読売NNN」「朝日新聞」「日経テレ東」「産経FNN」「NHK」の調査結果を精査して見よう。

各社の支持率を「支持・不支持」で比べると、図のようになる。

各社公表データから筆者が作成
各社公表データから筆者が作成

「支持」だけ見ると、確かに数字はバラバラだ。

最も高い「産経FNN」は、最も低い「朝日新聞」の1.4倍になる。ただし「支持」「不支持」を並べると浮かび上がる事実がある。

「支持」の高い調査は「不支持」の数字も高く、「支持」の低い調査は「不支持」も低い。おおむね「支持」が「不支持」の2倍強となっている。

では、「支持」が40%台から60%台へと1.4倍もの開きが出来るのはなぜか。

質問の仕方の違いというのが専門家の説明だ。例えば、「支持しますか、支持しませんか」と聞かれて、「わからない」と答えた場合、それらの回答者をそのまま残すか、「どちらかと言えば」と再質問して分類していくかで調査結果に差が出るそうだ。

いみじくも最も高い支持率63.2%の結果となった「産経FNN」は、世論調査の説明で「内閣支持率の回答が不明確な場合には、『どちらかといえば』と再度質問して回答を得た」と紙面で説明している。

支持率の数字自体は大きく違っても、内閣支持・不支持の各社の傾向は同じということだ。

この世界では、「政権寄りの論調の多いメディアか、政権批判の多いメディアかどうかで結果に差が出る」と聞くことがある。どうやらそれは、下種の勘繰りのようだ。

質問項目の違い

いっぽう質問項目には、各社のスタンスの違いが透けて見える。

まず自民党の幹事長に甘利明を起用したことの評価を質問しているのは、「読売NNN」と「毎日新聞」(質問方法ではなく質問項目なのでここでは対象にした)で、他の社にはない。

結果は「読売NNN」が評価する30%・評価しない48%、「毎日新聞」は評価する22%・評価しない54%だった。

これに対して「朝日新聞」は「岸田政権は、安倍政権や菅政権の路線を引き継ぐほうがよいと思うか」と聞いた。

NHKも同じ趣旨の質問をしている。

“安倍政権や菅政権の路線”とは何を指すのか、特に説明もないようなので、調査で聞かれた人は明確に理解したのだろうか。世論調査としてはイメージ性の強い曖昧な文言に見える。

安倍政権の路線と菅政権の路線は、本当に同じなのか。

9月の総裁選挙では、両者は対立する候補者を推したのではなかったか。

実はこれについて、NHKに興味深い調査がある。

1年前に菅内閣が発足した際の世論調査で、“安倍内閣継承の是非”を聞いている。「引き継ぐほうが良い」が「どちらかといえば」を合わせて53%、「引き継がないほうが良い」と「どちらかといえば」の合計が38%。ポジティブな評価が上回っていたのである。

ところが今回は真逆になった。

「安倍・菅内閣を引き継ぐべき」が「どちらかといえば」を含め34%、「引き継がないほうがよい」が「どちらかといえば」と合わせて57%とネガティブな評価が上回ったのである。

これは、質問が曖昧過ぎたためだろうか。

それともこの1年間で、安倍政権の評価を変える何かがあったのだろうか。はたまた安倍路線と菅路線は異なったものと受け止められたための違いなのか。

いずれにしても解釈が容易に出来ない、不十分な質問だった可能性がある。

「日経テレ東」は、岸田首相が掲げる「成長と分配の好循環」について聞いた。

経済力を高める成長戦略と、格差是正につながる分配政策のどちらを優先させるべきかだ。結果は「成長」47%、「分配」38%。世代別では18~39歳で、「成長」59%が「分配」31%を引き離した。

日経は同じ日の一面で「新政権に問う」という連載を始め、岸田内閣の「成長と分配の好循環」について「改革なくして好循環なし」との主張を展開している。

記事の主張とシンクロした世論調査という設計があったようだ。

総選挙直前の世論調査との付き合い方

14日衆議院解散・19日公示・31日投開票と、政治は選挙モードに入っている。

ここで内閣発足直後の支持率と、内閣の在任期間との関係を2001年の小泉内閣から見てみよう。NHKの調査の支持率(時期により調査方法が違うので単純な比較は出来ないが・・・)と在職日数(首相官邸HP)でグラフ化してみた。

NHKと首相官邸のホームページから筆者作成
NHKと首相官邸のホームページから筆者作成

これで分かるのは、支持率と在職日数に相関関係が無いこと。

小泉内閣は支持も高く長期政権だったが、鳩山政権は支持が高いのに1年未満で退陣した。三千日を超える長期政権となった第2次安倍内閣だが、第2次の発足時支持率は1年で辞任した第1次安倍内閣とほぼ同じだ。

政権が長く続くかどうかは、その後の政権運営を反映した支持率の変化、特に衆議院選挙や参議院選挙時点の内閣支持率と与党の支持率が指標となることは言うまでもない。さらに今回の総選挙では、与野党一騎打ちの選挙区も多く、与野党いずれの議席増を望むかという調査にも関心が集まろう。

マスメディアの中には、投票日に向けて、選挙の序盤、中盤、終盤での有権者の投票意識の時間的変化を探るトレンド調査も予定されており、引き続き世論調査から目が離せない。

しかし世論調査には、質問方法の差異もあるし、マスメディア側のスタンスもある。とりわけ国政選挙ともなると、無色透明と言い難いこともあるかもしれない。

視聴者であり、読者であり、同時に有権者でもある国民。

個々の世論調査の中には、首を傾げる質問や、聞き方で数字が大きく異なる場合がある。それらに惑わされずに賢く付き合うには、インターネットなどでなるべく多くの世論調査を見つけ、冷静に見比べ、よく考えてみる必要がある。

それにしても政治や調査のプロが行う世論調査だ。

各社間や自社の過去調査との齟齬や疑問が生ずるような場合は、知らん顔せずに極力説明責任を果たすべきではないだろうか。

特にNHKなど放送事業者には、「健全な民主主義の発達に資するよう」と放送法で明記されていることを忘れて欲しくない。