空気階段の優勝で幕を閉じたキングオブコント

各審査員の点数、全員の総合点、そして視聴者の反応を比較すると、実は結構な差が生じていた。

視聴者評価をパフォーマンス中にチャンネルを替え見るのをやめた人の数で出すと、ファーストステージでは空気階段だけ審査員全員がトップの点数で、視聴者の離脱率も2番目に少なく、極めて優秀だった。

ところが視聴者で最高の成績を残したニッポンの社長は、審査員の総合点が4位で、松本人志に至っては最低点だった。また視聴者で3位だったニューヨークも、審査員の総合点では最下位と極端に低い成績に終わった。

芸人たちによる渾身のコントは、5分前後と決して長くないパフォーマンスにもかかわらず、なぜプロや視聴者の評価はかくも割れるのかを考えて見た。

1stステージ序盤

まずファーストステージ序盤を概観してみよう。

蛙亭ジェラードン男性ブランコの序盤3組は、審査員全体も視聴者も徐々に成績が上がっている。「場が温まる」という言い方があるが、会場の雰囲気も徐々によくなり、見る側も笑いの“気分”に馴染んでくるということがあるのだろうか。

SNSでも登場順による影響を指摘する声が少なくない。

「他の大会でもそうなんだけど1番手が不利になるのなんとかなんないかな」

「初めの方低めに点数つけるのやめよ」

「順番で点数変わるのかわいそう」

人造人間「ホムンクルス」を出した蛙亭に対しては、面白かったがトップゆえに「基準点」にされ、好成績とならないという同情の声が多かった。

視聴者の途中での流出率でも、コントを堪能する準備が整っていない視聴者が少なくなかったせいか、10組中最下位となってしまった。

特に冒頭2分間での流出が目立つ。明らかにコントの良し悪しを判断する間もなく見るのをやめた人が一定数いたと思われる。トップバッターの不利は確かなようだ。

その意味では「転校生」のジェラードンは、冒頭の1分強はきちんと見られていた。

ところが1分半ほどから流出が増えてしまった。転校生、王子様のクラスメイト、その幼馴染の角狩り女子が登場したが、展開が途中で飽きられていた可能性がある。

逆に蛙亭は3分ぐらいから視聴者をどんどん引き込んでいた点からみると、ジェラードンよりストーリー性で上だった可能性がある。それでも場の温め論理のせいか、全体では視聴者の流出が多くなってしまった。

審査員の評価も微妙だった。

飯塚・小峠・山内の3人が蛙亭に軍配を上げたが、松本と秋山がジェラードンを支持し、しかも秋山に至っては6点も高くつけたために全体として逆転してしまった。

その点「ボトルメール」で勝負した男性ブランコは順調だった。

場が温まって来たせいか、視聴者の流出は減ってきており、展開上も安定していた。審査員も5人中4人が序盤三組では最高点をつけた。

1点気になるのは、松本人志が3組の最低点とした点だ。

視聴者の反応とも他の審査員とも異なる採点だったが、後にも似た状況が出てくる。ユニークな評価の真意を聞いて見たいものである。

前半での明暗

前半では、順番で明暗が生じたと思われるのが4番と5番だ。

4番・うるとらブギーズは、序盤3組の最高点となった男性ブランコの後に「迷子センター」をぶつけた。ところが優れモノを見た直後の、肥えた目の厳しさだろうか。視聴者も全審査員も、点数を落としている。

問題はその直後の、「バッティングセンター」を演じた5番手・ニッポンの社長

視聴者の注目度では圧倒的に優れていた。前半5組の中では終始トップクラスを守るほど、途中でやめる視聴者は少なかった。10組の中でも最高成績だった。

審査員でも山内・秋山・小峠が高く評価した。

それでも4番手から点数を上げていたが、低い評価に引っ張られたのか、3番手・男性ブランコを超えることはなかった。

さらに飯塚・松本が低く評価した。特に松本が10組の中の最低点、山内も4番手から4点も下げたために、審査員全体の成績として3番手に届かなかった。

視聴者評価とプロ審査が大きく異なったケースだが、登壇順も影響したように思える。

後半の特徴

後半の目玉は、何といっても優勝した空気階段だろう。

審査員全員が最高点数で、視聴者の流出でも2番目という好成績だ。設定のわかりやすさ、怒涛の展開、そして下半身ネタと思わせて消防士や警察官の志で抜けるという奥行の深さ。プロも素人も納得させる完璧なコントだったと言えよう。

特筆したいのは、「結婚式の打ち合わせ」で勝負した7番・ニューヨーク

結婚式の前日の打ち合わせで、段取りが全て間違っていても担当が「OKです!」と間違いを認めないコント。序盤の2分過ぎまでは、全10組の中でも最も流出率が少なく、視聴者評価でトップだった。

ところが審査員は、飯塚を除くと4人がかなり低い。

実は「彼女のパック」の6番・そいつどいつが、5番・ニッポンの社長から大きく点数を下げていた。その影響か、山内・秋山・飯塚は点数を上げていたが、やはり引っ張られたのか上げ幅は大きくなかった。その中にあり、松本が悪かった6番よりさらに5点も低い評価としたのが際立った。

松本人志は、視聴者評価トップの5番・ニッポンの社長で最低点だった。

さらに他4人の審査員が低評価だった6番・そいつどいつで、逆に6点上げた。そして視聴者評価が高かった7番・ニューヨークでも、他の審査員と異なり5点下げて来た。

松本については、最終組のマヂカルラブリーでも首を傾げる。

出し物は「こっくりさん」だったが、視聴者は2分過ぎからどっと離脱した。全10組の中でも後半に一番ダレていた。

審査員も5人中2人が最低点とし、総合点も9位と低迷した。

その中にあり松本だけは94点と断トツに高く、全10組の中でも4位としていた。これを含め視聴者の反応と大きく異なる採点が多いが、なぜそうなのか納得できる解説があると番組はもっと面白くなる気がした。

コンテスト番組の未来

お笑いのコンテスト番組は今や花盛り。

『R-1グランプリ』、『M-1グランプリ』、そしてこの『キングオブコント』などは毎回高い視聴率をとっている。

ただしその採点については、時々物議をかもす事態となっている。

拙稿『M-1上沼審査は的外れ!?~お笑いもビッグデータで評価できる時代~』でも指摘したが、とろサーモンの久保田とスーパーマラドーナの武智が、審査員の上沼恵美子を痛烈に批判した出来事も記憶に新しい。

今回も、ニューヨークの屋敷が、審査員の松本を「松本さんが“みんな笑うな”って言ったからや!」「あれは不正行為です!」と猛抗議する一幕があった。

既に説明した通り、ニューヨークの採点は視聴者で高かったが、審査員は低かった。

そこで提案だが、視聴者の反応を見える化した上で評価をするシステムを考案したら如何だろうか。

『紅白歌合戦』のような視聴者投票は支持しない。全体を通した視聴者評価は、個々の視聴者から見て納得性があるとは言えないからだ。

ただし今回紹介したインテージの流出率のようデータだとどうだろうか。

数百万台のスマートテレビ視聴ログなら、客観性はかなり高くなる。テクノロジーが進歩すれば、限りなくリアルタイムに、視聴者の反応をデータ化することも可能になる。

それを踏まえてプロがどう評価するか。

プロのパフォーマンスと素人の反応も含めて、プロ中のプロが解説するとなると、奥行きが随分と増す。しかも視聴者からすると、自分の評価と他の視聴者の評価を比べられるので興味や面白さは増すだろう。

お笑いコンテスト番組は、まだまだ進化が可能だ。

より魅了してくれる放送の未来に期待したい。