8月6日(金)はEテレにとって忘れられない1日となった。

サッカー男子3位決定戦の「日本×メキシコ」が放送され、2時間の平均世帯視聴率が13.45%と、全チャンネルの中でトップになったからだ。

ふだんのEテレの視聴率は、1日平均で0.6%前後。

それがオリンピック中継のお陰で20倍以上に急伸し、2時間に渡って横並びで首位という“あり得ない記録”を作ってしまった。

この日の人々のテレビの見方をデータで再現してみた。

特別な1日

8月6日といえば広島原爆の日。

NHK総合では午前8時から、広島市原爆死没者慰霊式ならびに平和記念式典が中継された。朝ドラ『おかえりモネ』が8時39分からの放送と、極めて変則的な編成となった。

しかしこの対応は例年のこと。

やはりこの日の特別は、57年ぶりに東京でオリンピックが開催され、注目競技が目白押しとなった点だろう。しかもサッカー女子決勝戦のスケジュール変更の影響で、森保ジャパンがメキシコと銅メダルをかけて戦う3位決定戦は、この日の18時キックオフと2時間前倒しとなった。

そこで急遽Eテレが中継対応することになり、“あり得ない記録”の誕生となったのである。

注目競技が目白押し

ちなみにこの日の夕方から夜は、注目競技が目白押しとなった。

NHK総合はニュースの他、五輪関係ではレスリングやバスケットボール女子準決勝「日本×フランス」を放送した。

ビデオリサーチの数字は10日(火)の朝までわからないので、関東地区で2000世帯5000人をサンプルに視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボの世帯視聴率を使うと、NHK総合は夕方6時台が4.2%、7時台8.1%、8時台9.8%、9時台9.9%だった。

特にバスケットボール女子で日本がフランスを破った瞬間は17.2%と好記録となった。

この日に民放でオリンピック担当となったのはテレビ朝日。

夜は男子400mリレー決勝など陸上競技を中心に放送したが、夕方は6時台が2.4%、7時台が3.5%とパッとしなかった。ただし夜10時台は21.9%と気を吐いた。特に400mリレー決勝で、1走の多田選手から2走の山縣選手にバトンがつながらず、日本がまさかの途中棄権となってしまった瞬間は、28.8%と数字が飛び上がった。

テレビ東京もスポーツクライミング女子決勝を流した。

流石に裏で人気競技がたくさんあった関係で、新種目の視聴率はさほど高くならなかった。それでも銀メダルとなった野中生萌選手や銅メダルの野口啓代選手の競技中は二桁となることもあった。

日本人の活躍で、視聴者は大忙しだったことがわかる。

夕方6時からの2時間

中でも夕方6時からの2時間は特別だった。

Eテレが2時間平均13.45%と快記録を作ったが、実は横並びトップは世帯視聴率だけではなかった。個人視聴率でも7.55%と首位。このところ民放各局が重視するコア層(13~49歳)でも7.5%とぶっちぎりの1位だった。

しかも特筆すべきは、スポーツ好き層での視聴率。

2時間平均11.95%で2位の3倍ほどに達していた。この時間帯はNHK総合を含め3チャンネルが五輪中継などを放送していたが、やはりサッカーの人気が一番のようだ。

ただし3位決定戦のため、視聴者の盛り上がりは今ひとつだった。

しかも予選リーグで一度倒したメキシコに3対1で敗れたため、多くの視聴者も落胆したようだ。そもそもキックオフの瞬間を比べると、予選は19.9%あったが3位決定戦は7.2%しかない。8時と6時、休日と平日の違いはあるが、それにしても3倍近い差は期待度の差と言わざるを得ない。

しかも前半13分と22分に点を取られてしまった。

予選では逆に6分に久保選手、11分に堂安選手が点を取っている。この違いは毎分視聴率に如実に表れた。予選では2回の得点後に数字は急伸し、開始17分で前半のピークとなった25.3%まで上昇した。

ところが3位決定戦では、2回の失点で視聴率は明らかに停滞した。やはり視聴者は日本の勝利を見たいようで、敗色濃厚となると見るのをやめてしまう人が少なくない。

特に後半13分に3点目をとられたのは決定的だった。

ここで諦めた視聴者はかなりの数に上り、視聴率も2%下落した。33分でようやく1点返し、数字も3%ほど盛り返したが、反撃は遅すぎた。

もし3位決定戦が予選のように日本が先制し、後半一定時間までリードを保っていたら、2時間の平均世帯視聴率は20%に迫っていただろう。

そうなればEテレとして、歴代屈指の記録となっていた。

史上最強の五輪代表で金メダルを期待されたチームだった。

3位決定戦にまわりモチベーションが下がっていた可能性は否めない。過密スケジュールで疲労も限界まで来ていたのだろう。

それでも前半に2点、後半で3点差までつけられると、視聴者は気持ちを保てなかったようだ。

「オリンピックは参加することに意義がある」と言われる。

ところが視聴者は自国選手やチームの勝利を期待する。Eテレとして快記録ではあったものの、五輪に対する視聴者の現実も思い知らせた8月6日だった。