東京五輪2020が始まって3日目。

開催までに紆余曲折があり、今も様々に意見が分かれるスポーツの祭典だが、始まってみると多くの人がテレビにかじりつき、アスリートの美技に酔いしれている。

例えば開会式前日のサッカー男子「日本×南アフリカ」は、世帯視聴率20.9%・個人12.4%の大記録となった。

また柔道男子60キロ級で高藤直寿選手が日本の金メダル第1号をとった瞬間は、世帯視聴率24.0%・個人15.3%と高い瞬間視聴率となった(以上はスイッチ・メディア・ラボのデータ)。

スポーツには思想信条を超えて多くの人を感動させる力がある。

そしてテレビ的には、普段あまり見ない若年層にライブ視聴をさせている魅力がある。

東京五輪2020序盤の半端ない破壊力を記録しておく。

一挙に非日常へ

まず五輪中継が始まる直前のP帯(夜7~11時)の世帯視聴率を確認しておこう。7月5日から20日までの平均値は、以下の序列となる。

1位:9.6%の日本テレビ

2位:7.1%のテレビ朝日

3位:6.38%のTBS

4位:6.36%のフジテレビ

5位:6.23%のNHK

6位:4.1%のテレビ東京

ところが五輪が始まると、中継を担当した局が一挙に躍進する。

21日はTBSがサッカー女子「日本×カナダ」を担当し、P帯平均が10.2%と首位に躍り出た。22日はNHKがサッカー男子「日本×南アフリカ」を中継し、15.5%で2位にダブルスコアの差をつけた。

23日はNHKが開会式を受け持ったため、39.4%と滅多にあり得ない数字となった(開会式自体は42.5%)。

その影響で普段は断トツ首位の日テレは、この日の実績を半減させてしまった。他にテレ朝とTBSも半減、他の局も大きく数字を落とした。

翌24日に競技は本格的に始まった。

この日のP帯には、NHK総合が柔道の女子48キロ級と男子60キロ級、Eテレがサッカー女子「日本×イタリア」やバスケットボール3×3、テレ朝が競泳予選、フジがソフトボール「日本×イタリア」などを中継した。

この結果、NHK総合のP帯はふだんより4ポイント以上も上昇して10.5%。

ふだん1%に届かないEテレも4.4%だったために、NHKは全体として約15%を占めた。倍増以上の快進撃だ。

他にも中継があったテレ朝が3ポイント以上の増加と健闘した。

これら五輪中継の影響で、NHKと民放の総視聴率はそれまでより格段に高くなっている。開会式の日の17%増は例外としても、22日は5%増、24日も4%増だ。

明らかに五輪は、テレビに非日常の賑わいをもたらせている。

若年層も注目

ここまでは世帯視聴率をみてきたが、今テレビ界は若年層にフォーカスし始めている。

テレビの視聴者は、6割ほどが50歳以上となっているが、これでは広告主のニーズと合致しない。また若年層がスマホなどインターネットの世界に走ると、何年か後にテレビは必ず衰退してしまう。

そこで登場したのが「コア視聴率」という言葉で、13~49歳が番組をどれだけ見ているかを重視し始めている。

では五輪中継をコア視聴率で分析してみよう。

オリンピックが始まる前3日のP帯におけるコア視聴率の状況は以下の通り。

1位:5.1%の日本テレビ

2位:3.9%のTBS

3位:3.03%のフジテレビ

4位:2.97%のテレビ朝日

5位:1.8%のNHK

6位:1.46%のテレビ東京

世帯と比べると、コア視聴率は大きく下がってしまう。

若者のテレビ離れが背景にある。特に世帯で6.23%あったNHKが、コア視聴率で1.8%と3分の1以下に落ちてしまうのは、受信料制度からみても深刻と言わざるを得ない。

ところがこちらも、五輪が始まると風景が一変する。

22日の全局合計は、前3日平均と比べ3.5%ほど上がって21.7%となった。17%多くのコア層が視聴した計算になる。開会式中継があった23日に至っては、76%増の32.0%だ。

中でも日頃テレビをあまり見ないT層(男女13~19歳)や1層(男女20~34歳)の変化率が大きい。

オリンピック競技が本格的に始まった24日では、両層とも1~2割視聴者が増えた。さらに開会式の日では、1層が7割増、T層に至っては倍増していた。

業界的にはテレビを見直してもらう絶好の機会になっていたのである。

賑わい再び

当稿執筆時点では、25日の競技はまだ終わっていない。

それでも水泳女子400m個人メドレーで大橋悠依選手が金メダルとなり、スケートボード男子ストリートでも堀米雄斗選手も金に輝いた。

他にも柔道の阿部兄妹など、メダル候補が続々と登場する。

さらに今後の中盤や終盤にかけては、日本人選手に限らず、世界的に注目されるアスリートが次々に画面で我々を魅了してくれることだろう。

これらを追い続けるテレビに、どれだけ多くの人々が惹きつけられるのか。

特に日頃テレビと距離をおく若年層が如何にテレビに戻って来るのか。コロナ禍かつ無観客という壮大な社会実験のような状況での東京オリンピック2020が人々の視聴行動をどこまで変えるのか、データの出方に注目したい。