東京五輪2020が始まった。

開会式はまもなくだが、それに先立ちソフトボールとサッカーの予選リーグが始まっている。

ソフトボールは21日にNHKが「日本×オーストラリア戦」、22日に日本テレビが「日本×メキシコ」を放送した。

サッカーは21日にTBSが女子「日本×カナダ」、22日にNHKが男子「日本×南アフリカ」を中継した。

今のところNHKと民放の視聴率争いは1勝1敗。

まだ始まったばかりだが、過去数回のオリンピックと比較すると今回は民放の大健闘が予見される。東京大会という事情もあるが、これまでの反省を踏まえ民放が新編成で臨んでいることも大きい。

紆余曲折を経て開会式を迎えた東京五輪2020。

巨費を投じて中継に臨むNHKと民放の、オリンピック放送の成否を占いたい。

視聴率競争序盤戦

21日にNHKが放送したソフトボール「日本×オーストラリア戦」。

東京五輪の初公式戦で日本がオーストラリアに8対1で5回コールド勝ちを収めた。関東地区で5700人の視聴率を調べるスイッチ・メディア・ラボによれば、視聴率は世帯5.1%・個人2.5%。

同時間帯で何とかトップと、まずまずの結果だった。

ところが日本テレビによる翌日の「日本×メキシコ」は、世帯10.4%・個人5.6%でNHKの倍以上となった。同時間帯では他局を大きく引き離してトップと、やはりNHKに大差をつけた。

NHKは21日が平日だったが、日テレは22日が「海の日」で休日だったことが大きい。さらに日本が延長8回に3対2でサヨナラ勝ちという大接戦だったことが決め手で、決着がつくまで視聴率は上昇を続けた。

サッカーについては、21日夜にTBSが女子「日本×カナダ」を放送した。

視聴率は世帯11.6%・個人6.8%。TBSが横並びで余裕の1位となった。

一方NHKによる22日夜の男子「日本×南アフリカ」は、世帯20.9%・個人12.4%と大記録が飛び出した。もちろん裏局すべてを大きく引き離しての首位で、TBSの2倍近い数字となった。

女子「日本×カナダ」は、前半に1点リードされたなでしこジャパンが、後半39分になんとか同点にもちこむ展開だった。

男子「日本×南アフリカ」は、序盤から主導権を握りながら前半は無得点。そして後半26分にMF久保建英が、日本の五輪代表として史上最年少ゴールを決めて1対0で勝ち点3をおさめた。

男女ともに手に汗握る試合展開だったが、やはり「史上最強」の呼び声も高い森保ジャパンの人気が大きかったようだ。

時差12時間だったリオ五輪

以上の4試合でNHKと民放は1勝1敗だった。

ところが前のリオ五輪では、民放はNHKに大きく差を付けられた。日本のメダル数は金が12・銀8・銅21・合計41と、その前のロンドン大会の38を超え、大いに盛り上がった大会だった。

ところがリオ五輪はブラジルが開催国で、時差が12時間あった。日本のゴールデン・プライムタイム帯(GP帯:夜7~11時)は現地の午前中になってしまい、多くの日本人がライブで見られる時間帯は大半の種目が予選だったのである。

それでもオリンピックの醍醐味は、やはり生中継。

朝9時56分からの競泳男子400m個人メドレー決勝が22.0%、朝6時半からのレスリング女子58kg級決勝が20.7%など、世帯視聴率20%前後の放送が早朝から午前にかけて幾つかあった。しかもその大半は、連日にわたって中継を並べたNHKが独占した格好だった。

さらにGP帯でも、両者には大差が生まれた。

中継番組はともに平均で10%ほどにとどまった。ただしハイライトやニュース番組が威力を発揮した。時差が逆に追い風となったのである。

NHKは期間中、『ニュース7』終了後に日本人が活躍した各競技のハイライトをほぼ毎日放送した。

日によって放送時間が多少異なるが、ハイライト番組は平均で13%超となった。2016年4~7月の同時間帯より、平均で2~3%数字を上げたのである。

現代人は以前と比べて忙しくなっている。

ネットやスマホが普及し、自分の欲しい情報を効率的にとる風潮も高まった。これらが相まって、膨大にあるオリンピック競技の中から、日本人が活躍したシーンを手際よく伝えるハイライト番組のニーズが高まっていたのである。

一般番組にも影響

ニュースでもその傾向は見て取れる。

NHKはニュース番組の前半あるいはそれ以上で、オリンピック情報を伝えた。さらに昼のニュースが『ニュース&オリンピック』、朝が『NHKニュースおはよう日本&オリンピック』のように、五輪を前面に押し出したタイトルで攻めた。

これら五輪主体の放送が、視聴率を押し上げていたのである。

例えば朝7時台ニュースは平均が16%を超えた。普段より3%ほど高くなった。

お昼のニュースも12%台後半と、それまでより3%ほど高かった。

夜の『ニュース7』も平均17%台半ばと、2%ほどかさ上げされた。

日本のテレビは、朝・昼・夜と3回視聴率の山がある。その全てにNHKはニュース番組を多く編成し、いずれも五輪期間中に視聴率を上げた。民放にとっては、明らかに逆風となったのである。

実際に平均9%台の日テレ『ZIP』(朝5時50分~8時)は、五輪期間に7%台に落ちた。

フジの『めざましテレビ』(朝6時10分~8時)も、平均8%台が6%台に下がってしまった。8時台のフジ『特ダネ!』も、平均が8%だったが6%台に後退した。

夜の一般番組にも影響が及んだ。

日テレの日曜夜はテッパンで、7時台『ザ!鉄腕!DASH!』は当時の平均が18%近くあった。ところが五輪期間中は、5%ほど下がってしまった。

通常17%台だった8時台の『世界の果てまでイッテQ!』も4%ほど下落した。好調なNHKとは対照的に、民放キー5局ではマイナス面が目立ってしまったのである。

実はそれまで数回のオリンピックも、全て似たような状況だった。

2012年のロンドン大会の際には、当時の豊田フジ社長が、「うちと日本テレビは五輪をやっても赤字。レギュラー番組の方が収入がある」と発言したくらいだ。

そのロンドン大会より、リオ大会の放映権料は1割ほど高騰していた。

なのに視聴率が低迷したために、日テレの大久保社長(当時)は、「これ以上(放映権料が)高くなると、五輪の放送に参加できない局が出てきても不思議でない」と認めていた。

民放にとってオリンピックの放送は、プラスよりマイナスが大きくなっていたのである。

東京オリンピックでの新編成

それでも自国開催の東京五輪2020は特別だ。

18年の平昌冬季大会と20年の今大会で、日本の放映権料は660億円と1.8倍に高騰している。その回収という意味でも、民放は特別な編成で臨んでいる。

放送は過去最大の450時間。

毎日朝9時前後(日によっては5時半)から夜23時の競技終了まで、民放5系列が日替わりで競技の生中継を中心に長時間放送を行う。リオ大会までの「どのチャンネルを見れば良いのかわからない」という視聴者の戸惑いを解消しようというのである。

さらに夜23時からは『東京五輪プレミアム』が連日放送される。

かくして総合・Eテレ・BS1を総動員して大量の放送を行うNHKに対抗して、民放はどこまで対抗できるのか。

“民放5系列が日替わり”と、まだ視聴習慣の定着という意味では不安材料が残る。

また放送時間の半分以上を五輪関連にする『ニュース7』や、民放より30分早くスタートする『デイリーハイライト』の影響も免れないだろう。

それでも視聴者のニーズと利便性に大幅に配慮した民放の新編成は、一定以上の効果を発揮するだろう。

一番楽しみなのは、参加する選手たちが見せてくれる感動の場面であることは間違いない。

加えて中継する各テレビ局の知恵と工夫、そして実績も併せて楽しみにしたい。