菅内閣の支持率が急落している。

7月13日の読売新聞オンラインは「菅内閣の支持率37%、不支持率は過去最高53%」のタイトルだった。

16日の時事ドットコムは「菅内閣支持29.3%、発足後最低 初の3割割れ」。17日の毎日新聞は「菅内閣の支持率30%、発足後最低」の見出しだった。

ところが12日のNHKだけ、「世論調査/菅内閣 支持33% 不支持46%」と数字が羅列されるだけで、キーワードの「最低」や「最高」の表記がない。

ニュースとは、新たに起こった出来事を伝える営みだ。

どんな意味があるかなどを掘り下げることで、人間性・社会性・地域性・国際性などで価値判断がされると、日本新聞協会は解説している。

ところが価値判断を示さないNHKニュースは、あえて論点をぼかそうとしているように見える。

前提には菅内閣への忖度があり、その傾向が増す一方なのではないだろうか。

ニュースタイトルに「最低」なし

NHKは7月9日(金)から3日間、全国で7月の世論調査を行った。

菅内閣を「支持する」と答えたのは、6月より4ポイント下がって33%と菅内閣発足以来「最低」となった。一方、「支持しない」は1ポイント上がって46%と発足以来「最高」となった。

この世論調査の結果は12日の『ニュース7』で放送されたが、伝え方に不可解な点があった。

アナウンサーのコメントでは「菅内閣を支持すると答えた人は、先月より4ポイント下がって33%と、去年9月の発足以降最も低くなりました」と伝えている。ところが画面のニュースタイトルは「世論調査/菅内閣 支持33% 不支持46%」と数字が羅列されるだけで、キーワードの「最低」「最高」の表記はない。

うっかり聞き漏らすと「最低」は頭に入らないし、印象にも残らない。

このタイトルは『ニュースウオッチ9』も全く同じで、NHKのメインニュースは歩調をそろえていた。

NHKニュースの世論調査は数字の羅列が定番かというとそうでもない。

7月調査の前、「最低」だった5月の世論調査の『ニュース7』(5月10日)は、タイトルで「菅首相の顔写真/支持率35% 発足後最低」と「最低」を表記していた。

今回の7月調査でも、WEBニュースは「菅内閣 『支持』33% 内閣発足以降最も低く 『不支持』は46%」とポイントを外さないタイトルとなっている。

内閣支持率の世論調査で、何がニュースかを判断するのは報道機関として1丁目1番地の仕事だ。

冒頭で紹介したように、新聞社や通信社はどこも「最低」や「最高」と数字の位置づけを行ない、わかりやすいタイトルとしている。

最も多くの視聴者が見る『ニュース7』などのメインニュースで、タイトルを数字の羅列にするのは何らかの意図があるのではと思ってしまう。

深刻な「菅内閣支持率」の低迷

なぜNHKのメインニュースは、目立たないタイトルを使ったのか。

NHKの世論調査で、菅内閣に対する「不支持」が「支持」を上回るのは5回目だが、「不支持」が「支持」を13ポイントと2桁も上回ったのは初めてだ。菅内閣にとっては大きな痛手だろう。

今回のNHK世論調査では、菅内閣にとってマイナスとなる調査結果が他にもある

〇 オリンピック東京大会を開催する意義や感染対策についての政府や組織委員会などの説明に、「あまり納得していない」と「まったく納得していない」が合計65%。

〇 政府が東京都に出した4回目の緊急事態宣言の効果は、「あまりない」と「まったくない」を合わせて56%。

NHK報道のOBは「支持率も政策の評価も厳しい中で、『支持率最低』は目立たたないようにしようというNHKの政権への忖度がいっそう進んだのではないか」と疑っている。

「ワクチン接種進捗」の評価が消えた

コロナを巡る状況を一挙に変えるのが「ワクチン」と言われてきた。

日本のワクチン接種は、欧米に比べてスタートが遅れたが、菅首相の“お声がかり”で接種が次第に拡大し、NHKニュースも各地のワクチン接種の状況を詳しく伝え続けた。

その際には「ワクチンを射って安心した」という旨のインタビューが付くことが多かった。

NHKは5月から世論調査でも「ワクチン接種進捗の評価」を質問項目に加えた。

その5月は「順調だ」9%・「遅い」82%だったが、6月は「順調だ」24%「遅い」が65%と「順調だ」が伸びてきていた。ところが7月は質問自体がなくなってしまった。

ワクチン接種については、6月末から7月にかけて変化が生じていた。

ワクチン配分の目途が立たないなどとして、職域接種の申請受付を一時停止したのである。一部の自治体でも、予約の停止などが起きていた。

「世論調査の質問項目から無くなったのは、こうした現状を踏まえて『順調だ』が減少するのを避けようとしたとみられても仕方あるまい。政権への“腰の引けかた”も中途半端ではない」と報道OBはいう。

忖度の重症化はNHKの組織ぐるみ?

これまでも本稿では、NHK世論調査の政権への忖度ぶりや菅首相の記者会見、ぶら下がり発言の異常な扱いを度々指摘してきた。

やはり変だぞNHKニュース~オリパラ・森発言・内閣支持率・・・世論調査の扱い恣意的過ぎ!?~(2月11日)

理由なき内閣支持率上昇の意味~政治もメディアも劣化の一途!?~(4月15日)

NHKニュースの露出過多で増幅 コロナ・五輪で菅発言の空疎感(6月1日)

国民はうんざり 菅首相のニュース7占拠 ~NHK忖度報道で接触率半減!~(7月10日)

今回7月の世論調査でもその傾向は続き、忖度の疑いは深まるばかりだ。

報道のOBは「これだけの異常なニュース報道の重症化は、会長以下役員が関与せず行えるはずはない」と話す。

公共放送の「自主自律」はお題目だけで、ニュース報道の実態は既に別の世界になっているのではないだろうか。そして現場は、その状況に諦めムードになってしまっているのではないだろうか。

それを象徴するチョンボが今回の世論調査にあった。

「ワクチン接種をしたいか」という質問に対して、「接種したい」32%・「接種したくない」5%・「迷っている」13%に続いて、「もう接種した」が46%と最大になった。

この世論調査が実施されたのは、7月9日からの3日間。

NHK特設サイト「新型コロナウイルス」によれば、この時点で「ワクチン 少なくとも1回接種した人」の割合は約30%だった。

世論調査の「もう接種した」46%との差は、誤差というにはあまりに大きい。

日本国内の65歳以上ワクチン接種率は、この時点で「1回目」約75%・「2回目」約50%だったので、今回の世論調査の回答者は、高齢者の割合がかなり高かったという疑いがある。

ニュースが出た途端、SNS上ではそれを疑うツイートがたくさん出た。

「これ、回答者お年寄りばっかりじゃない?」

「サンプリングは標準からずれてる。正確な調査ではないようだ」

「ってことは答えてる人は高齢者が多いってことよね。全世代で見たら内閣の支持率はもっと低いんじゃないか?と思った」

素人でも直ぐに気づく回答の矛盾だ。

世論調査を実施したNHKの担当者が気づかないはずがない。わかっていても何の説明もせずにそのまま出してしまうとは、現場で何が起こっているのだろうか。

まさか16%ほどの差は、誤差の範囲で許容されるとは考えていないだろう。

不味いと思ったが、もはや正しい報道をする気力が失せてしまっているのか。それとも上司に相談したが、「そのまま放送しろ」と言われて諦めたのか。

支持率で「最低」を明示しない姿勢と通じないか。

そのNHK世論調査では、「新型コロナ 感染の不安」で79%が不安を感じている。「政府の対応」に対しては、57%が評価しないと答えている。そして「安心安全」と強調する東京五輪の「開催意義などの説明」も、65%が納得していない。

数字を羅列するだけ。位置づけ・解説・説明をしない。さらに明らかな矛盾があっても無視する。

全ては政権への忖度が起点となっていないか。

こんな異常な報道が続けば、菅内閣の支持率が「最低」となるばかりか、公共放送NHKへの支持も地に落ちるばかりだ。