緊急事態宣言の延長が今週中にされようとしている。

6月20日までで調整が進んでいる。ただし各メディアの報道をみても、コロナ禍の現在地は明瞭ではない。

政府やメディアが示すデータは多岐にわたる。

ただし一目瞭然となるグラフでシンプルな解説を試みると、2回目の宣言の時より今回は深刻な状況で、インド型変異株の脅威が加わるなど、収束に向けての不確定要素も多い。

統計データはディテールを網羅すればするほど、情報の海で溺れる。

法則性を見つけ、シンプルに表現すれば多くの国民が納得し、覚悟が定まりやすくなる。

政府の専門家会議とは距離を置く、2人の大学教授が共同で作成したグラフで、コロナ第4波の現状がどこに位置付けられるのかを考えてみたい。

揺れる政府とメディア

今月末までとなっていた9都道府県の緊急事態宣言が、今週中に延長されようとしている。

期間は6月20日までで調整が進んでいるが、その適否については政府の専門家会議でも意見が揺れている。またメディアも大量に情報発信しているが、受け取る国民はコロナ禍の現在地がどの辺りなのか、納得している人は多くない。

原因は各専門家やメディアが、さまざまなデータに基づき多様な見解を示すからだ。

一番よく目にするのは、国内の新型コロナウイルスの陽性者の数。昨春の第1波、昨夏の第2波、年末から始まった第3波、そして今春の第4波と続いている。

波ごとに徐々に大きくなっているように見えるが、第4波はピークを過ぎ収束に向かっているようにも見える。ただし感染力も殺傷能力も高いインド株がまん延し始めており、コロナ禍の現在地はこのグラフだけでは不透明だ。

メディアでは、毎日のように都道府県別の新規感染者数を示す地図が出る。

自分に関係する地域などをつい凝視してしまうので、視聴者には関心の高い図表となっている。しかしこれでは一喜一憂するだけで、現状を把握することは出来ない。

東京都内の曜日別感染者数の推移の表もよく見かける。

毎日発表される数字が、これまでと比べてどうなのかを理解するには便利だが、やはりこれもコロナ禍の現在地を正しく認識するにはほど遠い説明だ。

他にも、医療における全体の病床使用率・重症の病床使用率・10万人あたりの療養者数・PCR検査の陽性率・10万人あたりの新規感染者数・経路不明率など、多岐にわたるデータが示されることもある。

各数値がステージⅣなのかステージⅢなのか色分けされるが、だから何なのか、わかりやすく説明されない。

要は行政発表をそのままグラフ化するだけで、我々が一番知りたい今後の見通しなどをメディアは明快に解説してくれない。

多種多様な情報を出せば出すほど、国民は情報の海に溺れ、不安を募らせるだけなのである。

シンプルな表現

各種データの中から、2人の大学教授が共同でわかりやすいグラフを作成した。

東北芸術工科大学基盤教育研究センターの古藤浩教授と大阪芸術大学放送学科の榊原廣教授だ。古藤教授が原案を作成し、榊原教授がわかりやすい表現をアドバイスしたという。

横軸が陽性者数、縦軸が死亡者数だ。

それぞれ一週間の移動平均値で示している。これによると、昨春の第1波では、陽性者数はピークが540人ほど、死亡者数は30人ほどで、波の始りから収束までは4か月強だった。

第2波の陽性者数ピークは1400人弱、死亡者数は20人弱、期間はやはり4か月だった。

そして第3波から数字が一挙に大きくなる。

陽性者数ピークは6300人強、死亡者数100人強、期間は5か月弱に延びた。12月の忘年会シーズンと年末年始の帰省が重なったことの影響だろう。緊急事態宣言が11都府県に発出されるなど、大都市だけでなくエリアが周辺に広がったことが、グラフの円を格段に大きくしたと思われる。

この第3波が十分に収束しないままに第4波が始まった。

ここで原点に近づくまでもうひと踏ん張りしておけば、第4波は異なるものになっていたのではと悔やまれる。

いずれにしても、陽性者数が2000を超えてからピークを迎えるまで、陽性者数とそこまでの期間は第3波と第4波はほぼ一致してしまった。

ただし異なるのは死亡者数。

ピーク時で30人以上第4波の方が多い。重症化を早めるイギリス型変異株のまん延が原因だろう。陽性者数のピーク後も、死亡者数は30人以上高いまま推移している。

波のサイクル

第3波までを振り返ると、コロナ禍の各波は4つの局面からなる。

感染が増加し、それを追って死亡者も増える局面(A)。

死亡者が多いことから対策がたてられ新規陽性者数は減るが、過去の陽性者の多さのために死亡者数が増え続ける局面(B)。

陽性者数・死亡者数共に減る局面(C)。

死亡者数は減るが,対策が終了するか効かなくなるなどのために新規陽性者数が増加する局面(D)。

これら4つの繰り返しによって、波は渦のようになって繰り返してきた。

ここから考えると、第4波の今後も少し展望できる。

深刻なエリアが各地に広がり、イギリス株の猛威が加わった第4波は、死亡者の数を一気に増加させた点が第3波と異なる。

その後3度にわけて宣言の対象地域を増やしているが、感染エリア拡大に対して対応が後手に回っているように見える。

そして5月末現在は局面Bの途上で、死亡者のピークは6月に入ってからとなる可能性が高い。しかも今回はインド株が感染まん延を始めており、ピークがどこに来るか予測が難しくなっている。

6月20日までに収束するのか?

そして宣言が6月20日まで延長されようとしている。

現実問題として、そこまでに収束できるのだろうか。政府は7月下旬の東京五輪開催までに何とか間に合わせたいと考えているだろう。しかし第3波のサイクルと変異株が猛威を振るう今回を比べると、政府の思惑通りに行くのはかなり難しいことがわかる。

第3波の時は、局面Bが始まって局面Dが終わるまでに2か月半ほどを要した。

そのスピード感を第4波にあてはめると、局面Cに入るのが6月で、局面Dが7月に入ってからとなる。収束はぎりぎり五輪開会式に間に合うか否かだ。

ただし今回は、要因が少し異なる。

変異株の脅威と地域的な広がりというマイナス要因が加わっている。これらがどこまで悪影響を及ぼすかだ。

加えて宣言は延長されるものの、大型商業施設など休業要請が一部緩和される流れとなっており、宣言の効力が流動的にもなってきている。

プラス要因としては、ワクチン接種が始まっていること。

ところが高齢者の接種終了が7月までと言われている。これが感染まん延にどこまでブレーキをかけるのかは見通せない。

宣言延長のニュースの中で、新橋の居酒屋経営者のインタビューが出ていた。

4回目の自粛や休業を経て、さらに延長が避けられない事態を前に、「ここまで協力してきたのにこれなのか、違うやり方があったのではと不信感が出る」との発言だった。

もしコロナ禍の状況と今後の見通しがあれば、確かに経営者としても別の対応・選択があり得ただろう。

希望的観測が先行したのか、政府の対応は後手となり勝ちだった。メディアの報道も、政府発表と人々の反応を紹介するのが主で、全体状況の俯瞰に基づく今後の解説などはほとんどなかった。

今回2人の教授が作成したグラフのような、わかりやすい説明が非常事態では必須だったと悔やまれてならない。