新垣結衣(32)と星野源の結婚が19日に発表された。

報道解禁直後から、各局は夕方ワイドの中で速報や特集コーナーを放送した。さらに夜のニュース番組でも、分厚く報道した局もあった。

ビッグニュースを同じようなタイミングで各局は報道したが、視聴データを分析すると局間で明暗が分かれたことが分かる。

その差は何だったのかを考えてみた。

夕方ニュース戦争

平日の夕方4~6時台は、各局が帯ニュースで競っている。

熾烈な視聴率競争が展開されているが、二人の結婚発表は大相撲五月場所の十一日目の中継と重なった。個人視聴率はいつも以上よりNHKにもっていかれ、狭き門に民放4局の夕方ワイドが殺到した格好となってしまった(ビデオリサーチ関東地区データから)。

19日(水)を前4週の視聴率と比較してみよう。

5月5日はGW中で特殊な視聴率となっていたので、それ以外の前4回の水曜日平均と比べた。NHKの相撲中継にやられていたので、各局の数字は低調だった。

それでも午後4時台は、TBS『Nスタ』が最も数字を押し上げた。

さすがに『逃げるは恥だが役に立つ』のドラマを制作し、二人の2ショット映像や、演技とはいえ決定的なシーンをふんだんに使える局は強い。

ところが5~6時台は失速した。

代わりに気を吐いたのは、日本テレビの『news every.』。大相撲終了後の6時台に前4週より0.6%数字を押し上げた。4局の中で最高値だ。

日頃から同時間帯トップを行くだけあって、ドラマ映像がないという劣勢を見せ方で克服したようだ。

ちなみにテレビ朝日の4時台が高いのは、『ドクターX』再放送のため。

4時40分にスタートした『スーパーJチャンネル』には、ほとんど良いところがなかった。またフジテレビ『Live Newsイット』も、4時台に0.2%上げているので頑張ったように見えるが、実態は前4週が1.1%とTBSの半分以下、日テレとでは3分の1という体たらくが当日を際立たせたに過ぎない。

毎分視聴率から見えること

毎分の視聴率からは、どの局の伝え方が頑張ったのかが見えてくる。

東芝視聴データ「TimeOn Analytics」によれば、第一報はそれなりに意味を持った。各局1~2分の短いものだったが、テレ朝を除き各局が数字を押し上げている。

ちなみにテレ朝は、直前のドラマ再放送後に流出が激しく起こっていた。

4局中最後となったニュース冒頭の第一報だが、その流出を食い止めることが出来なかった。しかも同局の伝え方は、写真と文字が中心で、二人の2ショット動画がない。これが致命的だったと言えよう。

逆に際立ったのはTBS『Nスタ』。

報道発表50分ほどで9分近い特集コーナーを用意したが、二人が出演するドラマの映像がたっぷり使える強みを見せつけた。

このコーナーで1%近く数字を急伸させたのである。

かたや日テレ『news every.』には、TBSほど映像がない。

それでも速報で藤井貴彦キャスターは、「皆さん、落ち着いてください」と言いつつ本人が一番高揚し、「興奮して大変申し訳ありませんでいた」と頭を下げて見せた。

ふだん冷静な藤井アナの人間性もあり、6時台に用意した10分以上のコーナーで、TBSに次いで急伸したのである。

夜のニュースの明暗

では夜のニュースはどうだっただろうか。

まずEPGなどで二人の結婚を告知したのは2番組のみ。日テレ『news zero』が「“逃げ恥”星野源さん・新垣結衣さん結婚へ」などと掲示した。また『NEWS23』も、「速報)新垣結衣さん星野源さん結婚“逃げ恥”あの名シーンをもう一度」と、ドラマ制作局の強みを最大限アピールした。

個人視聴率の結果は、その『NEWS23』が前4週の2.5%を2.8%と0.3ポイント上げた。

上昇率は12ポイントとかなり成功したように見える。一方『news zero』は前4週4.6%が4.5%とほぼ横ばいに終わった。これだけ見ると、23時台の直接対決はTBSが笑い、日テレが泣いたように感じる。

ただし1分視聴率を分析すると、少し異なる風景が見えてくる。

ちなみに番組欄での告知が間に合わなかった他の4番組。

あるいは敢えて入れようとしなかったのかも知れないが、結婚報道はほとんど影響しなかった。コーナーもほとんどが短く、『WBS』に至っては全く触れなかった。

結果として視聴率は前4週との比べほぼ横ばいだった。

NHKの『ニュース7』のみ、9.3から10.1%と少し上昇したが、これは沖縄での緊急事態宣言扱いなどコロナ報道によるもので、二人の結婚は平均視聴率にほとんど影響していない。

『NEWS23』と『news zero』の違い

では23時台の直接対決、本当の明暗はどうだったのだろうか。

まず『NEWS23』は、冒頭6分間を愛知県知事リコールでの署名偽造事件を放送した。この間の視聴率は微減で推移した。

一方『news zero』は、冒頭から有働キャスターが逃げ恥婚に触れた。

しかも挨拶の直後、「思わず、え~~~って声が出てしまった」と来た。人間性丸出しの彼女の人たらしぶりがイキナリ全開といった感じだ。

実は有働由美子アナは、2013年にこんな出演をしていた。

放送60周年の『TV60 NHK×日テレ 60番勝負』という特集だ。2日目にNHK側アナウンサーとして出演し、日テレ側の桝太一アナを完全に食ってしまった。民放と一緒にテレビに出て、NHKの放送では滅多に見せないくらいの弾け方をしていたのである。

今回の出方を見て、「ああ、日テレはあの放送を見て、いつか日テレに採ろう」と考えていたんだろうなと思ったほどだ。

直後のVTRも、途中のCMをものともせずに、視聴率は急伸し続けた。正直に言えば、日テレのVTRはTBSと比べて必ずしも魅力的ではない。

ところがVTR受けも有働アナ一人で、「星野さんの前で恋ダンスを踊って、新垣結衣さん並だったでしょう」と顔を傾げて見せる。

アラフィフの女性があの新垣結衣に対抗しちゃうのだから、彼女の手練れぶりは微笑ましいタイミングだけに絶品と言えよう。

一方の『NEWS23』。

番組全体は前4週平均より0.3%高かったが、それは普段が低すぎるため。

毎分視聴率で見ると、『news zero』がやった後にコーナーが始まるためか、数字はそれほど上昇しない。

ドラマの制作局だけに、二人の“ムズキュン”シーンがたっぷり紹介された。

しかも小川キャスターと星野源のインタビューや、新垣結衣がドラマの中で『NEWS23』に出演したシーンなど、貴重な映像も出て来た。

極めつけは神回と言われた第6話を実際にテレビで見ながら、「萌えているみくりの様がすごく萌えます」「お前が萌えるよ!」という星野源の告白まで飛び出した。

それでも『news zero』のコーナーは1%以上急伸したが、完成度の高い『NEWS23』は半分ほどの上昇にとどまった。

もし同じ水準だった冒頭からやっていたら、どうだっただろうか。また小川彩佳アナが心からと見えるような弾け方をしていたらどうだっただろうか。

硬派ニュースに拘る局と、若年層に見てもらうことを重視する局との違いが際立った。

めでたいお話は人間性で伝わる!?

翌20日の朝のニュース戦争でも、状況は似ていた。

ドラマ映像が豊富なTBS『あさチャン!』が、二人の結婚コーナーで0.5%以上数字を上げたが、その上を行ったのは日テレ『ZIP!』だった。

そのコーナーの目玉は、前日『news every.』の藤井キャスターの映像。

「普段は冷静なこの人も」と前振りして、興奮気味の喋りをそのまま見せた。しかも「興奮する藤井アナ、かわいい」「藤井アナ、落ち着いて」などのつぶやきも反響として紹介してしまった。

自局アナの反応をニュースにしてしまう同局の強かさが印象的だ。

ドラマの制作局という圧倒的に優位な立場を存分に発揮できなかったTBS。

武器が足りないのなら、キャスターの人間性と演出の妙で勝負に出た日テレ。

テレビ番組は、素材の優劣だけで単純に決まらない“奥の深い世界”であることを、改めて教えてくれた“逃げ恥婚”報道だったと言えよう。