恋愛ドラマは本当に若年女性に見られているか?~『恋はDeepに』『リコカツ』等の視聴データ分析から~

春ドラマの初回の放送がほぼ終わった。

今クールは男女の恋愛模様を描くドラマがGP帯(夜7~11時)に5本放送されている。

その初回の個人視聴率は、石原さとみ『恋はDeepに』、北川景子『リコカツ』、川口春奈『着飾る恋には理由があって』、吉岡里帆『レンアイ漫画家』、松たか子『大豆田とわ子と三人の元夫』の順となった。

昨年1月クールの上白石萌音『恋はつづくよどこまでも』以降、恋愛ドラマがさかんに放送されるようになっているが、5本放送される今クールはこれまでにない盛況ぶりだ。

広告主のニーズに応えるべく、近年は若年層をターゲットとする局が増えている。恋愛ドラマはまさにその路線に乗って量産されるようなった。

では実際には、狙い通り10~30代の女性に届いているのか、視聴データで検証してみた。

個人視聴率の状況

ビデオリサーチ(VR)関東地区のデータによれば、初回に最も見られたのは日テレ水曜10時の『恋ぷに』。

5.7%は5本の中でトップだが、同時間帯の前4週平均と比べても0.3ポイント上回った。しかも前クールの菅野美穂『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』初回とも肩を並べた。

順調なスタートと言えよう。

一方5.3%のTBS金曜10時『リコカツ』は、前4週平均を上回ったが、前クールの長瀬智也『俺の家の話』からは1.1ポイント下回った。微妙なスタートと言ったところか。

3位で4.7%のTBS火曜10時『着飾る恋』は、前4週より0.6%上がったが、前クールの上白石萌音『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』より1.8ポイントも下回った。同枠としてはイマイチな始まりと言えよう。

4位4.3%のフジ火曜9時『まめ夫』も、前4週はクリアしたものの、前クール藤原竜也『青のSP』には届かなかった。

5位3.5%のフジ木曜10時『レンアイ漫画家』は、唯一前4週を下回った。前クール大倉忠義『知ってるワイフ』よりわずかに高かったものの、同枠の低迷を打ち破るほどのパワーには欠けるようだ。

若年女性の高い支持

ただし以上のデータは、ほぼ半数を占める男女50歳以上のテレビ視聴動向が大きく影響する個人視聴率全体の話。

これをCCCマーケティングのインターネット接続テレビを使っている7万2千人(関東地区)で分析すると、評価は大きく変わる。若年女性の支持が凄まじいことがわかるからだ。

個人視聴率が5.7%でトップだった『恋ぷに』は、竹野内豊『イチケイのカラス』(フジ月9)に2ポイント以上離されていた。ところが独身20~30代女性では8.3%、女子中高生や女子大生に至っては11%超と個人全体の倍近い。もちろん『イチケイ』を逆転する。

他4ドラマもすべて、独身20~30代女性や女子中高大生の個人視聴率が個人全体を大きく上回る。

ただし『まめ夫』だけは、上昇率はさほど大きくない。恋愛ドラマは“恋のはじまり”を描くものが多い中、“恋の終わり”以降を描くことの多い坂元裕二ドラマは、やはり若年女性とは親和性があまり高くないようだ。

逆に個人全体で『まめ夫』より0.8ポイント下回った『レンアイ漫画家』が気を吐いている。

ネット上では大人の評論家などに批判されている割に、若年女性の間では『まめ夫』より高い数字となった。「キュンシーンがマンネリだったりダサかったり…」と叩く記事もあったが、女子中高大生が皆そう見ているとは限らないようだ。

広告主からは垂涎の的

恋愛ドラマは若年女性の個人視聴率が高いだけじゃない。

広告主からみると、CMを届けたいターゲット層がよく見る番組になっている。つまり出稿したい“垂涎の的”なのである。

例えば「綺麗になりたい」女性をターゲットにする企業だ。

趣味・関心が「美容」「ファッション」と答える各2000人では、『恋ぷに』が8.5%ほどで全ドラマ初回の中でトップクラスとなった。

2013年以降、毎年「世界で最も美しい顔100人」(米国映画批評サイト)の常連となっている石原さとみのパワーだろうか。明らかに特定層を強烈に引き付けている。

『リコカツ』『着飾る恋』も、「美容」「ファッション」で7~8%。

主演の北川景子も川口春奈も、各種人気ランキングで上位に名を連ねることが多い。この特定層では、やはり女優の力がモノを言っているようだ。

そして『まめ夫』だけは、「美容」「ファッション」が個人視聴率より上だったが、「料理」の方が上回った。

松たか子は四半世紀以上も出演する山崎製パンCMのイメージが強いせいか、はたまた和風美人と評されることが多いせいか、「美容」「ファッション」より「料理」が先にきた。

ちなみに個人視聴率全体で苦戦の『レンアイ漫画家』も、「美容」「ファッション」では上位に入った。

“ダメ男ホイホイ”役を演じる吉岡里帆に対して、「ギャルファッションがかわいすぎ」「何をやっても可愛い」などの反響もある。毀誉褒貶が激しくても、特定層を引っ張る力は尋常ではないようだ。

化粧品メーカーへの切り札

そして恋愛ドラマで女優を魅力的に撮ることは、化粧品メーカーへの切り札となっている。

CCCマーケティングでは、月間の化粧品購入額別にライト(下位50%)・ミドル(中位30%)・ヘビー(上位20%)にわけて個人視聴率を算出している。

これによると、全ドラマの中でやはり『恋ぷに』がトップクラス。『まめ夫』を除く他3ドラマも高い数字となった。ここで興味深いのは、化粧品の購入額に関係なく、化粧品を買う人はいずれも恋愛ドラマを見る人が多いという事実だ。

4ドラマとも化粧品あるいは暮らしを美しく快適にする商品を出すメーカーがタイムスポンサーとなっているが、なるほど民放番組とCMの関係はよく考えられている。

ちなみに個人視聴率を1として、各特定層を指数化すると、興味深い事実が浮かび上がる。

女子中高生や独身20~30代の突出ぶりは、『恋ぷに』が他を圧倒した。そして個人視聴率の順位通り、若年女性の各層は『リコカツ』『着飾る恋』の順で数字が高い。

ところが『レンアイ漫画家』は、女子大生・美容で健闘する他、化粧品ヘビーで恋愛5ドラマの中でトップとなった。

化粧品メーカーの中には、「男性や高齢者に見てもらう必要はない」「下手に個人視聴率全体が高いとCM単価が高くなる。むしろ若年女性の比率が高い、あるいは化粧品購入の頻度の高い人だけが見てくれる番組の方に出稿したい」という社がある。

つまり自社の製品の購買層だけが見る番組を求めている。

その意味では、万人受けするのではなく、ターゲット層に特化したドラマにニーズがある。『レンアイ漫画家』に対しては、世帯視聴率が低く「試合終了」と揶揄する記事もあったが、スポンサーは必ずしもそんな数字だけで判断してはいないのである。

視聴データが進化し、誰が見ているのかを詳細に認識できるようになった時代。

テレビ番組は特定層をしっかりグリップすれば生き残ることが可能だ。かつては最大公約数狙いの番組が持て囃されたが、ようやく多様性の時代が訪れそうだ。