『ZIP!』躍進は“水卜”ミラクル!?~朝7時のニュース戦線異状あり~

(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

テレビ界が新年度となって3週間。

今期から総合司会が交代するなどし、朝7時台のニュースは競争が激化している。その中にあり、最初の1週間はやや苦戦したが、水卜麻美の『ZIP!』が躍進している。

ニュースを扱う5番組を、新年度15日までの平均と3月平均で比較すると、個人視聴率で102.3%の『ZIP!』が一番好調で、しかも週を追うごとに勢いを増している。

番組史上はじめて女性の総合司会1人とした同番組がどう健闘しているのか、データで分析してみた。

当初3週間の実績

NHK『おはよう日本』・TBS『あさチャン!』・テレビ朝日『グッド!モーニング』は、新年度でも大きくリニューアルされていない。

一方フジテレビ『めざましテレビ』は、入社4年目の井上清華が総合司会3人の1人に抜擢された。そして日本テレビ『ZIP!』は、これまでの男性と女性の2人による総合司会から、水卜麻美が1人で重責を担うことになった。

ビデオリサーチが調べる関東地区の個人視聴率では、早くも明暗が分かれ始めている。

『あさチャン!』(7時台)と『めざましテレビ』(6時10分から110分間)は、3月平均と比べると微減にとどまる。『グッド!モーニング』(6~7時台)はほぼ横ばい。ところがNHK『おはよう日本』(7時からの45分間)は微増、日本テレビ『ZIP!』は102.3%で最も上昇している。

しかも週を追うごとに勢いを増している。

新年度第1週は前4週比で94%と苦戦した。新体制での不慣れが番組内容や画面に出たのだろうか。

ところが第2週は106%と挽回した。そして第3週(月~木)は、108.1%とさらに伸ばしてきた。修正能力の高さが際立つ。

躍進ぶりは他を上回る。

あまり変えていない『グッド!モーニング』は、前4週比でほぼ横ばい。総合司会に4年目の若手を抜擢した『めざましテレビ』は、前4週を上回るのは第3週目でようやくだった。

誰が見始めたのか?

『ZIP!』を支えた視聴者層は明確だ。

関東で5000人のテレビ視聴状況を調べるスイッチ・メディア・ラボによれば、男女年層別ではFT(女性13~19歳)とF1(女性20~34歳)が傑出している。特にFTでは、『グッド!モーニング』が3月平均の80.7%、『めざましテレビ』に至っては65%しかない。両番組から視聴者をかなり奪ったと言っても過言でない。

ところが男性では、『ZIP!』はパッとしない。

MT(男性13~19歳)こそ99.6%とほぼ横ばいだが、M1(男性20~34歳)は88.1%・M2(男性35~49歳)95.8%と視聴者を減らしている。

どうやら水卜麻美アナウンサー(34歳)は、若年男性にはあまり人気がないが、若年女性からは大きく支持されているようだ。

実際、未婚女性の個人視聴率は112%と大躍進したが、未婚男性は91.4%とふるわない。日テレの絶対的エースで「高額でヘッドハンティング」という報道が出ているが、現時点では幅広い層からの人気ではあるものの、特に若い女性から圧倒的な支持を集める存在と言えそうだ。

番組内容にも支持!?

以上は水卜アナ加入前後からの評価だが、視聴者の絶対量では別の分析も可能だ。

同番組は男女とも2層(35~49歳)と3-層(50~64歳)が最もボリュームが大きい。そして質的な部分では、関心領域が「情報ワイド」「タレント/芸能人」「お笑い/バラエティ」が以前から高かった。

これらに加え新年度以降は、「硬派ニュース」「文化情報」「美容/ファッション」の関心層もよく見るようになっていた。3月平均比での各関心層の伸びは以下の通り。

タレント・芸能人・・・・109.9%

情報ワイド・・・・・・・・・・106.2%

美容/ファッション・・103.5%

文化情報・・・・・・・・・・・・102.5%

硬派ニュース・・・・・・・・102.2%

お笑い/バラエティ・・ 99.1%

ちなみに『グッド!モーニング』も『めざましテレビ』も、「硬派ニュース」「文化情報」「美容/ファッション」「情報ワイド」関心層の個人視聴率は横ばいか下落していた。

つまり『ZIP!』は、キャスター・出演者や演出の側面だけでなく、取り上げるテーマや構成で幅広い層からの支持を集め始めている可能性がある。

明暗は視聴習慣から!?

視聴率競争の明暗は、視聴者の数が時間と共にどう変化しているかにも表れる。

関東で90万台近いテレビの稼働状況を調べるインテージ「Media Gauge」によれば、6時の時点での接触率は『ZIP!』『めざましテレビ』『グッド!モーニング』の順で高い。

そして6時台にいずれの番組も右肩上がりを示すが、その傾斜角度はやはり『ZIP!』が最も急となる。つまり朝起きてテレビをつけた際、3番組では『ZIP!』を見始める人が最も多い。視聴習慣に差があると言えよう。

しかも7時から明暗がさらに大きく分かれる。

『グッド!モーニング』は6時53分頃がピークで、7時までに一旦0.4%ほど下げ、その後あまり上昇することなく横ばいで推移する。

『めざましテレビ』も6時58分頃がピークで、やはり7時までに0.2~0.3%下げ、その後7時30分まで横ばいとなってしまう。

ところが『ZIP!』だけ軌跡が違う。

6時50分から7時まで0.6%強と順調に数字を上げた後、7時台では14分頃に一度目のピークを迎える。他2番組は横ばいだったが、この14分間に『ZIP!』は1%かさ上げする。

そして一度CMで数字を落とすが、28分までにさらに0.5%上げて二度目のピークを迎える。

つまり『ZIP!』だけは右肩上がりが7時半頃まで続いているのである。6時50分台から7時台前半にテレビをつける人の中では、「まず『ZIP!』を見よう」という人が圧倒的なようだ。

流入・流出率から見えること

一般的にテレビ番組を最初から最後まで見続ける人は多くない。

特に朝6~7時台の忙しい時間帯は、途中から見はじめ途中でやめる人が大半だ。つまり視聴習慣を持ってもらうことと、途中で逃げられないようにすることが、視聴率競争ではポイントとなる。

6時台に『ZIP!』の右肩上がりが急なのは、視聴習慣を前提に流入率が最も高く続くからだ。

そして重要なのが6時50分台。『グッド!モーニング』『めざましテレビ』の順で大きく視聴者に逃げられている。

まず『グッド!モーニング』では、6時53分頃と56分頃に大きな流出ポイントがある。

実は「林修のことば検定プラス」が始まる頃と終わる頃だ。「朝から勉強したくない」「ニュースと関係ない」などの言葉が聞こえてきそうだが、SNS上での反応は皆無と言っても過言でない。視聴する意味を感じないと思っている人が、一定程度いる可能性がある。

次に『めざましテレビ』では、キラーコーナーが災いしているかも知れない。

「めざましアニメ紙兎ロペ」「めざましジャンケン」「ロペまち占い」の各コーナーに流出ポイントが来ているからだ。かつて斬新と言われ、実際に多くの視聴者に注目された手法かも知れないが、今にフィットしているか否かは怪しい。

こうしたコーナーの前後で、高い流出率となっている以上、再考の余地がありそうだ。

もう1点は7時からの30秒。

SNSで話題となった珍しい動画・視聴者投稿動画・芸能人の不祥事ニュースなどが来ている。他局であまりやらない独自情報ではあるものの、視聴者の動向は流入より流出が大きくなっている。

やはり視聴者が見たいものか否かの再検証が必要だろう。

一方『ZIP!』の7時前後数分間は、流出率が極めて低い。

実は6時58分からその日最も注目される硬派ニュースをスタートさせている。裏局の大半が、天気予報やミニコーナーをやっているタイミングで、流入率が一挙に倍増している。その勢いで7時16分までの18分間、国民の最大多数が重要と考える話題を伝える姿勢が、多くの視聴者に支持されているようだ。

勝利の方程式は変わる

実は日本テレビは、日本で最初に番組マーケティングを定着させた局だ。

1979年に始まった『ズームイン!!朝!』は、当初は今の『あさチャン!』と良い勝負の低視聴率に喘いだ。ところが番組マーケティングを始め10年ほどで横並びトップに躍り出た。同局はその後、お昼や夕方のニュースでも躍進した。さらに同局系列の大半が、各エリアの夕方ローカルニュース枠で視聴率トップをとるまでになった。

ただし筆者が重視したいのは、手法は時々刻々変わるという点。

つまり80年代の手法は90年代で見直され、その後も一緒のままではないということだ。『めざましテレビ』のかつての人気コーナーが、今は一定程度の視聴者を流出させているかも知れない点もその典型だ。

また『あさチャン!』は、6時45分から硬派ニュースを40分ほど並べているが、流入が流出を大きく上回るのは7時過ぎまで。その後の十数分は、視聴率は上昇しなくなっている。やはりニュース項目の選択、各項目の切り口や尺の問題で、視聴者の生理と合っていないのかも知れない。

かくして新年度最初の3週間は、『ZIP!』が躍進した。

ただし原因については、水卜アナの魅力か、制作陣の腕なのか、断定するにはまだ材料が足りない。少なくともリニューアル後に勢いを増しているのは事実で、移ろいやすい視聴者のニーズに調整していく力に日テレが長けていることだけは間違いなさそうだ。

これからコロナ第4波が懸念される。

その後もワクチン接種の進捗状況、東京五輪問題、自民党総裁選、総選挙と秋まで大イベントが目白押しだ。

それらをどの局が上手く料理し、視聴者に受け入れられるのか。制作陣の腕前に注目したい。