展開なきドラマの憂鬱~主人公・渋沢栄一の出身地からも見放され始めた『青天を衝け』の課題~

番組ホームページから

吉沢亮『青天を衝け』が4話を迎える。

初回の世帯視聴率は20.0%で、ネット上は「好発進」「8年ぶり大台」など絶賛の嵐となった。

そして2話16.9%・3話16.7%と続き、「微減も好調維持」「3週連続で首位キープ」など、高評価の記事が絶えない。

ただし、これらの記事の大半は、どこが優れたドラマかを説明していない。

そもそも量的調査は質を保証しないが、それでも多様な視聴データがある今、見られ方を詳細に分析するとドラマの良し悪しは多少浮かび上がる。

これらのデータからは、1~3話というシリーズの序盤に課題があったことがわかる。

登場人物の紹介や時代状況の説明が多く、物語がなかなか展開しない点が最たるものだ。どう見られているのか、深掘りしてみた。

関東の世帯視聴率の意味

同ドラマは初回から3話で、ビデオリサーチが調べる関東地区世帯視聴率で3.3%下がった。

それでも1週間の夜帯ドラマで1位、横並びでも『ポツンと~』『イッテQ』を上回り、「好調をキープ」と評されていた。

しかし全国約255万台のスマートテレビから視聴ログを収集するインテージ「Media Gauge」によると、確かに初回はよく見られていたものの、第3話までで変調をきたしていることがわかる。

夜帯ドラマのランキングで見ると、初回は埼玉・東京・京都など6都府県で首位だった。2位が神奈川・千葉・山梨など14県。3位が茨城・兵庫・福岡など7県。素晴らしい実績だ。

ところが第3週となると、状況は一変する。

どのエリアでも首位も2位もとれず、3位が東京と神奈川の2つのみ。ベスト5漏れが35道府県に及んだのである。

初回の接触率が10.23%で全国一となった埼玉は、ドラマの主人公・渋沢栄一の出身地だ。

それでも3話までに4分の1近い視聴者を失い4位に後退した。渋沢が設立や運営にかかわった約500の企業の本社が多い東京も、初回は1位だった。ところが、やはり4分の1近くを失って3位に甘んじた。

ちなみにこの週の1位最多取得ドラマは『天国と地獄』、次が『監察医 朝顔』。

他にも『オー!マイ・ボス! 恋は別冊で』『青のSP(スクールポリス)』『知ってるワイフ』『ウチの娘は、彼氏が出来ない』『レッドアイズ 監視捜査班』などの後塵を拝した。

まさに初回と第3話では、天国と地獄を見るようだ。

頂けない冒頭10分

失速ぶりは、各話冒頭10分に顕著に表れている。

初回こそ過去10年の大河ドラマと比べても、高い接触率で始まった。人気の若手・吉沢亮をはじめ、テレビへ久しぶりにカムバックした感のある草彅剛、栄一の妻役を演ずる橋本愛など、豪華キャストで話題を集めたこともあろう。

ところがその初回も、冒頭10分でほとんど接触率が上がらなかった。

さらに10分以降も右肩上がりとは行かなかった。過去5作の中では、19年の『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』の時だけの現象だ。期待する視聴者が多く見る大河ドラマの初回は、右肩上がりが一般的だが、どうやら同ドラマでは期待外れと感じた人が少なくなかったようだ。

結果として第2話は、2%以上接触率が低く始まった。

しかも序盤の上昇ペースはかなりスローテンポとなった。そして第3話、冒頭の上昇速度はさらに遅くなっている。

どうやら物語の構成や展開が、あまり魅力的と受け取られていないようだ。

展開しないストーリー

筆者は初回のあと、『「青天を衝け」好調大合唱への疑問~世帯視聴率で空騒ぎする発表記事を憂う~』の中で、北小路欣也扮する徳川家康が、番組冒頭で「こんばんは、徳川家康です」と語り始め、渋沢栄一登場までの日本史を解説するシーンへの疑問を投げかけた。

SNS上では、この演出を面白がる声もあった。

ところが視聴者の流出率を直近4作の大河と比べると、その解説コーナーで見るのをやめた人が明らかに多かった。「歴史の勉強みたいで嫌」と逃げだす人が少なからずいたのである

また同記事では、「初回は主な登場人物の顔見世といった感じで、まだ物語は本格的に展開していない」「2話以降の健闘を期待したい」と締めくくった。

ところが物語は、第3話に入っても依然として時代状況や登場人物たちの立場の説明が多く、劇的な展開をみせてくれない。

例えば3話冒頭は、1~2話の徳川家康による解説ではなく、ドラマとなっていた。

ところが「すくも(藍の染料)」の作り方などの説明シーンで、理科や家庭科の教材ビデオの様な感じだった。

そこから約2分半のタイトルバック。

そして今回も、徳川家康(北小路欣也)の解説が2分20秒続く。しかも説明は、徳川家ゆかりの外国人だ。マルコ・ポーロ、ウィリアム・アダムス、ラナルド・マクドナルドと来て、さらにマシュー・ペリー(モーリー・ロバートソン)が登場する。

テレビのような時間軸にそった表現では、視聴者は並列を嫌う。

「イチ・二・サン・たくさん」と評しているが、並列的な要素の説明が続くと、付いていけなくなり、退屈を感ずる視聴者が出てくるので、よほど巧妙な構成にしない限り避けた方が良いとされている。

その後も、父(小林薫)に連れられた栄一は、平岡円四郎(堤真一)と出会う。

ところが「栄一と徳川慶喜を結び付けることになるのですが、それはずっと後のお話です」とナレーションが入り、キョトンとしてしまう。

さらに慶喜(草彅剛)・斉昭(竹中直人)・高島秋帆(玉置宏)などの重要人物の状況が少しずつ説明されるが、依然として顔見世と状況説明の域を出ない。

結局、栄一が藍の買い付けに一人で出かける辺りから、主人公のまとまった展開という感じだが、尺的には10分余りしかなく、ドラマを堪能した気がしない。

属性別視聴率の動向

前提のインプットが延々続くような作りは、属性別視聴率の動向に結果が表れている。

男女年層から仕事や家族関係など踏み込んだ属性別視聴率を測定しているスイッチメディアラボのデータによると、3話は初回と比べ幾つかの層で視聴率を落としている。

まず男女年層別では、F2~F3-とM2~M3-(男女35~64歳)で芳しくない。

初回は16年の『真田丸』を上回っていたが、第3話で逆転されてしまった。

さらに特定層での視聴率をみると、キャスティングの神通力が早くも色あせ始めている点が気になる。

主役は女性に人気の吉沢亮だが、主婦層では粘っているものの、未婚女性は半減近くまで下がってしまった。

また「日本の資本主義の父」と称される渋沢栄一を描くドラマなのに、その分野の関心層が大きく後退しているのは如何なものだろうか。

ビジネス番組好き、課長・部長などの管理職、さらに金融・サービスなどの三次産業従事者の下落ぶりが目立つ。その方面の物語がなかなか始まらないことへのいら立ちと見ることが出来ようか。

そして最も気になるのが、ドラマ好きの視聴率急減だ。

初回11.3%から3話で7.9%と3割を失った。「ドラマとして面白くない」という声に、制作陣は真摯に向き合う必要がありそうだ。

どうやら前述の拙稿の結論を再び言う必要がありそうだ。

しかも今度は第4話。これまでと同じように視聴者に逃げられていては、もはやしばらく挽回は難しくなる。時代や登場人物たちの事情説明は、もはや十分だ。早く卓越した切り口と展開のストーリーを見せてもらいたい。

今度こそ、健闘を期待したい。