6県で嵐が敗れた『紅白歌合戦』~歌手トップ5は地域でこんなに違っていた!!~(修正あり)

世帯視聴率“史上最低”の19年から、1年で40%台に戻した今回の『NHK紅白歌合戦』。

夜9時台にGReeeeN・嵐・LiSAが並び、ラストを松任谷由実・玉置浩二・福山雅治・MISIAで盛り上げた結果だった。

ビデオリサーチ(VR)関東地区のデータでは、その9時台に登場した嵐が、世帯視聴率47.2%で歌手別の最高と報道された。

ところが47都道府県の動向を分析すると、嵐は茨城・鳥取・高知・沖縄など6県で敗れていた。

2~5位にランクインした歌手を見ても、地域によってバラつきがある。

南北にも東西にも3000kmにおよぶ日本列島は、実は地域差が大きい。

大晦日恒例の『紅白』が地域によってどう見られたのか、その違いを考えてみた。

東高西低の接触率

調査会社のインテージは、日本全国を調査対象に、235万台のスマートテレビと86万台の録画機から視聴ログデータを収集している。

この結果、例えば人口の少ない高知県でも、1万台以上のテレビで何が見られていたのかを詳細に分析できる。

同社データによれば、4時間10分におよぶ『紅白』の平均接触率が最も高かったのは山形県。

2位が神奈川県、3位山梨県、4位新潟県、5位島根県の順となった。

逆にワースト5は、1位和歌山県、2位香川県、3位大阪府、4位沖縄県、5位青森県だった。

これを6ブロックに分けてみると、1位から3位は僅差で中部地方、関東地方、東北・北海道が並んだ。

そして4~6位は、九州地方、中国・四国地方、近畿地方の順となった。

上位3地方と下位3地方では、2ポイント近くの差が生じており、『紅白』については東高西低の構図がはっきり見て取れる。

お笑いか?毎年恒例か?

大晦日の夜のテレビは、ここ20年以上にわたってNHK『紅白』と日本テレビ『絶対に笑ってはいけない』の2強時代が続いている。

去年末の両番組を、それぞれ全国平均を1として47都道府県を指数化してみた。

すると『紅白』の地域差は±0.1ポイントほどの範囲に留まるが、傾向としては東高西低となった。ところが『笑ってはいけない』は、±0.2ポイントほどと地域差が大きく、近畿地方で突出して高くなった。

実は2020年の最高視聴率となった『半沢直樹』でも、近畿地方は他と比べ傑出した。

ドラマの基本は、サラリーマン社会の歪みを描いた硬派な物語だったが、“ベタ”で勧善懲悪を好む関西人は、「コメディとして楽しむ」という側面があった。

その関西独特の笑いのセンスが、『笑ってはいけない』への高い支持にもつながり、結果として『紅白』の指数が低くなった。

お笑いか?毎年恒例か?

かくして関西の文化的影響が及ぶ西日本では『笑ってはいけない』が良く見られ、『紅白』はそれほどでもないという東高西低になったのである。

歌手別ランキング

では『紅白』の歌手別ランキングはどうだったのか。

インテージの全国平均で見ると、VR関東地区と同様に嵐がトップに輝いた。同じ時間帯に行った配信コンサートを一時中断しての紅白ラストステージ。5人の思いがこもったパフォーマンスと挨拶に視聴者は大いに注目した。

2位は「鬼滅の刃」SPメドレーを歌ったLiSA。嵐とは僅差だった。

3位は「星影のエール」紅白SPのGReeeeNが入った。その直前の企画「エール」メドレーを含め、今回は9時台に2020年を代表するコーナーが4つ並び、例年と異なり、ここで一挙に『紅白』を盛り上げた。

視聴率40%台回復の最大の原動力だった。

4位はトリのMISIA。

実は今回の『紅白』の終盤は、9時台に及ばないという異例の波形となった。それでも星野源「うちで踊ろう(大晦日)」・氷川きよし「限界突破×サバイバー」・松田聖子「璃々磯の地球2020」・松任谷由実「守ってあげたい」・福山雅治「家族になろうよ」と並んで最後にMISIA「アイノカタチ」と来た。

「今こそ歌おう みんなでエール」がテーマだった今回。

コロナ禍で大変な状況となった2020年に向けたメッセージの詰まった歌が並び、夜11時台は右肩上がりとなった。

質量ともに、終盤に相応しい構成だったのである。

都道府県別最高接触率

9時台や11時台以外にも、気を吐いた歌手は複数いた。

全国平均5位は「夜に駆ける」を歌ったYOASOBI。

文春が大晦日から1月5日にかけて行った「良かったと思う歌手」アンケートでも、7位にランクインされた。紅白初出場ながら、大健闘した歌手と言えよう。

他にも『紅白』トップバッターを務めたKing&Prince、ニュースで下がった視聴率を1~2番で急回復させたNiziUと瑛人など、目覚ましい歌手は何人もいた。

こうした歌手の中から最高接触率の歌手を都道府県別に示すと、やはり嵐が圧倒的だった。

47エリア中の41でトップに輝いた。2020年いっぱいで活動休止となった同グループの、最後の紅白に相応しい記録といえよう。

ところが茨城・鳥取・高知など5県で首位を奪取したのはLiSAだった。

興行収入が346億円を突破し、歴代1位記録を更新中の映画「鬼滅の刃」の威力を見せつけた形だ。

さらに沖縄では、MISIAが唯一王座についた。

実は沖縄県での『紅白』の見られ方は、他の地域と大きく異なる。

その最たるものが、夜9時台が11時台より高くなかった点。他エリアではGReeeeN・嵐・LiSAが並んだ9時台に接触率が急伸していたが、唯一沖縄ではそこまで上昇しなかった。

ところが11時台では、全国平均と同じ程度に右肩上がりが進んだ。どうやら終盤とそれ以前で、テレビの見られ方が違っていたようだ。

この辺りの事情を、沖縄の民放の方は次のように説明する。

「そもそも沖縄地区では、他県と比べてNHKの視聴率が低い。1972年の沖縄復帰後に、NHKは後発局としてスタートした。沖縄県は県別受信料の支払い率でも圧倒的に低い。要はNHKの存在感が薄いのです」

確かにVRのHUT(総世帯視聴率)では、沖縄でも大晦日にテレビはよく見られていた。ところが『ニュース7』や『紅白』の序盤は、全国平均と比べるとかなり低くい。

『紅白』のライバルとなる日テレ『笑ってはいけない』の放送がないのに、低い水準にとどまっていたのである。

「存在感が薄い」という意見が当てはまりそうだ。

「沖縄の民放は、TBS・フジ・テレ朝の3系列ですが、民放の年末特番は途中で失速が目立ちました。だから中盤から後半に行くほど、『紅白』の数字が上がったのではないでしょうか」

全国平均では、冒頭で急上昇した後に夜8時半頃にかけ、数字がズルズル下がった。ところが沖縄では右肩上がりが続いた。また全国平均は9時台に急上昇した後、10時台はじめに急落する。ところが沖縄では、9時台の上昇も緩やかで、その後の下落も激しくない。

「民放3系列の年末特番は若年層ターゲットではないので、沖縄の若者は最初から『紅白』を見ていました。その上の世代が徐々に民放特番から流れた結果、『紅白』は基本的に右肩上がりが最後まで続いたと思います」

コアターゲット(13~49歳)に強い『笑ってはいけない』が放送されない分、沖縄は他県と全く異なる見られ方をしていたのである。

地域別ベスト5

最後に歌手のベスト5の違いについても触れておきたい。

全国を概観すると、多くのエリアでランクインしたのは1位嵐・2位LiSA・3位GReeeeN・4~5位争いがMISIAと「エール」メドレーとなった。いずれにしても2020年にヒットしたコンテンツに関わる歌だ。

ただし順位が例外的だった地域の状況が興味深い。

1~2位は嵐とLiSAが激戦を演じた。ところが嵐もLiSAも1~2位に入れなかったのが、先の沖縄県。右肩上がり基調の中、MISIA・福山雅治がワンツーとなったのはここだけだった。

他でMISIAと福山雅治が揃ってベスト5に入ったのは、長崎・福岡・北海道の3地区。特に長崎と福岡は、ラスト2曲で大きく数字を押し上げ、1~2位の嵐やLiSAに迫っていた。

二人は長崎の出身。郷土愛も関係したようだ。

3~4位のGReeeeNと「エール」メドレーのランクインも特徴的だ。

27県で3位4位に揃い踏みしたが、ブロック全県でそうなったのは東北だけ。しかもGReeeeNが1~2位に肉薄し、「エール」メドレーが5位に大きな差をつけていた。

特に福島県でそれが顕著だった。やはり地元意識が影響を与えていたようだ。

ちなみに1位から5位までが同じ組み合わせとなった地域は3分の2ほど。

これが1位から10位までとすると大半のエリアは、ユニークなベスト10となる。さらに接触率の多寡を絡めると、見られ方は千差万別になっていく。

大晦日の『紅白』は、その年を象徴するテーマで構成される。

このように送り手はある種の意図を込めて放送しても、受け手の視聴者は各地域の実情も反映して異なる見方をする。

全国共通のテーマながら、地域毎に異なる見られ方。

これが『紅白』の奥の深さであり、日本の多様性を映し出す番組の面白さと言えよう。

2021年が何をテーマとし、地域によってどんな異なる見られ方をするのか。

これまでと異なる2021年を反映した『紅白』に期待したい。