日テレ 三冠死守もジレンマ~視聴率の過渡期ゆえの混乱!?~

日本テレビのホームページから

まもなくビデオリサーチから、2020年12月28日(月)から2021年1月3日(日)までの一週間の視聴率が発表される。

これにより日本テレビの7年連続年間視聴率「三冠王」が確定する。

ただしこれは世帯視聴率のこと。実は20年は春から、視聴率は世帯から個人としてきた。だとすると2020年の年間視聴率は、どちらで発表するのだろうか。

もし個人とした場合、同局は余裕で三冠王となる。

ただし19年までは個人で表示して来なかったため、個人で発表した場合はこれまでと比べてどんな実績なのかが分かりにくい。

また世帯の場合、全日(6~24時)・G帯(19~22時)・P帯(19~23時)のいずれも、日テレと2位局との差は縮まっており、来年以降の三冠は不透明となる。

こうした視聴率表示の過渡期ゆえの混乱を考える。

世帯視聴率での年間三冠

2020年の年間視聴率競争を世帯で表現すると、3部門はグラフの通り、1週間を残した時点で大接戦となっていた。

実は2020年の年間視聴率は、2019年12月30日(月)に始まり2021年1月3日(日)まであった。全部で53週と例年より一週間長かったのである。しかも『紅白歌合戦』や『箱根駅伝』が2回カウントされるため、各局の争いに微妙な影響を及ぼしていた。 

それでも日テレが全日・G帯・P帯でいずれも2位を僅かにかわし、2014年から7年連続となる年間視聴率三冠王となった模様だ。

ちなみに最後の一週を残した時点では、全日は2位テレ朝を0.4%以上引き離していた。今回の箱根駅伝も大差となったので、余裕で首位を守ったようだ。

G帯はNHKに0.1%以内と肉薄されていた。

しかも最終週は『紅白』で大きく後れをとったが、他の6日で逆転しているので、ここも逃げきったと思われる。

そしてP帯は、2位テレ朝を0.15%ほどリードしていた。

最終週でテレ朝が8%ほど上回らないと逆転できないので、ここも安泰だろう。

かくして日テレは、2020年の年間三冠王を死守した形になる。

世帯視聴率でジリ貧の日テレ

ただし過去3年を比べると、世帯視聴率を前提とした三冠争いは、様相を変え始めている。

全日こそ大きな変化はないが、GP帯では日テレと2位局との差が急速に縮まっていたのである。

例えばG帯は、18年に1.5%あった差が、19年に半分近くに減り、20年は0.1%ほどとなる。

20年はコロナ禍に明け暮れたため、19時台に30分、20時台に15分、21時台に60分と3時間中1時間45分がニュースで占められるNHKが大躍進した。

またP帯も、18年の1.0%差が、19年0.4%、20年0.2%ほどと急速に縮小している。

2位はテレ朝で、20年はやはりコロナ禍で『報道ステーション』がよく見られた影響が大きい。

ただしコロナ禍の影響を除いても、2位との差は確実に小さくなっている。

その理由は、テレ朝やNHKは中高年によく見られる番組が多い。ところが日テレは、コアターゲット(13~49歳)狙いの番組を作っているため、世帯視聴率では苦戦する宿命にある。

個人視聴率で比べると・・・

では世帯視聴率と個人視聴率で比べると、テレビ局間の差はどう変化するのか。

日テレが20年5月に発表した「2019年度 決算説明資料」には、世帯より個人の方が、2位テレ朝との差が大きくなるというデータが示された。

全日では、0.2%が0.3%に拡大した。

G帯は0.6%が1.0%に広がった。

そしてP帯も0.2%が0.5%となっていた。

若年層が多く見る番組は、家族一緒に見られることが多い。

ところが高齢者は独居あるいは夫婦二人のみ世帯が多い。例えば去年11月29日(日)夜8時の放送。テレ朝『ポツンと一軒家』は世帯視聴率15.7%で、日テレ『イッテQ』の14.0%より高かった。ところが個人視聴率では、9.1%対9.5%で逆転されていた。

このように日テレの個人視聴率は、世帯より個人で他局と比べ数値が大きくなることが多い。かくして2位との差が、個人で拡大したのである。

コアターゲットで大差

これがコアターゲットだと、日テレと2位局との差は劇的に広がる。

全日:0.2%→0.3%→1.3%。

G帯:0.6%→1.0%→2.4%。

P帯:0.2%→0.5%→2.5%。

ちなみにコアターゲットの2位局は、3部門ともフジテレビだ。

これをテレ朝と比べると、全日2.0%差・G帯3.6%差・P帯3.3%差とより大きくなる。3部門ともダブルスコア以上の大差となる。

日テレは早くから若年層ターゲットの番組を制作してきた。

スポンサーが重視する年代層だからだ。ところがテレビの視聴者は、50歳以上の比率が年々高まり、逆に34歳以下の比率は下がっている。つまりT層(男女13~19歳)や1層(男女20~34歳)の若年層狙いで番組を作ると、テレビ視聴者のボリュームゾーンとなる高齢者を多くとる局に世帯視聴率で負けてしまい易くなる。

特にインターネットに接続したテレビの視聴ログなどで各番組の見られ方をチェックしているキー局や系列局の中には、ビデオリサーチの視聴率が高齢層により影響されやすいと危惧する担当者が増えている。

コアターゲット路線では、世帯視聴率で日テレが早晩三冠から陥落すると見ているからである。

一方スポーツ新聞や雑誌には、相変わらず世帯視聴率のみで記事を書く記者が多い。

ところが日テレ・フジ・TBSなどは、高齢層以外の個人視聴率に舵を切っている。テレビ番組がどれだけ見られたのか、複数の指標が併存する時代に入り、わかりにくいなどの混乱が生まれているのである。

この混乱を放置すると、人々のテレビ番組への関心を失わせかねない。

視聴率や視聴データなど、テレビ番組の評価の仕方が多様化すること自体は悪いことではないが、視聴者にわかりやすい指標も決めておいた方が良いと感ずるが如何だろうか。