世帯視聴率が37.3%で“史上最低”と酷評された前回の『紅白』。

ところが今回は、一転して多くの人に見られた。まもなくビデオリサーチ(VR)が発表するが、2年ぶりの40%突破は間違いなく、場合によっては過去5年で最高となる。

背景には、無観客を逆手にとった斬新な演出、2020年ならではの出演者と歌の力などがあるが、視聴データを分析すると、最大の影響はコロナ禍による「ステイホーム」だったことが浮かび上がる。

何が起こっていたのかを分析してみた。

高い世帯占有率

初の無観客となった『第71回NHK紅白歌合戦』。

第70回は放送直後に酷評記事が散見されたが、今回のネット記事は好意的なものが多かった。SNS上でもポジティブな意見がネガを圧倒していた。

こうした評判を裏付けるように、スイッチ・メディア・ラボ(SML)のデータは好成績だった。世帯も個人も、同社が統計を取り始めた2014年以来で最高値となったのである。

ただし後日発表されるVRの数字を、これで直ちに40%超えと即断するのは危険だ。サンプルの集め方などが異なるので、毎回の上下動などの傾向は同じだが、数値が正確に連動するとは限らない。

それでも筆者が注目するのは世帯視聴率の占有率が高い点。テレビを見ていた人の中で、どれだけの家庭を釘付けにしていたかのデータだ。

2014年から19年までのVRとSMLのデータを比べると、世帯視聴率は占有率の0.78から0.82の割合に収まる。これを今回の占有率51.9%に当てはめると、世帯視聴率は40.4%から42.6%となる。

過去5年の最高は18年の41.5%だった。

今回は高い確率で40%台に戻すばかりか、過去5年の最高を抜く可能性があるのだ。

男女年層別の個人視聴率から見えること

今回は単に個人や世帯の視聴率や占有率が高いだけじゃない。

男女年層別の個人視聴率をみると、幅広い世代に支持された点が特筆に値する。

過去5年で最高値を出した18年紅白と比べると、3-層(男女50~64歳)・M3+(男性65歳以上)・FT(女性13~19歳)では及んでいない。

ところがそれ以外の層で上回った。特にF1(女性20~34歳)では、18年の1.4倍と極端に高くなった。

さらに2層(男女35~49歳)でも、18年の1.25倍ほどになった。

C層(男女4~12歳)やT層(男女13~19歳)で高い数字を上げているので、家族一緒に見られるケースが多かったと言えそうだ。

大晦日の最後の番組として、理想的な見られ方と言えよう。

属性別の個人視聴率から見えること

SMLデータから、属性別の個人視聴率を編年で比べると、別の事実が浮かび上がる。

大きな傾向としては、15~17年にかけて、様々な属性の個人視聴率が下落傾向となった。ところが18年に一度ぐっと上がり、19年に再下落した。そして20年に多くの層が最高値を記録した。

そもそも数字が高めに推移して来たのは既婚男女。

親子39歳以下で安定的に推移しているのをみてもわかるが、年末年始は帰省しない限り、家にいて『紅白』を見ることが多いようだ。

今回はもう1点、特殊な動きがみられる。

未婚女性や大学生が急伸している点だ。初詣や友人と旅行に行くなど、これらの層は大晦日の夜に外出していることが多い。

ところが今年は、コロナ感染者についての大晦日の発表が東京で1300人超、全国で4500超となった。

このところの感染状況の悪化で、終夜運転を取りやめる鉄道会社も多かった。また明治神宮など、大晦日から元旦の終夜開門を自粛したところもあった。

行き場を失った若年層が、大人しくステイホームし、ザッピングなどはあっただろうが、結果として属性別個人視聴率を押し上げたのである。

先に紹介した「F1が18年の1.4倍に急伸」というデータと符合しているのである。

かつてVRには、長年『紅白』の視聴率分析を行った名物アナリストがいた。

彼によると、海外旅行や帰省に影響される在宅起床率の多寡が、『紅白』の数字に大きく影響するということだった。その前提には、大雪など荒天の自然条件が大きく関与する。

その伝でいくと今回は、自然の猛威・コロナ禍による「ステイホーム」が在宅起床率を上げ、結果として『紅白』の数字を押し上げたようだ。

しかも裏番組は、お笑いに特化したバラエティ、普段の人気番組のスペシャル版、格闘技など、目新しさは見受けられなかった。これに対して『紅白』は、無観客という“いつもでない演出”が耳目を集めた部分もある。

繰り返しになるが、「ステイホーム」以外に、演出や個別の歌手や歌の力もある。この辺りは、別の視聴データが出てきたところで、後日詳細に分析したい。

いずれにしても高い在宅起床率の中でも、占有率を最高にしたのは、演出陣や出演者の功績だ。

厳しい状況の世の中に、温かいエールを送ったことを評価したい。