下手な鉄砲は数撃っても当たらない!?~テレ朝「バラバラ大作戦」を総合的・俯瞰的に分析してみた~

番組ホームページから

テレビ朝日の新企画「バラバラ大作戦」の全14番組が出そろった。

平日の深夜に、若手プロデューサーやディレクターが芸人やアイドルとタッグを組み、各20分で新たな笑いに挑戦している。

「地上波の枠にとらわれない多角的な展開で攻めていく」としている通り、各種サイトで動画も配信している。

若手が新しいことに挑むのは素晴らしい。

さらに出し口をテレビに限らないのも、価値あるトライアルだ。ただし映像表現である以上、番組の出来が大前提となることは間違いない。

各初回がどう視聴者に受け入れられたのか。

ディテールは一旦置いておいて、今はやりの“総合的・俯瞰的”に見られ方を分析してみた。

ラインナップ

14本のラインナップは以下の通り。

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まず月曜は、お笑いコンビ・さまぁ~ず(大竹一樹、三村マサカズ)のトーク番組『さまぁ~ず論』。かまいたち(濱家隆一、山内健司)の関東初冠レギュラー『かまいガチ』。SNSで有名なあのちゃんがやりたいことになんでもチャレンジする『あのちゃんねる』。

火曜は、くりぃむしちゅー(上田晋也、有田哲平)の新たな一面を引き出す『にゅーくりぃむ』。若手芸人がアトラクションに挑み、バナナマン設楽が観察する『シタランドTV』。「言葉」をテーマにトークやゲームなどを繰り広げるEXITとCreepy Nutsの『イグナッツ!!』。

水曜は、ロバート秋山が街のパン屋を訪ねる『秋山とパン』。「高校生あるある」で人気の土佐兄弟の『あるある土佐カンパニー』。美少女が美少女のためにデカ盛りを作り、美少女が食べつくす『オスカルスイーツ』。

木曜は、中国で人気の日本人インフルエンサーから「中国でバズる秘密」を学ぶ『ブイ子のバズっちゃいな!』。プロ歌手を目指す中高生がアーティストから直接指導を受ける『歌カツ!~歌うま中高生応援プロジェクト~』。そしてド素人によるゲーム開発バラエティ『会心の1ゲー』。

金曜は、新日本プロレスとテレ朝が組んだ新バラエティ『新日ちゃん。』。ももいろクローバーZが出合いをテーマに、4人の新たな発見を紹介する『ももクロちゃんと!』の2本だ。

初回の結果

では14本の初回は、どんな結果だっただろうか。

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緑の折れ線グラフは、前4週の平均世帯視聴率。赤が各初回の実績だ。ビデオリサーチによれば、月~金の25時以降は、1%台で右肩下がりの傾向にある。

しかも一部を除き、前4週平均を下回った。

上回ったのは『かまいガチ』『あのちゃんねる』『ブイ子のバズっちゃいな!』の3番組。

肩を並べたのは『秋山とパン』。他の10番組は、いずれも平均に届かなかった。しかも6番組が8掛け未満と低迷した。

ただし視聴率をみる場合、編成上の流れも重要だ。

前番組が悪いと逆風、前が良いと追い風を受けての船出となるからだ。その意味では、前番組より高い数字をとった『さまぁ~ず論』と『かまいガチ』は、新たな視聴者を集める力があったとみるべきだろう。特に『かまいガチ』は、『さまぁ~ず論』を上回り、さらに前4週も超えてきた。

番組内の流れ

番組の評価には、同じ番組内での視聴者の増減も一つの指標になる。

増えていれば視聴者をより集めた魅力的な展開で、逆に減っているのはつまらないので客が逃げたパターンだ。

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例えば木曜は、大作戦の前の『超人女子戦士ガリベンガーV』が高かったので、『ブイ子のバズっちゃいな!』も高く始まった。ところが東芝視聴データ「TimeOn Analytics」のデータでは、20分で0.1ポイント以上視聴量が下がっている。13%減だ。

続く『歌カツ!~歌うま中高生応援プロジェクト~』は24%減。『会心の1ゲー』も13%減だ。

実は14本中、10本が右肩下がり続きと苦戦した。

『にゅーくりぃむ』と『秋山とパン』が、20分中15分で右肩上がりと健闘した。『ももクロちゃんと!』は15分間横ばいとまずまず。そして『さまぁ~ず論』は10分間を何とか持たせた。

ただし以上4番組は、GP帯(夜7~11時)で活躍する名の知れた芸能人が出演する番組。

いわば番組の演出ではなく、出演者の集客力がものを言った可能性もある。現に『さまぁ~ず論』は、後半10分で失速した。『シタランドTV』や『かまいガチ』も勢いが続かなかった。

出演者の神通力が続かず、若手制作者の力量不足が露呈した可能性がある。

新バラエティの壁

そもそも新バラエティは定着が難しいと言われている。

GP帯でもここ数年、新作の初回は大半が視聴率二桁割れと苦戦し、生き残る番組が少ない。

例えば2016年春、GP帯で10本の新バラエティが登場した。

ところが今もGP帯で放送を続けているのは1本もない。中にはTBS『直撃!コロシアム!!ズバッと!TV』、フジ『人気者から学べそこホメ!?』『ニッポンのぞき見太郎』のように、わずか半年で消えた番組もある。

逆の典型が日本テレビの日曜夜。

『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』『おしゃれイズム』はすべて長寿バラエティだ。

同局のGP帯には、一週間で24本のバラエティが並ぶ。

そのうち『有吉の壁』だけが今年の新作(この秋の『I LOVEみんなのどうぶつ園』は16年続いた『天才!志村どうぶつ園』の後継)。『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』と『沸騰ワード10』が5年以内の登場。他の21本はすべて長年続き、20年以上の長寿番組も少なくない。

新バラエティは視聴習慣がつくのに時間を要する。

よって安易に看板を掛け変えず、番組内の各コーナーを改善して数字を伸ばすのが同局の作戦だ。そして新番組を出す際には、当てるためのエネルギーを相当費やすという。

つまり“下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる”作戦は採らないというのである。

今後の展望

さて「バラバラ大作戦」に話を戻そう。

月~火の6本は、既に2回目が放送されたが、視聴量推移は初回とほとんど変わらなかった。途中の失速や右肩下がり番組は相変わらず。2本撮りで基本路線やテイストはあまり変わらず、改善の可能性はあまり見られなかった。

例えば『あのちゃんねる』は、Eテレの『ピタゴラスイッチ』のように、ミニコーナーの積み重ねでできている。ただしあのちゃん1人が出ずっぱりで、彼女のファンでない限り飽きてしまう。『イグナッツ!!』もダラダラとトークを展開しているようで苦しい。

低予算で制作しているだけに、他にも長く持たない番組が少なくない。

一方『にゅーくりーむ』のように、ハプニングで魅せる秀作もある。

くりぃむしちゅーの上田にあのちゃんをインストールし、野村アナのインタビューを収録したが、出来の悪さに泣いてしまうハプニングが起こった。

『あのちゃんねる』で苦戦したあのちゃんも、こういう使い方をすると生きてくるお手本のような番組だ。

他にも出演者がミニ動画を作る『あるある土佐カンパニー』や、中国で良く見られた動画を使う『ブイ子のバズっちゃいな!』のように、動画の出来如何で面白くなる番組はある。

ただし『シタランドTV』『イグナッツ!!』『新日ちゃん。』など、発展性を感じない番組が多い。

冒頭で述べたが、若手が挑戦すること自体は悪くない。

それでも多くの人に見てもらうためのアイデアや仕掛けが優れていないと、やはり可能性を感じられない。“総合的・俯瞰的”なデータが示す通りで、ここ数年短命に終わった新バラエティが死屍累々だったように、簡単には奇跡は起こらない。

下手な鉄砲は、数撃っても当たらない。

やはり基本は入念な準備と、制作者の熱量が前提となるようだ。14本の健闘を祈りたい。