『半沢直樹2』が前作に負けた訳

番組ホームページから

最終回の世帯視聴率が32.7%(関東地区)の大記録となった堺雅人主演『半沢直樹2』。

ただし出そろった全データを精査すると、今作の評価には毀誉褒貶が激しかったことが浮かび上がる。

右肩上がりと一見順調だったが、前作ほど終盤の爆発力はなかった。

ラスト3話で見るのを止めた人も少なくない。

地域や性年代別でみると、あまり反応しなかった層も少なくない。

史上2位の金字塔を打ち立てた前作に、今作が届かなかった理由を考える。

ライブ&録画再生視聴率

ビデオリサーチが調べる総合視聴率(ライブとタイムシフトの総計)では、最終回は44.1%だった。

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9話37.6%を6.5ポイント上回り、今シリーズ最高を更新すると同時に、2016年に総合視聴率の調査が始まって以来初の40%超えとなった。

ただしライブ視聴率のみだった2013年版と比較すると、今回は中盤の伸びが今一つだった。

前作最終回の42.2%は民放一般ドラマで史上2位。今作も総合視聴率なら上回った。ところが13年当時もデジタル録画機は半数ほどの家庭に普及していたので、総合視聴率が測定されていれば今作は大きく後れを取っただろう。

特に気になるのは終盤3話。

前作は140%超の伸びを記録したが、今作はライブで132%、総合視聴率だと119%しか伸びていない。ラストスパートの爆発力は、今一つだったのである。

終盤伸び悩みの原因

前作に負けた理由は、東芝視聴データ「TimeOn Analytics」で分析すると一端が見えて来る。

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同社関東地区のデータは、分母が約41万台のインターネット接続テレビ。ラスト3話で初めて見始めたテレビ1万9099台に対して、3話で完全に離脱したテレビは3万1795台と、1万以上多かった。

それでも総合接触率が上昇しているのは、途中で一時離脱した数より、復帰したテレビが2万台弱上回ったからだ。つまり前に見ていたが一旦離脱し、終盤で戻ってきた人が多かったからである。

これは逆に言えば、話題力で一度も見ていない人を新たに引き込む力に欠けていたことを意味する。

同データでは、実は序盤や中盤にも課題があったことも見える。

2話こそ離脱者より新規視聴者が少し上回ったものの、3話以降は新規が離脱より少なくなって行く。全体の接触率が大きく落ち込まなかったのは、やはり一度離脱し後に戻って来る浮動票のような視聴者に支えられていたからだ。これでは残念ながら、視聴熱が極めて高いとは言えない。

もう1点、9月6日の放送も見逃せない。

コロナ禍で制作が間に合わず、緊急ライブとなった日だ。スタジオでのトークがベースとなったため、新規視聴者は1.6倍ほどに膨れ上がった。ところがその後も見続けた人は14%に過ぎず、大多数(86%)は翌週で脱落した。

緊急ライブは新規視聴者をあまり開拓できなかったが、シリーズ途中で見なくなっていた人を、少し掘り起こしていた。

それでも終盤で息切れしたということは、奇抜な顔芸・大きすぎる演技・ハプニング続きの大活劇に、食傷気味となった視聴者が少なからずいたのだろう。

都道府県別の違い

47都道府県別に初回から最終回に向けて、視聴者がどれだけ増えたかのデータも興味深い。

全国220万台ほどのネット接続テレビを調べるインテージ「Media Gauge」のデータだ。

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全体としては、東高西低傾向だ。関西だけ例外的に高いが、それ以外では関東以北が高く中四国以西が低い。

さらに大都市ほど高いのも特徴だ。銀行を舞台にした「経済ドラマ」は、やはり都会のサラリーマンの興味を引いたようだ。

ただし初回から最終回への上昇ぶりで見ると、ちょっと異なる風景が見える。

最も目立つのは、軒並み急伸した関西だ。その理由について在阪民放の方は、2013年版が関西を舞台にしていた点に加え、ドラマのテイストを挙げていた。

「吉本新喜劇に見られるように、関西では“ベタ”が好まれる。ドラマのクオリティは高いですが、大筋は勧善懲悪の“ベタ”な物語。それを好む関西の風土にマッチしたのでしょう」

お笑いの世界に詳しい方は、コメディ要素も指摘した。

「関西の人はコメディとして見ている。歌舞伎役者のオーバーな演技に、『オイオイそこまでやるんか?』『エライ顔しとんな』など、家族でツッコミを入れつつ爆笑しながら観ていた。それでいて毎回問題が起きつつスッキリさせてくれる。娯楽として100点満点でしょう」

ただしこれらの要因が当てはまらない地域もあった。

九州や中四国では、初回接触率が高くなかったばかりか、最終回に向けての伸びも今一つだった。“ベタ”な展開やコメディタッチを、あまり好まない人々が多い地域もあるようだ。

男女年層別の違い

エリアだけでなく、男女年層別でも『半沢直樹2』の見方には差があった。

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初回の接触率を横軸、最終回を縦軸にグラフ化すると、FC(女4~12歳)とF1(女20~34歳)は、他の層と比べ明らかに伸びが鈍い。F3-(女50~64歳)やM3+(男65歳以上)が急伸したのと対照的だ。

金融やM&Aの専門用語も飛び出すが、若年層の接触率は低くなかった。

「死んでもや~だね」「お・し・ま・い・DEATH!」など、子供の喧嘩のような言葉が頻繁に飛び出し、専門用語を理解できなくとも楽しめた娯楽性が大きかった。

働くことの意味や正しいと思う信念に沿った生き方など、普遍性が視聴者の心を揺さぶった点も見逃せない。

それでも同じ「4~12歳」や「20~34歳」では、物語が進むにつれ男はハマって行ったのに、女は必ずしもそうならなかった。

若年層を詳しく見てみよう。

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中高生では男子が急伸し、女子もそこそこだった。ところが小学生で男女に大きな差が生じると同時に、大学生など「18~23歳」では差がさらに広がった。

どうやら力と力の激突を前提とする男の世界を、あまり好まない女性がいるようだ。

あるいは終盤で離脱者が増えたように、大げさで極端な演出に飽きてしまった視聴者が女性を中心に出現していたらしい。

いずれにしても、こうした作りゆえに大ヒットしたことは間違いない。

ただし途中で離れていった視聴者も少なくなかった。やはりシーズン1による大きすぎる期待に応え続けるには、続編には何倍ものパワーが求められるが、残念ながら一部の人を納得させるには至らなかったようだ。

ところが業界では、毀誉褒貶の大きな番組は名作という言い方もある。

この4年で最高の総合視聴率に輝き、かつ社会現象と言われるほど何かと取り上げられもした。ドラマの新たな可能性を切り拓いた傑作だったことだけは間違いないだろう。

これを超える新しいドラマが登場するのを楽しみにしたい。