今期のTBSドラマが好調だ。

週3本のドラマがいずれも二桁で推移するのは稀なこと。しかも3本の平均世帯視聴率が16%を超えているが、これは同局として今世紀最高記録となりそうだ。

TBSドラマは黄金期を迎えたと言えそうだが、何が凄いのか。データで追ってみた。

画像

ドラマ3枠の軌跡

現在のTBSドラマは、火曜10時・金曜10時・日曜9時の3枠。

日曜9時の日曜劇場は最も資源を投入している枠で、この5年でも『天皇の料理番』(15年春・佐藤健)、『下町ロケット』(15年と18年の秋・阿部寛)、『99.9-刑事専門弁護士-』(16年春と18年冬・松本潤)、『グランメゾン東京』(19年秋・木村拓哉)など、高視聴率かつ話題作のオンパレードだ。

年間平均がこの10年、ずっと二桁を維持しているが、失敗作が少ないのも特筆すべきだろう。

火曜10時は2014年から新設されたドラマ枠。

最初2年の年間平均は6~7%台と苦戦した。ところが16年秋の『逃げるは恥だが役に立つ』(新垣結衣)がブレークして以降、9%前後をキープするようになった。

『あなたのことはそれほど』(17年春・波留)、『義母と娘のブルース』(18年夏・綾瀬はるか)と話題作も飛び出し、今年は『恋はつづくよどこまでも』(20年冬・上白石萌音)、『私の家政夫ナギサさん』(20年春・多部未華子)とヒットが続き、番組枠始まって以来初めて年間平均が二桁となりそうだ。

金曜10時は1970年代から続く伝統枠。

平日の帯ニュースで途中2年ほど休止期間があったが、『岸辺のアルバム』『金妻』『ふぞろいの林檎たち』『高校教師』など長く記憶に残る作品がたくさんある。

ここ数年でも『コウノドリ』(15年と17年秋・綾野剛)、『アンナチュラル』(18年冬・石原さとみ)など、話題作が出ている。ただし年間視聴率では二桁に届かず苦労していたが、『MIU404』のヒットで今年は久しぶりの大台が視野にはいってきている。

曜日とドラマ

画像

CCC Marketingの視聴データによれば、テレビは金曜日に苦戦する。

“花の金曜日”という言葉があるように、休日を前に夜遊びする人が多く、在宅率が低い分だけテレビを見る人が減る。

ただし夜更かしする人は多く、録画再生視聴は多くなっている。TBSが金曜10時に問題作・話題作を並べるのは、視聴者数は減るがじっくり見る人が多いことに合わせているようだ。

また火曜日も、平日の中ではライブ視聴が多くない。

休み明けの月~火と働き、疲れが出てしまった人が多いせいだろうか。ただし女性のライブ視聴は必ずしも落ち込んでいない。ゆえにTBSは、枠新設以来、主演はずっと女性が務め、女性20~40代をターゲットにしてきた。

そして日曜は、ライブ視聴も録画再生視聴も最も多い1日だ。

週末の夜、家族でくつろぐ時間帯で、8時台が日本テレビ『イッテQ』やテレビ朝日『ポツンと一軒家』が高視聴率になるように、9時台はTBSの日曜劇場が強い。民放ドラマ枠の中で最も予算が大きいと言われているが、大ヒットが出やすい枠であるために方針だろう。

『わたナギ』の健闘

その日曜劇場で、堺雅人『半沢直樹』が快進撃を見せている。

2013年夏の同枠で、最終回が42.2%とドラマ一般劇で歴代2位の金字塔を打ち立てた名作の続編だ。どう凄いかは周知の通りなので、本稿では詳述しない。

むしろ事前には「どこまで行くか」と思われていた『わたナギ』が、2~4話とやや数字を落としたが、5話以降右肩上がりとなり、8話時点で『逃げ恥』を上回っているが特筆に値する。

画像

インテージ「Media Gauge」の視聴データで、15秒毎の接触率の変遷をみると、5話がターニングポイントとなったことがよくわかる。

父・茂(光石研)の還暦パーティで、母・美登里(草刈民代)と妹・唯(朱里)のわだかまりが解け、家族の絆が戻る。登場人物たちの、それぞれの奮闘努力が報われた瞬間だ。そして主人公・メイ(多部未華子)とナギサ(大森南朋)の関係性が変わり始める。

それまで毎回右肩下がりだった『わたナギ』は、この5話で初めて右肩上がりに転ずる。

そして6話以降、明らかに番組冒頭から多くの視聴者が集まるようになった。『逃げ恥』第6話で、みくり(新垣結衣)と平匡(星野源)が波乱の新婚旅行の末にキスをした神回を境に、視聴者の行動が大きく変わったのに似ている。多くの視聴者が、物語のテーマとストーリー展開に引き付けられていたことがわかる。

視聴者層の特性

こうした作りの『わたナギ』は、幅広い人々の心に刺さったようだ。

スイッチ・メディア・ラボの視聴データによれば、男女年層別の個人視聴率は実にバランスが良い。世帯視聴率だけみると、15.6%の木村拓哉主演『BG~身辺警護人~』は、『わたナギ』の上を行っている。ところが個人視聴率にすると両者は大差ない。

画像

さらに男女年層別でみると、両者の差は顕著になる。

『BG』は3+層(男女65歳以上)で数字を荒稼ぎしているが、男女13~64歳では、『わたナギ』がすべて上回り、正多面体に近い美しいレーダーチャートとなる。

火曜10時は「女性20~40代がターゲット」だったが、実際には男女を問わず多くの世代の心に刺さっている。

画像

またコアターゲットの興味関心別個人視聴率だと、差は極端に広がる。

広告主が見てもらいたい年齢層が男女13~49歳だが、そのコアターゲットでは、『わたナギ』は『BG』の倍近い数字となる。

さらに最近の広告主は、そのコアターゲットの中のさらに特定層に見てもらえる番組にCMを出稿したいと考えている。例えば「料理」に関心のある層だと、やはり2倍近い。「音楽・アート」でも1.8倍以上となる。

飛びぬけて高い視聴率をとる『半沢直樹』は言うに及ばずだが、スポンサーから見て良質な視聴者に支持される『わたナギ』のようなドラマは、広告営業しやすい番組と言えよう。

良い番組はデータに表れる

以上のように、世帯視聴率だけでは見えない視聴者特性が視聴データでは浮き彫りになる。

もう1点、シリーズの中で右肩上がりになるか否かも、中盤までの視聴データで占える。途中で流出する人、連続して見続ける人、一旦見逃したりしているが戻って来る人、そして途中から見始める人がどれだけいるかをチェックする方法だ。

東芝「TimeOn Analytics」の視聴データによれば、連続ドラマをライブで全話見続ける人は少数派だ。視聴者は以外と忙しい。

画像

それでも『わたナギ』は2~3話と見続けた人の数が段違いに多かった。序盤からコアなファンを作っていたことがわかる。

次に途中で見逃したが復帰した人の数も突出している。やはり惹きつける力があったことがわかる。

そして途中が見始める人の数。

SNSや口コミで話題となっており、見たいと思った人々だ。『BG』『MIU』は1話完結型なので、途中からも見始めやすい。それでも展開型の『わたナギ』が一番多くなっていた点は注目すべきだ。

ちなみに世帯視聴率で『BG』の4分の3しかない『MIU』も気を吐いた。

『わたナギ』ほどではないものの、新規視聴では『BG』を上回った。女性若年層やコアターゲットでの関心別個人視聴率でも凌駕していたが、幅広い層の心に刺さる普遍性を持ち合わせていた証拠だろう。

日曜9時が傑出し、火曜と金曜の10時が多様な視聴者の心を捉えたTBS。

クール平均が今世紀最高で、年間平均でも二桁の快挙が視野に入ってきた同局ドラマは、やはり黄金期を迎えようとしている可能性がある。

※「視聴データで何か見えるのか」について、9月9日(水)にセミナーがあります。ZOOMでも参加できます。

 詳細は次世代メディア研究所のHP

※視聴データと番組の関係をわかりやすく解説する講座もあります。「データが暴くTVの裏側~麒麟・紅白・チコちゃん 人気の訳は?~」9月19日(土)NHK文化センター梅田教室です。ZOOMでも参加できます。