コロナ禍で変則的なスタートとなったが、春ドラマがほぼ出そろった。

ここまでの見られ方を振り返ると、堺雅人主演『半沢直樹』の初回が22.0%と断トツだ。続いてテレビ朝日の“事件モノ”3ドラマが続くが、これらはあくまで世帯視聴率の話で、「働く女性」のドラマの見方はちょっと違う。

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さすがに世帯が高く銀行が舞台となっている『半沢直樹』は、働く女性もたくさん見ている。

しかし次には、『私の家政夫ナギサさん』『ハケンの品格』『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』が続く。働く女性は、働く女性が主人公のドラマに惹かれていることがわかる。

しかも同じ働く女性でも、年齢・働き方・家事との関係などを見ると、好みが異なる。どんな働く女性が、ドラマのどこを見ているのか考えてみた。

3ドラマの視聴者層の違い

多部未華子主演『私の家政夫ナギサさん』は、製薬会社のMR(医療情報担当者)として働くキャリアウーマンが、突然現れた家政夫やライバルなどとの関係に戸惑いながら成長するハートフルラブコメディ。

主人公は家事が大の苦手。そこを補いつつ、愚痴なども聞いてくれる家政夫ナギサ(大森南朋)との関係が、働く女性には新鮮に映っているようだ。

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20~65歳の働く女性に最も見られていると同時に、主人公が28歳だけあって20~30代の正規社員にも支持されている(関東で2000世帯5000人のテレビ視聴動向を調べるスイッチ・メディア・ラボのデータ)。

さらに働く女性の中で、掃除・選択・炊事を週一回以下しかしない“家事をあまりしない”層も大いに関心を寄せられている。その意味では、新しい生き方を提示してくれる可能性を感じたのだろう。

いっぽう篠原涼子主演『ハケンの品格』は、「契約延長はしない、担当セクション以外の仕事はしない、休日出勤、残業もしない」という契約条件で、特Aランクで働くスーパーハケンの物語。正社員と派遣との格差や男社会ぶりなど、会社組織の理不尽が炙り出され、そこを容赦なく突く大前春子の言動に、多くの働く女性が留飲を下げているようだ。

中でも未婚や派遣などに良く見られている。不条理なことに敏感な層に支持されている証拠だろう。

そして石原さとみ主演『アンサング・シンデレラ』は、病院薬剤師が主人公。

医師の処方の疑問点を正し、患者の安全確保が使命の仕事だ。同時に病院では、効率的な調剤業務も求められている。しかも組織においては、医師の権限が最上位。いわば正規職員の関係の中の不合理・軋轢に悩む立場にある。

正にタイトルの「アンサング」は、“讃えられない”の意で、正しくても厄介がられる立場の相克がテーマになっている。やはり類似の状況に直面しがちな20~30代の非正規に良く見られている。

“含有率”から見えること

ただし以上は、各層個人視聴率の絶対値の多寡。

『私の家政夫ナギサさん』は3話までの平均視聴率が13.3%、『ハケンの品格』は5話で12.9%。一方『アンサング・シンデレラ』は初回が10.2%。他2ドラマと比べ、8掛けほどしか数字をとっていない。

そもそもフジテレビの木曜10時ドラマ「木曜劇場」は、2016年から19年まで4年連続で、年間平均の視聴率は6%台しかない。今年の冬ドラマ「アライブ」も7%ほどに終わった。

この視聴習慣が低調な枠にあり、初回二桁は大健闘だったのである。

ここで個人視聴率の含有率という考え方を動員してみよう。

世帯視聴率を分母に特定層の個人視聴率を含有率として出した数値で、どんな視聴者の割合が高いドラマかを示す指標だ。

この方式だと、3ドラマの中で働く女性の全てのパターンで、『アンサング・シンデレラ』が最上位となる。

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主人公(石原さとみ)と部長(真矢ミキ)・批判的な副部長(池田鉄洋)・理解者の上司(田中圭)・やり方の違う主任(桜井ユキ)・新人(西野七瀬)などとの間柄が多様で、どの組織にもありそうな人間関係が出てくる。さらに病院組織では、医師・看護師など異なる職種の人々との、容易には超えられない職種差も存在する。

様々な働く女性にとって、わが身に引き付けて見られるポイントが満載の物語なのである。

今後への期待

今後を展望すると、『アンサング・シンデレラ』には期待できるデータがある。

ドラマの15秒毎の接触率波形を明らかにするインテージ「Media Gauge」だ。

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これで3ドラマを比べると、世帯視聴率トップの『私の家政夫ナギサさん』は、3話平均の波形が右肩下がり気味だ。ビデオリサーチの視聴率でも、3話は決して右肩上がりとなっていない。設定は斬新だったが、物語の展開がどこまで視聴者の興味を引き続けるのか、やや不透明と言わざるを得ない。

一方『ハケンの品格』は5話平均が右肩上がりを描いてはいる。

ただし始まって50分間の上昇はごくわずかで、最終版にグッと上がるカーブだ。その遅さがやや気になる。

5話の視聴率も、残念ながら右肩上がりとはなっていない。

『アンサング・シンデレラ』はまだ初回データしかないが、序盤30分で1.5%も急上昇した。

前述の通り、フジ木曜枠の視聴習慣のなさからか、最初は低く始まってしまったが、みるみる数字を上げている。途中脱落者が出ないくらい、多様な層に刺さっていた証拠だろう。

放送後も口コミが発生していたようで、初回の「見逃し配信」は、1週間で165万再生とフジ歴代1位を記録した。

しかも2話も2つのケースを上手く組み合わせ、視聴者を飽きさせることなくテンポよく最後まで展開した。しかも幼児に薬をどう飲ませるかのエピソードは、SNS上で大いに話題になった。

口コミ力の高い女性の幅広い支持を得て、きっと同ドラマは視聴者層を拡大していくだろう。どこまで面白くなるのか、大いに期待したい。