ほとんどが二桁と、稀に見る好スタートを切った2020春ドラマ。

コロナ禍の影響で、前シリーズの再放送など、番宣が行き届いたことも大きかった。

ただし若者にも見てもらえるドラマを制作するのは容易ではない。

2か月以上も開始が遅れた春ドラマの中で、『未満警察 ミッドナイトランナー』『MIU404』は若者が注目するドラマとしてスタートしたが、ともに3話までで失速気味だ。

今週始まった『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(石原さとみ主演)も、若者によく見られたが不安材料がないわけではない。

2020春ドラマを材料に、若者ドラマに挑戦することの意味を考えてみた。

ほとんどが二桁スタート

GP帯(夜7~11時)放送の民放ドラマは13枠。

今年はコロナ禍で制作が延期され、放送スケジュールが大きく狂った。その中で今日までにスタートしたのは10作。その全てが二桁発進と、今期はこれまでになく順調な滑り出しだ。

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例えば『BG~身辺警護人~』『ハケンの品格』などは、前シーズンの作品が直前に同じ時間帯で再放送された。

『私の家政夫ナギサさん』は、似たテイストの『逃げ恥』が大きな追い風を巻き起こした。事実上の番宣が行き届いたことが大きかったと言えよう。

その『BG』(木村拓哉主演)は、初回の世帯視聴率が17.0%と、今のところトップを走る。

ネットアンケートのパイルアップ社は、3月に「春に放送予定のシリーズ化されているテレビドラマの中で、最も見たいと思う」ドラマを1200人に聞いていた。その中で『BG』は6位と今一つだった。ところがキムタクが主演した『グランメゾン東京』(昨年末)や『教場』(年始)がヒットしたこともあり、強さを見せつけた格好となった。

同アンケートで2位の『ハケンの品格』(篠原涼子主演)は、初回が14.2%で同率2位。前評判通りの好記録となった。

GP帯ではないが『家政夫のミタゾノ』(松岡昌宏主演)が、アンケートで3位に入っていた。

初回は9.3%と二桁に届いていないものの、深夜でこの数字は快記録だ。しかも過去3シーズンのどの回より高い数字となった。やはり期待通りの実績と言えよう。

コアターゲットに強いドラマ

ビデオリサーチ(VR)が測定する世帯視聴率とは、例えばテレビを所有する100世帯で何世帯がその番組を見ているかの指標だ。

ただしVRのモニターは、50歳以上が多く、高齢層の視聴動向が数字に大きく影響を与えてしまう。

実は日本テレビは、『2019年度 決算説明資料』の中で、「クライアントニーズの高い若年層で圧倒的3冠獲得!」としていた。

同局は去年から、世帯より個人視聴率で番組を評価する方針を打ち出していた。さらに個人視聴率の中でも、コアターゲット(13~49歳)が広告営業上たいせつで、この層での視聴率を最優先としたのである。

では世帯ではなく、スイッチ・メディア・ラボが調べるコアターゲットの視聴率で見ると、春ドラマはどうなっているだろうか。

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初回を見てみると、『美食探偵 明智五郎』(仲村倫也主演)・『未満警察 ミッドナイトランナー』(中島健人・平野紫耀のW主演)・『ハケンの品格』が1位・2位・4位に入った。日テレの宣言通りと言えよう。

そして3位は『私の家政夫ナギサさん』(多部未華子主演)、5位『MIU404』(綾野剛・星野源のW主演)と、TBSが気を吐いている。

逆にテレビ朝日は世帯が高いが、コアターゲットでは低迷した。

刑事モノ・医療モノ・ミステリーに特化し、しかもシリーズ化したドラマを編成することで、安定的な視聴率を確保している。

ただし視聴層がかなり中高年に偏り、若者に見られない状況となっている。

フジテレビに至っては、世帯でもコアでも上位に食い込めていない。

月9の恋愛ドラマ路線が低迷して以降、警察モノ・弁護士モノ・医療モノで世帯を回復させていたが、その方針転換が少し若者離れを起こしているようだ。

若者に強いドラマ

ではコアターゲットではなく、1層(20~34歳)という若者に強いドラマだとどうなるだろうか。

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『美食探偵』『アンサング・シンデレラ』『未満警察』『MIU404』と順位が少し入れ替わる。ただし局別でみると、やはり日テレとTBSが強く、フジが苦戦気味、テレ朝は低迷したままだ。

若者に人気がある“旬の役者”が主役であること。

さらに切り口や設定が斬新で、ストーリーは刺激に満ちていないと若者は振り向かない。

その意味でテレ朝3ドラマは、世帯が高いが1層では数字がとれていない。

また『ハケンの品格』や『私の家政夫ナギサさん』は2層(35~49歳)や3層(50~64歳)の支持は高いものの、1層では力を発揮できていない。

ターゲット層での実績を、1層では大きく下回った。

ただし『アンサング・シンデレラ』は、唯一コアターゲットの時より1層で大きく数字を上げた。

石原さとみ主役に加えて、今までスポットライトが当てられたことのない薬剤師に挑戦しているあたりが勝因のようだ。

F1に強いドラマ

同じ1層でも、F1(女性20~34歳)に限ると、さらに風景が変わる。

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『未満警察』『MIU404』『アンサング・シンデレラ』がさらに数字を上げたのである。3作に共通するのは、主役やメインは全て30歳代以下。

往年の大スターたるキムタクや織田裕二の神通力も、この層には全く通用しないようだ。自分に近い、あるいは気になる俳優が活躍しないことには、見る気がしないという人が少なくない。

では6月下旬以降に始まった若者ドラマ4作の好スタートは、どこまで持続しそうかを占ってみよう。

実は『未満警察』『MIU404』は既に3話まで放送され、世帯視聴率はともに2~3%落としている。またコア・1層・F1も維持できていない。特に『未満警察』はT層でロケットスタートを切ったが、3話では半分以下まで下落してしまった。

旬で人気のあるイケメン俳優2人が主役で、刺激に満ちたストーリー展開にしたまでは良かった。しかし暴力的で残酷なシーンが多く、明らかに若い女性に逃げられている。

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『MIU404』はそこまで暴力的ではないものの、インテージ「Media Gauge」が調べる15秒毎の接触率でみると、『私の家政夫ナギサさん』『未満警察』と同様、CMで逃げた視聴者を回復できないまま、話が進むに連れズルズル数字を落としている。

残念ながら、物語の展開が期待外れと判断する視聴者が少なくない。

唯一の例外として期待できるのが『アンサング・シンデレラ』。

世帯視聴率は10.2%と今一つだったが、接触率の波形は右肩上がりとなった。スタート時が6.0%と、他のドラマより2%以上低いところから始まったのが痛い。

フジ木曜劇場という枠の問題が大きいようだ。それでも同枠で2年ぶりの二桁発進と大健闘した。内容の良さで、視聴習慣に欠けるという壁をぜひ突破して欲しい。

以上のように、春ドラマは軒並み好スタートを切っているが、若者狙いのドラマは課題も大きい。

それでも4層(65歳以上)より3層、2層より1層の視聴率が高いという、かつてのトレンディドラマを彷彿とさせるような視聴者構成の『アンサング・シンデレラ』があるように、今期のドラマには挑戦する姿勢が散見される。

コロナ禍を奇禍にしてTVドラマをどこまで盛り上げてくれるのか、大いに期待したい。