コロナ禍は動画配信サービスの神風!?~Paravi大躍進の舞台裏~

Paraviホームページから

新型コロナウイルスの感染拡大で、生活者のメディア接触が変化している。

一つはテレビのライブ視聴が急伸すると同時に、テレビでのネットコンテンツ利用が伸びた。

同時にパソコンやモバイル上では、動画配信サービスが躍進している。接触者1人あたりの利用時間が3か月で3倍になったParaviがその典型だ。

コロナ禍で動画配信サービスに何が起こったのかを考える。

テレビとパソコンの復権

コロナ禍で「テレビのライブ視聴が急伸」すると同時に、「HDMIを利用したテレビでのネットコンテンツの利用」が伸びたことは、拙稿『コロナ禍はコンテンツ戦国時代の号砲~視聴データが示す4か月の変化~』で詳述した。

一方インテージは、i-SSP(インテージシングルソースパネル)と呼ばれる調査システムを使って、同じ対象者がテレビ・パソコン・モバイルをどう使い分けているかを調べた。

その最新データによれば、コロナ禍によりテレビとパソコンの利用が増えている。

調査では、比較する期間を三つに分けている。

新型コロナ感染拡大前(1/20~2/23)・在宅の広がり(2/24~4/5)・緊急事態宣言以降(4/6~4/19)だ。

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1/20週の平均を100として毎週の動向を指数化すると、スマートフォンなどのモバイルには大きな変化はない。

ところがテレビとパソコンは、3月末から急伸した。

在宅が長くなりコロナ関連情報へのニーズが高まると、テレビとパソコンの利用が2割以上増えたのである。

一日の時間帯別でみると、パソコンは朝7時から夜9時まで、満遍なく利用が増えていた。リモートワーク増がそのまま反映している。

一方テレビは、昼と夜が極端に上がった。やはり在宅者増の影響だ。

ビデオリサーチの視聴率では、夕方6時の各局ニュース、NHKの12時『ニュース』と7時『ニュース7』などが急伸した。平日のテレビの増加は、コロナ関連のニュースが大きく牽引したことがわかる。

 

動画配信サービスの躍進

「TVニュース」の他では、パソコンの「エンターテインメント」と「SNS」が大きく伸びた。

各ジャンル接触者の利用時間を初期と後期で比較すると、前者は26分半の増加。ゲームで遊んだり、radikoを聞く人などだ。

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また後者も17分増だ。

SNSはモバイルでも大きく伸びている。「TVニュース」の補完として、SNSで情報を集める人が少なくなかったようだ。

以上のサービスほどではないものの、SVODの躍進も忘れてはいけない。

有料ゆえに接触者の数は限られるが、使っている人たちの中では、YouTubeなどの無料動画サービスの利用時間が伸びていないのに対して、SVODは1割ほど増え、両者の差はかなり縮まった。

SVODの中の個別サービスで比べると、Amazon Primeビデオの接触者数が他を圧倒している。

EC会員サービスの特典という位置づけのため、有料ではなく無料の感覚で利用している人が多い。心理的抵抗感の少なさが、同サービスの強みとなっている。

Paravi大躍進の背景

ただし各サイトの接触者を分母として利用時間を割り出すと、Paraviの躍進ぶりが際立つ。

サイト訪問者の1人平均が、初期の13.9分から後期の44.8分と、約3倍の伸び。SVODの中では異常に長く、かつ最大の伸び率を誇っている。

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U-NEXTもParaviに迫る。

ただこのサイトの場合は、積極的なCM投入、「国内最大級のラインナップ」「31日間無料トライアル」という謳い文句、雑誌読み放題、さらに「多くのテレビドラマの一気見が可能」という攻め方が功を奏している。

業績の伸びに比例して、コスト負担も大変そうだ。

一方2018年4月にスタートしたParaviは、SVODとしては最後発で、加入者数獲得では長く苦戦してきた。

ところが関係者によると、「加入者数はこの数ヶ月で倍増の勢い」だという。過去の名作ドラマがテレビで再放送される機会が増え、Paraviを急伸させたのである。

HuluやU-NEXTでも、似たような状況はあろう。

しかしParaviの場合、「ドラマだけは、負けたくない。」のキャッチフレーズの通り、人気ドラマが圧倒的に多い点が違う。

今年の1月クールの放送では、『恋つづ』や『テセウスの船』が大ヒットした。4月からは、『下町ロケット』『コウノドリ』『JIN-仁-』などが再放送され、過去作の一気見ニーズを喚起した。

「例えば5月16~17日の『凪のお暇#お家でイッキ見SP』放送の後、Paravi内での人気ランキングが一挙に上がりました。しかも『恋つづ』『花のち晴れ』など若年層ターゲットのドラマがたくさんあり、可処分時間をたっぷり持つ若者に注目されました。つまりコロナ禍が、大いに貢献したのです。羨ましい限りです」(同業他社の担当者)

若年層ターゲットといえば、Huluを運営する日本テレビも『今日から俺は!』『3年A組』『あなたの番です』『同期のサクラ』など、若者狙いのドラマを近年増やしている。

日テレの決算報告によれば、去年3月末での加入者は200万超。そして19年度の有料会員純増数が、「計画の150%達成」という。恐らく40~50万ほどの伸びだ。

さらに「2020年4月の新規会員登録数は計画の250%」だった。やはりコロナで業績は大きく伸びている。

コロナ禍は、ドラマやバラエティのロケ・収録を止めてしまった。

結果として各局は、再放送や過去の名場面の再利用で凌いでいる。ところがこれが、過去の名作の再評価につながり、有料の動画配信サイトの追い風になった。

かつて元寇という国難を、神風が救ったようなものだ。

SVODで威力を発揮するのは、若年層を視野に入れた名作ドラマだ。

拙稿『“一挙放送”の時代~逆風にさらされたTVドラマに復権の兆し~』で詳しく述べたが、視聴者の最大公約数だけを意識せず、特定層にしっかり刺さり、かつ複数回視聴に耐えるユニークな物語がタイムシフト視聴で強い。

時代性・普遍性・娯楽性の三つを兼ね備えた、多様な価値を持つ名作ドラマが増えることを願ってやまない。

※本稿は次世代メディア研究所オンラインフォーラム(JOF)の第6回アジェンダの概略版です。

 元の記事と詳細なデータは、JOFにて購読可能です。