コロナ禍はコンテンツ戦国時代の号砲~視聴データが示す4か月の変化~

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

新型コロナウイルスの感染拡大で、生活者のテレビ利用は大きく変わった。

ステイホームで放送のライブ視聴が増えると同時に、インターネット上のコンテンツのテレビ利用も急伸した。

こうした中、水面下でコンテンツ戦国時代が始まっている。

何が起こっているのかを追ってみた。

ニュースでライブ視聴急伸

ネット接続テレビ約110万台の利用状況を調べている東芝映像ソリューションは、去年12月から今年4月までの利用状況を発表した。

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これによると地デジなどのライブ視聴は、1日平均で45分ほど増え5時間を超えた。

コロナ禍が世界中に拡大し始めた2月は微増だったが、日本でもイベントの延期・中止や学校の休校が始まった3月は増加傾向となった。

そして「緊急事態宣言」が出された4月には、ライブ視聴は17%ほど増えていた。

ただしこれは、大半がニュース・情報番組によるものだった。

ビデオリサーチ関東地区の世帯視聴率によると、全国7都道府県に「緊急事態宣言」が出された4月6日の週の平日夜7時台は、今年1月6日の週と比べHUT(総世帯視聴率)が10%増加した。夜9時台でも5.8%の伸びだ。

ところが夜7時台のNHK『ニュース7』は9.5%増で、HUT10%増のほぼ全てを担っていた。

夜9時台も『ニュースウオッチ9』が7.5%増で、夜9時台HUTの5.8%増を上回った。

要は“非常事態”に直面し、人々はニュース・情報をテレビで見ていたのであり、編成表の大半を占めるドラマ・バラエティなどの娯楽番組が増えたわけではなかったのである。

この傾向は、岩手県と東京の比較でも明らかとなる。

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コロナ感染者が出ていない岩手県では、テレビの全稼働時間は大きくは伸びていない。ところが最も感染者の多い東京は、平時に比べ4月に一挙に2時間近くテレビ稼働時間が増えたのである。

テレビ利用の調査会社担当者の分析。

「コロナウイルスの問題が身近なエリアほど、明らかにテレビ使用時間が増えています。在宅勤務・幼稚園や学校などが休園・休校で子供の在宅時間が長くなったことも関係あるでしょう。コロナがテレビの稼働時間を劇的に伸ばしていることは間違いありません」

増えない娯楽番組の視聴

報道・情報番組が急伸した一方、娯楽番組の視聴率はほとんど変わっていない。

実は東芝のデータにある再生行動も1月に増えた他は、2~4月はほとんど変化がない。実は毎年1月は、年末年始の特番を録画再生する視聴者が多い。

ところがステイホームとなってテレビを見る時間が増えても、ドラマ・バラエティはロケ・収録が中止となったのが響いたようだ。

「再生行動とは、どうしても見たい番組を自分の時間にあわせてじっくり見るという行動です。ところがコアなファンを持つ“ドラマ・アニメ・バラエティ”が軒並み再放送で、録画再生して見るまでには至りませんでした」(テレビ局編成担当者)

ネットコンテンツの躍進

テレビの娯楽番組が低迷した分、急伸したものもあった。

OTTやYouTubeなどだ。OTT(Over The Top)とは、インターネット上の動画コンテンツなどを利用するシステムだ。東芝のデータでは、有料定額のSVOD事業者や無料の国内配信事業者などを指し、YouTubeは別途のデータとしている。

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去年12月の実績を100として増減率を指数化すると、4月はYouTube49%増・OTT68%増と急伸した。

放送局の娯楽番組ではなく、ネット上のコンテンツをテレビで楽しむ人が増えていたのである。

この業界の動向に詳しい民放経営者は、有料コンテンツの躍進が目覚ましいという。

「去年9月時点で国内300万加入だったNetflixは今年4月で400万ほど、Huluも250万前後に増えています。ドコモと組んだAmazon Primeも、100万近く伸ばしたようです」

ただしコンテンツ界も新たな壁にぶつかっているという。

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例えばYouTubeを前月からの伸び率でみると、東阪名ともに4月の伸び率は鈍化している。テレビの利用時間は伸びているので、人々に時間がないわけではない。

「YouTuberたちも外出がままならず、動画投稿本数が減っています。利用者には検索ではなく、お気に入りのチャンネルでその日の新作を見る習慣型の人が意外に多い。ところが更新が減ったため、見るのをやめた人が出ていると思います」(調査会担当者)

有料のSVODについても、4月末から5月にかけて、失速傾向が見られるという。

「加入したサービスの中で、目ぼしいコンテンツはだいたい見てしまったという利用者が増えています。結果として、新作投入に動き出した事業者がいます。コンテンツを持つ人材のリクルートも活発化しています。短期的には6~7月、次に10月が新たなコンテンツ獲得競争の山場となるでしょう」(民放経営者)

テレビ局はライブ視聴が増えても、コロナ禍で経済が大きく落ち込む結果、広告収入増は容易に見込めない。

三密を避けるなど制作上の制約が増えてしまったので、下手をすればテレビ番組は負のスパイラルに陥りかねない。

そこに有料のSVOD事業者が、コンテンツの調達や自社制作を増やしてくる。

「コンテンツ獲得競争が熾烈を極め、事業経営に大きな影響を与え始めている」(同経営者)というのである。

コロナ禍は人々や社会に大きな変化を強いるだろうが、メディア界にもコンテンツ戦国時代という副作用をもたらしそうだ。

※本稿は次世代メディア研究所オンラインフォーラム(JOF)の第5回アジェンダの概略版です。

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