AC広告急増で「より良い社会実現」にパチンコも寄与!?~東京・大阪を凌駕する地域といえば・・・~

ACジャパンの広告が激増している。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全国では去年の7倍ほどになっている。

増加率を地域別にみると、感染者数の少ないエリアはそれほどでもない。

ところが関東・関西・中京などの都市部では、17~29倍と極端に伸びている。

地域によって原因はいろいろあるが、興味深いのはパチンコの存在。

自粛問題でいろいろ言われていたが、テレビ広告の世界にも大きな影響を与えていた。

AC広告急増の背景を追った。

存在感を増すAC広告

「ポポポポ~ン」のフレーズや、金子みすゞ作品からの「こだまでしょうか」が、東日本大震災直後にテレビでお馴染みになったACジャパンの広告。

「あいさつの魔法」「コミュニケーションの大切さ」を訴える公共性の高い広告だった。

コロナ禍が拡大した今回は、「にゃんぱく宣言」が目立つ。

さだまさしの「関白宣言」をアレンジしたCMだが、猫の適正飼育を巧妙に訴求した。しかも3月に急遽放送され始め、CM総合研究所による2019年度「企業別CM好感度ランキング」で2位に入った。

そもそもACジャパンとは、公共広告を通じて、「よりよい市民社会の実現」をめざす公益社団法人だ。

マスコミ・広告会社・一般企業が会員に名を連ねている。

過去の「こだまでしょうか」「投げたらアカン」「ジコ虫」などは、新語・流行語大賞にも選ばれた。

AC広告は、CM枠に空きが生じた場合に放送される。

自然災害などの不可抗力の事象が発生した際に、広告主が商品CMなどを流すことが適切でないと判断し、差し替えを申請したことで放送されるケースが多い。

過去にも阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの直後に放送本数が急増していた。

コロナ禍とAC広告

今回も新型コロナウイルスの感染が、生活者に身近な問題になると共に増えた。

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最初のターニングポイントは2月下旬。

WHOがパンデミックになる可能性があると発表し、日本政府が全国の小中学校・高校に臨時休 校を要請した。その直後から急増し始めた。

全国をエリア別でCMデータを集めているPTP社のMadisonによれば、1日1000本前後以上が放送され続けている。

次の転機は4月7日。7都府県を対象に緊急事態宣言が発令された日だ。

3月1日から4月24日の期間では最多となる1936本もAC広告が出稿された。

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ふだんAC広告が放送されるのは、比較的視聴率の低い深夜帯が多い。

ところが今回は、日中や視聴率の高いGP帯(夜7時~11時)でも満遍なく放送された。特定のCMだけではなく、様々な商材のCMが幅広く差し替えられていると推測される。

では、どんなCMが差し替えられたのか。

PTP社Madisonのデータによれば、まず東京ディズニーリゾートのCMが目立つ。新型コロナウイルスの感染拡大で、2月下旬からテーマパークや映画館などの休業が相次いだ。

東京ディズニーリゾートも2月29日から休園が始まった。同時にCMの放送がなくなり、3月1日から4月24日の間では、前年より4800本のCMが減っていた。ACジャパンの出稿増加本数全体の9%に相当する分量だったという。

一方ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、休園後も「臨時休業している場合があります。HPでご確認のうえご来場ください。」というテロップを差し込んで4月6日まで放送していた。

ところが緊急事態宣言が出された4月7日以降は放送がなくなった。3月1日から4月24日のCM出稿は前年より6030本減った。全体の11%に及んだ。

テーマパークを始め、外食産業・旅館・ホテル・交通機関など、休業あるいは顧客数が大幅に減った業界のCMが減少した。

かくしてAC広告は、全国平均で7倍に増えたのである。

差し替えは都市部で急増

ただし前年同期と比べると、AC広告の増え方には大きなバラツキがあった。

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例えばコロナ感染の影響が大きくない岩手や大分など地方では、さほど増えていない地域もある。エリア内に流すCMとしては、極端な自粛体制とならなかった分、CMの差し替えもほどほどの量で済んだようだ。

ところが東京・大阪・名古屋などの大都市圏では、AC広告は極端に増えた。

関東で前年同期比17倍、関西20倍、そして中京地区では29倍。

ここで注目したいのは名古屋を中心とした中京地区。

東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど全国区のテーマパークは当然大幅に差し替えられた。加えて鈴鹿サーキット・スペイン村・ラグーナテンボス・長島スパーランドといった次のクラスのレジャー施設で、休園・イベント中止が重なったことが大きい。

さらに決定的だったのはパチンコホール。

パチンコ発祥の地である名古屋を中心に、中京地区はパチンコ産業が盛んな地域だ。店数だけで比べると、関東2910店、関西1625店に続き、1016店で大きく引き離されている(警視庁データ・2018年12月31日現在)。

ところが人口1000人あたりの店舗数にすると、関東は27店、関西33店だが、中京地区は37店と三大都市圏では断トツのトップに躍り出る。

自粛要請に応ずる応じない問題で、ニュースで大きく取り上げられたパチンコ。

店名公表で有名になったのは大阪だが、AC広告の急伸を陰で最も支えたのは、実は名古屋のパチンコ業界だったようだ。

テレビ広告出稿状況を象徴するACジャパンの広告。

結果として、国際協力・多様性への理解・動物愛護など、各種のキャンペーンを世に送り出している。その「よりよい市民社会の実現」に、パチンコも寄与していたとは、何ともシニカルで面白い。

長期化しそうなコロナ禍だが、5月以降はどんな業界のCMに動きが出るのか注目したい。