コロナ下のリモートはテレビの好機!?~Zoom保育・遠隔レッスン・ライブアニメ等からのヒント~

リモート関係の各種取組(関係者の許可を得て筆者作成)

コロナ禍でテレビの制作現場は苦戦している。

苦肉の策として、リモート出演が出てきている。

ところが大半は、“やむを得ない代替手段”の域を出ていない。

もっと“従来にはない表現”を創り出す、または“新たな収入”を捻出する攻めの姿勢が必要だろう。

ヒントはZoom保育・遠隔レッスン・ライブアニメ等にあると考える。

テレビ局の取組は不十分?

リモート出演については、テレビ東京25日放送の『出川・IKKO・みやぞんの割り込んでいいですか』が画期的ともてはやされている。

「発想の逆転」

「めっちゃ面白いね!」

「みやぞんは最強の天然芸人」

「これぞテレ東って番組」

でも気になるのは「リモート出演は回線状況により映像と音声が遅れる」という欠点。

ひな壇芸人が他者の会話に被りながら、賑やかに回すのが売りのバラエティに慣れた視聴者には、迷走ぶりやテンポなど気になる人は少なくない。

「グッダグダでバッタバタ、何も内容が無い」

「これ、このまま1時間半続けるのか?」

「普通に雑談配信みたい」

バラエティ番組の標準から大きく逸脱しているため、評価・絶賛する人はいるが、多くの人に届くかと言えば別問題だ。

番組の世帯視聴率は1.7%。前四週の平均視聴率の半分ほどしかなかった。

ユニークだから良しとするか、ビジネスとして不合格とみるか、微妙な番組だったと言わざるを得ない。

筆者がもう1つ気になるのが、NHKのEテレ。

学校の休校に対応して始まった「学習にも役立つ子ども向け番組」のマルチ編成だ。ところが朝11時台でマルチ以前と以後を比べると、0.1%ほどしか視聴率は上がっていない。在宅で暇を持て余してしまったとしても、ほとんどの子どもたちは反応していないのではないか。

これでは“送り手の自己満足”と言わざるを得ない。

子どもが輝くZoom保育

子ども向け番組のマルチ編成と対照的なのが、リモート保育・教育ではないだろうか。

千葉県の日吉台幼稚園では、4月中旬からZoom保育と呼ぶ、園の先生と在宅の園児をネットで結ぶ取組を始めた。お遊戯や絵本・紙芝居などをパソコンやタブレットの画面を介して行っているのだ。

画像

幼稚園や学校が休園・休校に追い込まれ、不満をためる子どもたち。

親たちもその面倒で、テレワークどころでなくなっている。そんな状況を少しでも改善しようと、Zoom保育は企画された。

規則正しい生活のリズムを作るべく、学年ごとに毎日決まった時間に行われている。

1日30分だけだが、先生や友達と画面の中で会えたことで、園児の気持ちはずいぶん和らぐ。しかもZoom保育でやったお絵描きやお遊戯で、その後もしばらく遊んでくれる。親はまとまった時間、子育てから解放されるようになった。

それまでは、夕方に不満を爆発させることが多かった子どもたち。ところが翌朝もZoom保育があると聞き、ずいぶん聞き分けが出て来たという。

人気急上昇のバレエ遠隔レッスン

バレエ愛好家の間で、4月に人気急上昇となったバレエ遠隔レッスンがある。

英国ノーザン・バレエ団の元ダンサーで、今は都内のバレエ団で団員のレッスンも担当しているソン・イ(Song Yi)さん

バレエ団の公演や発表会が延期になり、バレエスクールも休校となってしまったため、今月から無料の遠隔バレエレッスンを始めた。

画像

ライブ配信中の受講者は1回で680人。鑑賞する人は1470人以上。さらにVODで24時間内に鑑賞する人は2420人以上に及ぶ。短期間に人気急騰したオンライン講座だ。

これまでの実際のレッスン受講者をはじめ、かつての教え子、さらにイさんの舞台を見たことのあるファンがクチコミで講座の存在を知り、集まってきた結果である。

Zoom保育にしろ、バレエ遠隔レッスンにしろ、テレビ番組と比べ人気が高いのには2つの理由がある。

一方向か双方向か、さらに知っている人が登場するか否かだ。

画面を食い入るように夢中で見入る園児たち。

大好きな先生やお友達が映っていて、一緒に遊戯などを行える点が違う。

バレエ遠隔レッスンでも、憧れるダンサーが直接教えてくれている感覚になる。仲間のリアクションも見える化している。自分に話しかけてくれるような口調も魅力のようだ。

インターネットはオンデマンドの利便性が優位点と言われてきた。

しかしリアルタイム、あるいは1対多の関係性となっても、知っている人による双方向のやりとりが、放送より魅力となるようだ。

“放送⇒デジタル”の可能性

“リモート”の特性に価値があるのなら、放送からデジタルに持ち込み、そこで価値最大化する道はないだろうか。

例えばリモート保育や教育なら、放送で不特定多数の注目を集め、後に幼稚園や学校の先生が番組素材を取り込んでリモート授業をすれば、対象は万や十万単位に増えるだろう。

バレエなら、一流の公演やパ・ド・ドゥのオムニバスなどを放送し、その後に本物のダンサーが遠隔レッスンをすれば、受講者や鑑賞者は桁違いに増えるだろう。

放送からデジタルへの流れを意識すれば、取組全体は格段に魅力的なものとなる。

テレビ局の中には、フィットネスクラブを経営したり、バレエ団を後援しパフォーマンスを番組化したりする局がある。

ならばリモート講座から逆算して過去の番組を再放送するなど、“ステイホーム”状況を前提に全体を設計すれば、大勢に利用される価値ある取組になるだろう。

娯楽番組での“テレビ×デジタル”の可能性

ただしバラエティ番組では、放送後に出演していた芸人が、ネット配信しても画期的な取組になり難い。

テレビ番組ほどコストをかけ、完成度の高い映像をネットの側で用意できないからだ。

そこで筆者が注目したいのが、ライブアニメのテクノロジーだ。

画像

例えば3月21日に、NTTドコモが中国のチャイナモバイルと共同で開催した『以心伝心有〇犀 Borderless Live 5G』(〇内は中国の漢字)。

もともとは東京と上海を結び、バーチャルタレントによる音楽ライブを世界配信する取り組みだった。

ところがコロナ禍の影響で、東京会場だけとなった。しかも無観客となり、ネット配信のみとなってしまった。

それでも企画は、想定以上の成果を上げていた。

筆者がこの種の取組に可能性を感ずるのは2点。

一つは、放送×ライブイベントで新たなマネタイズを模索する方向。もう一つは、ライブアニメでこれまでにない映像パフォーマンスが生まれる可能性だ。

当初はリアルな会場に5G端末を500台用意し、観客がVR演出を楽しめるコンサートだった。ところが無観客となったため、30人ほどのVTuberを客席に入れ、コンサート自体がライブ配信されると同時に、各VTuberも独自に配信する方式となった。

画像

イベントの目標は、視聴者数20万と設定されていた。

ところが実際は、189万視聴に及んだ。日本で3万弱、中国で186万。つまりネット配信は、実際の会場のキャパを超えて、世界中の億単位の人々を対象にできる。

この取組を、放送を絡めてマネタイズを模索したら、ビジネスの可能性はさらに大きくなる。

放送はコンサート直前に、各バーチャルタレントの紹介や持ち歌を披露する。これでライブ配信のアクセス数は、各段に大きくなる。

実際のイベント会場では、5Gを駆使した最先端VRの入場収入を狙う。ネット配信は有料・無料広告のビジネスと、投げ銭などの収入やグッズ販売があり得る。

つまり放送で視聴率が高くならなくとも、配信以降で大きな収入が見込めるのである。

ライブアニメの番組応用

もう一つは、新たな映像パフォーマンスを創り出す。

画像

モーションキャプチャー技術により、実際の人間の動作や表情を、アニメのキャラクターにリアルタイムに転化させられるようになった。

これに舞台や背景などをCGで加えれば、現実では撮れない映像が創り出せてしまう。

画像

これまでテレビで活躍する人は、顔やスタイルの良いタレントが多かった。

そうでない人は特技があっても、才能を花開かせることは容易でなかったのである。

ところがライブアニメなら、容姿に関係ない表現が作れる。

先に紹介したソン・イさんほどスタイルが良くない人でも、ダンスさえユニークで上手ければ、才能を発揮する道が出てくる。

テレビ局は今まで世に出ていなかった才能を、ライブアニメを絡めてコンクール番組を作ったらどうだろうか。

ジャンルは歌やダンスに限らない。ドラマの1シーンを複数人で作る、ミニドラマのコンテストでも良い。

初音ミクなどのボーカロイドでは、デザイナー・作詞作曲・動画化と3人以上が関わってPVを作っていた。ライブアニメの場合も、複数の才能のコラボで、想定以上の作品が出来るかも知れない。

そのプロセスを競い楽しむ番組は、これまでにない可能性を持つのではないだろうか。

コロナ禍で、テレビ局の番組制作に大きな制約が発生した。

しかもテレビ広告費の減少が避けれず、番組通リは今まで以上の知恵が必要だ。それを突破する一つの術が、リモートに象徴されるテクノロジーではないだろうか。

過去60年以上、新たな番組の開発に成功してきた放送人の、一段の活躍に期待したい。

※本稿は次世代メディア研究所オンラインフォーラム(JOF)の第4回アジェンダの概略版です。

 元の記事は、JOFにて購読可能です。