報道ひとり勝ちのTVの明日~コロナ後の放送業界を占う~

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

富川悠太キャスターの新型コロナウイルス感染が確認されたテレビ朝日『放送ステーション』。

芸能人に続き、局アナ感染のニュースに衝撃を受けた人は少なくなかっただろう。

実はコロナ禍拡大の中で、ニュース番組の視聴率は急伸してきた。

一方でドラマやバラエティなどの娯楽番組は、厳しい状況に追い込まれている。

事態がいつ収束するか先が見えない厳しい局面の後に、放送業界はどうなるのかを考えてみた。

急伸したHUT

コロナ禍が顕在化する前後の3か月、テレビを見る人々は急増した。

今年1月上旬段階では、新型コロナウイルスの存在を知らない人が大半だった。

ところが1月下旬、中国湖北省武漢市が封鎖され、感染症の認知度が高まると、不安が次第に広がり始めた。

そして状況が一変したのは2月24日。感染者数はまだ多くなかったが、国の感染症対策専門家会議は、「急速な拡大に進むか収束かの瀬戸際」と発表した。

2日後に安倍首相は、大規模イベントの自粛・規模縮小を要請。さらに2日後、全国小中高校の臨時休校の要請にまで踏み込んだ。

これを機にテレビの見られ方は、変わり始める。

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そもそも1月上旬のHUT(総世帯視聴率)は、例年と変わらなかった。

ところが武漢封鎖を受け、HUTは少し上昇し始めたが、まだ顕著ではなかった。

そこにイベント自粛や学校の休校が加わると、上昇ペースは速まった。

3月1週を1月と比較すると、2~3%ほど上昇していた。

そして3月下旬、1日あたりの感染者が初めて全国で200人を超えた。

国による「緊急事態宣言」がいつ出るのかに関心が集まった。HUTは前月比で一挙に3~5%も上昇した。多くの人がコロナ関連情報を求め、テレビを見るようになったのである。

報道ひとり勝ち

以上のように、この3か月でHUTは大きく伸びたが、実は急伸したのはニュースなどの報道だけだった。

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例えばNHKの夜7時『ニュース7』は、1月上旬の平日平均13.4%が4月の一週は20.7%と7%以上増加した。9時のNHK『ニュースウオッチ9』や10時のテレ朝『報道ステーション』も、それぞれ7%ほどのかさ上げをしていた。

ちなみに夜7時台・9時台・10時台のHUTの伸びは、やはりそれぞれ7%前後だった。

つまり各時間帯ともテレビを見る人が増えたが、増加分のほとんどは報道番組によるものだったのである。

念のためにニュースの裏番組を確認すると、大半を占めるバラエティ番組は、ほとんど視聴率が上昇していない。

結果として、HUTに占める報道番組の比率は、1.5倍から2倍ほど増大している。

コロナ後に起こる事

今回のコロナ禍は、史上最大級のパンデミックだ。

間違いなく、社会システムや人々の考え方に大きな変更を迫る。次の時代がどうなるのか、人々の社会への関心は高まり、報道番組の時代はしばらく続く可能性が高い。

しかもドラマやバラエティなどの娯楽番組は、2つの課題を抱えてしまった。

一つは、いつ収束するかわからないコロナ禍を前に、しばらくロケやスタジオ収録が出来ない点。

既に春ドラマの幾つかは、初回の放送日を延期し、過去の特別編集や再放送を流している。

バラエティ番組は収録済みのストックが暫くあるようだが、まもなく名場面集や再放送に頼らざるを得なくなるだろう。

「緊急事態宣言」は一応来月6日までとなっている。

しかし諸外国の例をみると、さらなる延期の可能性は否定できない。また「宣言」期間が仮に終了したとして、直ぐにロケ・収録が再開できるとも限らない。

厳しい状況が当分続く可能性がある。

二つ目は、コロナ禍でテレビの広告収入が大きく痛む点だ。

日本経済は08~09年のリーマンショック以上の影響を受け、結果として広告主は出稿を大幅に減らさざるを得ないだろう。

こちらも収束の目途が立たないだけに、収入減が1年以上続く可能性がある。

報道番組は、キャスター・記者・スタッフの感染というリスクがあっても、報道の使命から続けざるを得ない。しかも報道体制は既に出来上がっているので、ニュースの時間を増やしても、コストが比例して増えるわけではない。

しかもコロナ関連情報やコロナ後の社会の変化など、報道へのニーズは当分高いまま続く。

テレビ局にとって、報道強化は理に適った施策となる。

一方で娯楽番組は、制作体制の混乱とテレビ局のコスト削減圧力で、厳しい状況が続く。

結果として、制作の仕方や内容の見直しなどが避けられないだろう。

ただし、人々の娯楽番組へのニーズが減退するわけではない。

制作現場は新たなテクノロジーを活用するなど、知恵と工夫で従来の水準を維持し、新たな娯楽を開発していくだろう。

コロナ禍で一回休みのような状況に追い込まれたテレビの現場。

この状況を奇貨として、番組のイノベーションを起こし、次の時代を切り拓いてもらいたいものである。

※本稿は次世代メディア研究所オンラインフォーラム(JOF)の第2回アジェンダの概略版です。

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