新作だけがTV番組じゃない!~コロナ危機と五輪延期で変わるテレビ~

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

「楽しくなければTVじゃない」

80年代にフジテレビは、これをキャッチフレーズに12年連続三冠王となった。

以来テレビは、リアルタイム視聴率を上げるため、バラエティ番組の比率を上げていった。報道番組も増えたが、硬派でなくワイドショーのような軟らかいニュースへの進化が目立った。

一方バラエティの演出では、スタジオにゲストや観客をたくさん入れ、ノリを重視する番組が増えた。

ひな壇芸人が典型的なパターンだ。

ところが今春、東京オリンピック2020が1年延期となり、テレビは変調をきたし始めた。

新型コロナウイルスの感染拡大も、留まるところを知らない。テレビ局は従来のような番組制作が困難になっている。

空前絶後の厳しい状況を経て、テレビのあり方は変化すると筆者は考える。

疫病の蔓延が人々の生活や考え方を大きく変えてきたように、今回のコロナ危機はテレビを新たなフェーズへと余儀なくさせるかも知れない。

“ノリ”と“から騒ぎ”の時代

テレビは80年代から変わり始めた。

前提にリモコンがある。

それ以前、チャンネルの切り替えは、テレビの所まで視聴者が行く必要があった。その面倒から、視聴者は頻繁にザッピングをしなかった。

ところが90年代半ばまでにリモコンは普及した。

そしてテレビは一変した。少しつまらないと、視聴者はすぐにチャンネルを替えるようになったのである。

その結果、画面にはテロップが3~4か所同時に表示され始めた。

効果音も各段に増えた。

ゲストや観覧者も増え、テンションの高いトークや爆笑などで盛り上げられた。

まるで“賑やかでなければテレビじゃない”と言わんばかりに、厚化粧番組が増えた。

ザッピングを防止し、視聴者の最大公約数にリーチするために最適な手法だったのである。

要は視聴率を上げるためだった。

そして各局は、より刺激に満ちた新作を如何に並べるか、努力してきたのである。

ところがコロナ禍で、テレビは曲がり角に差し掛かった。

五輪延期とコロナ禍

最初のインパクトは、五輪の延期決定だ。

NHKと民放は、17日間の中継と大量の関連特番を予定していたが、大きな穴があいた。

例えばNHKは、総放送時間で1000時間ほど。

そもそもコロナ禍の影響で、既に『NHKのど自慢』が中止になっていた。

また公開収録モノは無観客となり、海外などロケに行けない番組が増えていた。

大河ドラマ『麒麟がくる』も5話分が休止となったが、この予定変更は大きな痛手だ。

民放でも、テレビ東京は60時間強を予定していた。

しかも民放の場合、レギュラーや特番で穴埋めするにしても、広告収入の減少という問題が残った。

五輪中継や特番については、タイムCMが決まっていた。

これらも全て白紙だ。今後スポットCMで挽回を図らなければならない。

厳しい営業交渉となろう。

そんな中TBSは「(2週間)ドラマやバラエティにおけるロケとスタジオ収録の中断」を発表した。

既に春ドラマ『半沢直樹』『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』と、大型特番『オールスター感謝祭』は放送延期としていた。

4月からの新レギュラー『有田プレビュー』『アイ・アム・冒険少年』も、延期となった。

またテレビ東京も、「3日から生放送を除く収録を中断し、1週間をめどに社員の出社を2割程度に絞る」と発表。NHKも大河や朝ドラの収録を一時休止とした。

他の民放も、収録を中止する局が出てきている。

五輪延期の穴とロケや収録の中止で、各局は通常通りに出来なくなっている。

これを乗り切るには、明らかに従来とは異なる考え方や方法論をとらざるを得ない。しかもこの窮状は、短期では終わらない。

結果としてテレビの変化につながっていくことは避けられない。

番組制作の新路線

当面とりうる手は、過去の番組の再放送や一部の映像の再利用だろう。

実は筆者も現場の頃、急場をしのぐために過去映像を有効利用したことがある。

安価で短時間の制作だが、視点を逆転させるなどで面白いと思える番組に生まれ変わらせる経験だった。

各局はこうした手法に、知恵と工夫を集中させるだろう。

ドラマなら、一挙再放送などの実績が既にある。

これに加え、ダイジェスト再放送も予定されている。さらにドラマの一部を活用して、簡単に面白いコーナーを制作することも可能だ。

既にその成功例は出始めている。

バラエティでも、再利用は当然多用されるだろう。

加えて、これまでの“ノリ”と“ひな壇芸人”に象徴されるテンションの高い番組以外の路線開発が進むだろう。

やはり成功例は、既に数あるバラエティ番組の中に出始めている。

いずれにしても、テレビの視聴率が漸減傾向にあり、広告収入も右肩下がりを避けられないなら、テレビ番組には発想の転換が必要だ。

「楽しくなければテレビじゃない」から「興味深くなければテレビじゃない」へ。

五輪延期とコロナ禍は、時代転換の好機となるだろう。

※本稿は次世代メディア研究所オンラインフォーラム(JOF)の第1回アジェンダの概略版です。

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