終盤急上昇ドラマの法則~『恋つづ』『テセウス』は『半沢直樹』『逃げ恥』の系譜!?~

まもなく全ドラマが最終回を迎える2020年1月クール。

直近の回までで視聴率が4連騰しているのは、『恋はつづくよどこまでも』『知らなくてもいいコト』『トップナイフ』『テセウスの船』の4作品。

中でも『恋つづ』と『テセウス』は、4連騰での上昇率が53.1%・39.1%と、他2作を大きく引き離している。

実はTBSドラマは、4連騰で46.7%数字を上げ、最終回に42.2%と一般ドラマ歴代2位の金字塔を打ち立てた『半沢直樹』以降、終盤に急上昇するドラマを多く放送してきた。

終盤に急上昇するドラマ

連続ドラマには、シチュエーションドラマとストーリードラマの2種類がある。

『相棒』や『ドクターX』など、多くの刑事モノや医療モノは、一話読み切りのシチュエーションドラマ。

途中の回を見逃しても、あるいは評判を聞きつけて途中から見始めても、じゅうぶん内容についていけるタイプ。ただし視聴率をとりやすい反面、後半に盛上ることは少ない。

「昨今の刑事・医療・弁護士ドラマの乱立は、リスクを回避するテレビ局の安全運転の表れ」(キー局ドラマ制作者)ということのようだ。

一方『恋つづ』は職場が病院だがラブストーリーで、恋の行方がゴールとなっている。

また『テセウス』のゴールは、「誰が犯人か」という典型的なストーリードラマ。今クールでは、共に後半に急上昇を見せている。

去年では日テレの『3年A組』が5話目から6連騰し、65.6%も上昇した。

また2クールドラマとなった『あなたの番です』も、連騰ではなかったものの、ラスト5話で90.2%も数字を押し上げた。

このようにストーリードラマは、明確なゴールが視聴者の興味にハマると、後半グイグイ盛り上がる。ストーリードラマの醍醐味だ。

ところが失敗すると、視聴者は脱落するわ、途中から見始める人はいないわで悲惨なことになる。

今クールでいえば、『10の秘密』がその典型。前半で4話連続落ち続け、後半で挽回できなかった。「ブレてハマらなかったのが敗因」(同ドラマ制作者)だった。

『恋つづ』『テセウス』のポテンシャル

では今クールで成功している『恋つづ』と『テセウス』は、他のドラマとどこが違っていたのか。

関東2000世帯5000人のテレビ視聴動向を調べるスイッチ・メディア・ラボの属性別個人視聴率を見ると、違いはハッキリ浮かび上がる。

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まず世帯の形態別で見てみよう。

単身・夫婦のみ・二世代(親子)・三世代のパターンで分けると、どの層でも両ドラマは他のドラマより、序盤2話より直近2話が上昇している。

中でも『テセウス』は、本格ミステリーのストーリードラマだけあり、単身世帯で圧倒的に強い。

一方『恋つづ』は、一見医療ドラマなのに、実際は“デレキュン”シーンが若年層の心を鷲づかみにするラブストーリー。

夫婦のみ世帯でもよく見られているが、子供のいる二世代・三世代の家庭で圧倒的な強さを示した。

次に興味関心事別の個人視聴率で比較してみよう。

ここでも両ドラマは強いが、ミステリーの『テセウス』はニュースやスポーツをよく見る層を後半で集めている。

一方『恋つづ』は、若い俳優がピュアな愛情を熱演するラブストーリーだけあって、タレントに興味のある層や、TVドラマ好きに受けている。

さらに単純に恋が成就せず、随所に“はずし”で笑いを誘いつつ、絶妙な紆余曲折で盛り上がって行く構成が功を奏しているのだろう。バラエティ好きの人々に圧倒的に支持されている。

『半沢直樹』から始まった

実は昨今のTBSストーリードラマの原点は、『半沢直樹』(堺雅人主演・13年夏)にある。

かつての『白い巨塔』や『華麗なる一族』のように、ゴールは“巨悪との対決”だ。

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この『半沢直樹』は、途中で一度も視聴率を下げることなく、右肩上りを続けた(途中一度だけ足踏み)。

最終回の42.2%は、一般ドラマの歴代2位。初回からは117.5%も上昇させる快挙だった。

実はここ30年、途中で一度も下落しないドラマは、他には『逃げるは恥だが役に立つ』(新垣結衣主演・16年秋)だけ。やはり途中一度だけ足踏みしたが、初回から数えて最終回は103.9%も上昇した。

『半沢直樹』以来、TBSは安全運転に走ることなく、ストーリードラマに挑戦してきた。

特に“巨悪との対決”や“小が大を倒す”ことをゴールに据えたドラマが増え、視聴者もカタストロフの瞬間や、役者や演出のフルスイングぶりを楽しんできた。

『ルーズヴェルト・ゲーム』(14年)・『下町ロケット』(15年と18年)・『陸王』(17年)・『ブラックペアン』(18年)・『ノーサイド・ゲーム』(19年)などが、その系譜と言えよう。

こうした中で、後半や終盤に連騰する成功作が多く放送されたのである。

いわばTBSの勝利の方程式になっていたと言えよう。

王道から新路線へ

ただし同局のストーリードラマは、新たな路線にも挑戦してきた。

『逃げ恥』に象徴される“新たな価値観”を提示するドラマだ。

『逃げ恥』は、“高学歴漂流”女子と“高齢童貞”男子が、契約結婚からリアルな恋に発展していく物語で、現代の新しい男女関係を模索した。

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属性別個人視聴率でみても、若年層の多い二世代の家庭でよく見られた他、夫婦のみ世帯でトップだったのが象徴的だ。

また興味関心別でも、タレントに関心のある層やTVドラマ好きの他、政治経済社会などのニュース好きで断トツだった点が興味深い。

時代の先端を行っていた証だろう。

血のつながらない母娘が、それぞれ自立するまでの10年を描いた『義母と娘のブルース』(綾瀬はるか主演・18年夏)も、新たな家族関係を提示した点で野心的だった。

三世代の家族で注目された。

またタレント関心層やTVドラマ好きの他、ニュース好きも大いに関心を寄せた。

まだ最終回を迎えていない『恋つづ』や『テセウス』は、これら2作と比べたら、今のところ上昇率は及んでいない。

ただし最後の健闘次第では、『逃げ恥』を凌駕する可能性が残っている。

「コンテンツビジネスとしては、世帯視聴率というマスをとるためには、展開を一点に絞ったほうが良いことが多い。ただしドラマの内容や作品性として優れているかは別問題」(前述のドラマ制作者)

こうした考え方があるのは事実だが、ゴールが明快で一点に絞られている分、『恋つづ』や『テセウス』はラストに向け勢いがある。

最後にどこまで盛り上がるのか、最終回を楽しみにしたい。